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学習の4段階の「無意識的有能」と行動変容がもたらす持続的成長と競争力


無意識的有能の定義

無意識的有能は、意識しなくてもパフォーマンスを発揮することができる状態を指します。これは、知識やスキルの定着とタスクの習慣化によって、無意識で行動できるようになった状態です。例えば、熟練のピアニストが複雑な曲を弾くとき、指が自然に動くのと同じ感覚です。重要なのは、知識やスキルを内省化し、反射的に動作(行動)がとれることです。

無意識的有能に達するまでには、多くの時間と努力が必要です。繰り返し学習、練習、経験を通じて、知識やスキルが自分の一部となり、意識せずとも自然に行動できるようになります。無意識的有能は、まさに「身体で覚える」形態と言えるでしょう。

無意識的有能の特徴

効率的なパフォーマンス

無意識的有能になると、意識的に行動する必要がなくなり、求められる行動を簡潔に行動・実行できるようになります。これまでの段階(無意識的無能、意識的無能、意識的有能)と比べて、考えや気持ち、そして行動に余裕が生まれます。そのため、無意識的有能の状態にある人は、意識的無能や意識的有能の段階にいるチームメンバーの指導や補助をおこなうサポートメンバーとしての役割を果たすことができます。これにより、チーム全体の成長を促進し、組織全体の効率を向上させることができます。例えば、熟練したシェフが新人の料理人に料理の基本技術を教えながら、自らは複雑な料理を迅速に作り上げる姿がイメージできます。

組織の成長促進

無意識的有能は、個人のパフォーマンスの向上だけに留まりません。サポートメンバーの役割にもあるように、個々の成長が組織の目標達成の可能性を高めることにつながります。無意識的有能のメンバーが増えることで、プロジェクトの進行が迅速かつ効果的になり、大きな成果を達成する期待が持てます。

自転車を意のままに!

自転車に乗ることができなかった子供も、時間をかけて繰り返し練習することで、次第にバランス感覚やペダル操作が身体に染み付きます。この過程で転倒や失敗を経験しながらも、少しずつ自信をつけていきます。そして、ある時点で全てがうまく噛み合い、自然と自転車を乗りこなせるようになるのです。この瞬間が、無意識的有能に到達した瞬間です。この状態に到達すると、風景や会話を楽しめるように、自転車の操作から他のことに意識を向けながらも、スムーズに自転車に乗ることができます。

無意識的有能を確実にする努力

無意識的有能の段階に達したからといって、そこで終わりではありません。能力を維持し、さらなる成長を果たすには、定期的な自己認識、目標設定、反復、習慣、そしてフィードバックが不可欠です。メジャーリーグで活躍したイチロー選手は、現役時代に「毎日の行動をルーティン化して、コンディションを維持すること」、「練習でできなことは試合でもできない」という持論を持っていました。彼のようなスペシャリストでも、無意識的有能の状態を維持するためには、自ら課した当たり前を繰り返す努力が必要だったことに、改めて驚かされます。

自己認識と目標設定

まず、改めて自分が何を知らないのか、どのスキルが不足しているのかを振り返ることが必要です。自分の弱点を認識することで、学習すべき領域が明確になって目標を再設定することができます。これは自己認識の第一歩で学習の基盤となります。

反復と習慣

次に、意識して該当する知識やスキルを繰り返し練習し、それを習慣にすることが重要です。特に習慣は、無意識的有能の状態を維持するための鍵となります。例えば、新しい言語を学ぶ場合、文法や単語を意識的に覚え、読解や会話を繰り返すことで、学びと練習が習慣となり、やがて意識しなくても新しい言語の理解につながっていきます。

フィードバック

フィードバックは、他者からの意見や自己評価を通じて、自分のパフォーマンスを見直して改善するための重要な手段です。アスリートやアーティストは、試合や演目の様子を振り返って自分の動きを確認し、次のパフォーマンスに活かしています。

無意識的有能の行動変容

無意識的有能は、行動変容において中心的な役割を果たします。自己認識を深め、目標を設定し、反復と習慣化を通じて無意識的有能の状態に到達することで行動が自然と変化します。この変化は、個人の成長に留まらず、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。

行動変容の可能性

リスキリングは、行動変容の有効性を示す代表的な例です。リスキリングは、既存の知識やスキルセットを更新し、新しい能力を習得するプロセスを指します。このプロセスを通じて、個人は変化に対応するための新しい行動様式を身につけていきます。リスキリングを通じた行動変容は、仕事のパフォーマンスを向上させるだけでなく、個人が新しい挑戦に柔軟に対応できるようにするため、組織の競争力を高めるのです。このように、リスキリングは単なる知識やスキルの習得に留まらず、組織全体の成長と進化を促進する重要な機会となります

そして、行動変容は個人のキャリア成長にも寄与します。新しい知識やスキルを習得することで、個人は自信を持ち、より高度な業務にチャレンジする機会を得ます。これにより、組織内でのキャリアアップや専門性の深化が可能になり、結果的に組織のリーダーシップの強化につながります。

このように、行動変容は単なる知識やスキルの習得だけでなく、組織全体の持続的な成長と競争力の強化に寄与します。個々の成長が組織全体の成果に直結するため、人材育成開発において行動変容は組織の成功にとって欠かせない要素です。

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