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回顧録-4

「眼球だぁ!?」
「ははは!いい反応するね、あんた。」
彼女は快活にケラケラと笑っている。
ただ、なんだ、その。
「流石に荒唐無稽が過ぎねぇか?」
「だったら信じてもらわなくても良い。『またはじまった』とでも思っておいてくれ。」
そう言う彼女の横顔が妙に真面目くさくて。
いつものように「また始まった」なんてからかえる雰囲気なんかじゃなかった。
「で、その眼球とあたしは『目が合った』。合っちまった。・・・・・・頭ん中しっちゃかめっちゃかにされちまったよ。」
ぐしゃぐしゃと頭をかきながら、彼女は更に続ける。


「頭ん中に声がする感覚っちゃ、相当気持ち悪いもんだよ。その上言ってくる内容も『選ばれた』だの『ようやくだ』だの、意味不明でさ。」
もう一本、タバコに火が付いた。
「何に選ばれたんだよ。」
「後から科学者どもに言われたのは、あたしが『適合者』だった、ってことさ。突然変異的に、アレと波長が合っちまう存在。ま、当時のあたしは知るはずもなかったが。」
絶妙にはぐらかされた。
「だから」
「『天使の目にされた』のさ、あたしは。」
・・・・・・は?
天使の目に、された?
「あんたそりゃ一体どういう意味だ。」
「そのまんま。あたしはあのとき、ニンゲンをやめさせられた。」

「だからこれはあたしの回顧録であり――あたしの、遺言だ。」

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