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対峙/退治
「よぉ、また来てやったぜ。」
流石の信者も驚いたらしい。
そりゃあ、なぁ。
ほぼ致命傷だった俺が、当然の如くいるわけだから。
「貴方は」
「拒まねぇンだろ?おら、さっさと案内しろよ。」
「信じがたいですが、慈悲深き唯一なる主神もそれをお望みです。」
だろうなァ。
これは、ヤツにとってもチャンスだ。
「大丈夫か。」
「その台詞、そのまま返してやるよ。」
まさかこいつまでついてくるとはおもわなんだが。
「行くのだろう?ならば、我も行く。」
「正気か?ヤツはお前も狙ってんだろ?」
「然り。だからこそ、我が向かえばアレは我らを拒めぬだろう。」
「……いざとなりゃ逃げろよ。」
「脆弱な人の子である汝こそ逃げるべきだが。」
この前来たのと同じ通路を通って、ヤツのもとに向かう。
よくわからねぇが、この前より重圧がある。
「……相当、喰らったらしい。」
へぇ、そりゃ大変だ。
心の内で考えた。
「この先です。」
「おー。」
ドアの前で、深呼吸を一つ。
大丈夫。
俺は、やれる。
「やあ、来てくれたんだね。」
「騙されるでないぞ。そいつは。」
わーってる。
笑顔を浮かべるのは、親父と同じツラをした偽神。
「……親父は、死んだ。テメェは、親父じゃねぇ。」
「おっと、つれないね。死者蘇生。それは、究極の奇跡。神にしかできない芸当だと、思わないか?」
「死体で人形劇してるだけだろ、テメェのソレは。」
或いは俺すらも、ただの人形劇の産物かもしれねぇが。
それでも構いやしない。
こいつは、納得しなそうだが。
「そんな事はない。私は、お前のお父さんだよ。悲しいな。前に会ったときは、あんなに驚いてくれたのに。それに。」
「だいたい、今のお前が縋っているアレが本物の神だと、誰が言ったんだ?」
「あ?」
誰が何に縋ってるって?
ああ、やっと心で理解した。
これは最早、親父とも呼べぬナニカだ。
「偽神を撃てと言われたそうだが、アレが偽物で私が本物だ。だから――」
「――親父は、泣いてるガキを見捨てねぇ。たとえ、そいつの素性が、神だの妖怪だの鬼だとしても!」
あの時、家に居たやつらは全員、親父が拾ってきたやつだったろうが。
「ッ!」
「いつも困ったような顔で!『少しだけ様子を見てくれるかな』と俺に頼んできただろうが!」
そして、俺は、真夏でも長袖で隠していた腕を見せた。
偽神と、俺の隣に居るこいつが、同時に息を呑んだ。
「わ、われは、我は」
会ったときより小さくなりやがって。
だから会わねぇ方が良いって言ったんだ。
「この傷は!あん時親父が拾ってきた!どっかのカミサマに囓られた傷だよ!!」
偽神見破ったり。
其の正体は――
「もう、いいのか。……大きくなったね、優哉。」
――ある人間の、ヒトの身に余る愛情。