急転直下
「今回は無より産まれたモノだ。」
化け狸の一件の次の日、ヤツは言った。
「ところで意味あんのか?この前のはただの無関係な狸だったみてぇだけど。」
「ああ。我が触れて壊した鎖があっただろう。」
「あった。」
「あれはより高位の偽神の力で編まれた物だ。」
マジかよ。
「にしても、無から産まれた信仰ねぇ。」
「自然を神とみて信仰するのだ、そこに何もなくとも信仰されれば神となろう。」
「そういうもんなのか?」
「……問題は、奉り方を知らぬ者がやると偽神となることだ。」
「ただの化け狸が神として崇められていたのはやり方を知らねぇヤツの仕業ってことか。」
「或いは、あえて誤ったやり方でやった者がいたか。」
向かった先には確かに祠のようなものがあった。
だが。
「……なんもねぇぞ?」
まぁ無から産まれた何かが見えねぇのはいいとして、信者の姿すら無ぇ。
「拙いな……急がねばならないやもしれぬ。」
「逃げられたか?」
「否――ここの偽神は、ヤツに喰われた後だ。」
偽神は喰われた。
其の正体を知られぬままに。