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"偽"跡
哀れな男よ。こんな場所で倒れ伏し、その命の灯は今にも消えそうだ。
「――まだ、死ねねぇんだよ、俺は」
されど不思議なことに、男は未だ己の命運を諦めていない。口から血を吐きながらも、まだ立ち上がろうとしている。男よ。一体何が、お前をそこまで駆り立てると――
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「――神を、信じますか?」
歩いていたら突然声をかけられた。
目の前には
電話番号と住所が書かれたパンフレットに、信じる神の名前が載っていないことだけが不気味だった。
『これを受け取った者は特権を得ました。慈悲深き唯一なる主神が貴方の話を聞いてくださります。』
「来てくださると思っていましたよ。」
「ここに来りゃ『神』と話せるんだろ?」
「はい。慈悲深き我らが主は信仰なき民にも広く門戸を開いておりますが故に。」
「だったら文句の一つや二つも言って良いってことだ。」
「文句?」
「――俺の親父は、テメェらみたいな胡散臭い宗教屋に殺されたんだよ。」
撃鉄をあげ、勢いのままに天井を撃った。
「素晴らしい。実に、素晴らしい。惜しむらくは一つ、貴方に神のご加護がないことのみ。」
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「哀れな男よ。」
「こんな場所で倒れ伏し、その命の灯は今にも消えそうだ。」
ガキの声……?
「――まだ、死ねねぇんだよ、俺は」
呟く。
そう、そうだ。
俺ァ、親父の仇を討ち取ると決めて、それで……
「されど不思議なことに、男は未だ己の命運を諦めていない。口から血を吐きながらも、まだ立ち上がろうとしている。男よ一体何が、お前をそこまで駆り立てると――」――ああ?
「ぐちゃぐちゃうるせぇんだよ、ガキ。帰ってママのミルクでも飲んでねんねしな。」
「驚いた。この声、届いていたとは。」
「あ?」
「男よ、汝は偽神を撃つ者。この手を取れ。」
(続く)