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回顧録-6

「いやぁ、悪かった悪かった。」
「悪びれる様子すら見せねぇのかよ・・・。」
あーくそ、まだ気持ちわりぃ。
なんなんだあの目。
内側からかき混ぜられた気分だ。
「でもまぁ、ある意味よかったよ。」
「どこが、良かった、だ。」
「あたしと目があって、それでもなんともなかったら、もう終わりだ。」
そう言って、彼女はライターを投げ捨てた。
らしくもない。
「でも、あんたはまだ間に合う。」
なんとか彼女のツラを睨み付ける。
「あんたはまだ『ヒト』だ。まだ、あんたは――ヒトとして死ねる。」
「さっきから何言ってんだよあんた。」
訳わかんねぇことばっかり言いやがって。

「だから、一つだけあんたに言っておかないといけない。」

「聖域からの呼び声には答えちゃならないよ。」

「――たとえその声が、誰の声だとしても。」

これ以上ないぐらい綺麗な微笑みだった。
それこそまるで
『天使のような微笑み』で

「さ、それじゃ、あたしはそろそろいくよ。ほら、笑いな。『やさぐれエルフ』の今際の際だ。」

ひらりと、彼女が柵を乗り越えた。

天使は羽ばたかなかった。
ライターのように、あっけなく。
そのまま、落下した。


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