モモちゃんとユウシンくん。
僕の最近の趣味はハゼ釣りだ。
ハゼ釣りをしてると色々な方に話しかけられる。
同じ釣り人には
「どうですか?釣れてます?」
「釣れるのは釣れますけど、サイズが小さいのばかりですねー」
など多少の会話をしたら、みんな後は自分の竿先に集中してます。
帰り際に
「お先です」
「お疲れ様です」
など、ひと言かけて1ターンの挨拶して皆帰る。
散歩中のご老人夫妻にも声かけられることもある。
「ここは何が釣れるのかしら?」
「ハゼですね」
「そう、ハゼが釣れるのね。本当だ!いっぱい釣ってますねー」
「今日は調子良いみたいです」
「がんばってね」
こんな会話もありました。
ハゼ釣りをしてると色々な人とコミュニケーションが出来る。
そしていつも1人で釣りに行くので他の人の会話も自然と耳に入ることも。
先日いつものポイントで釣りをしてると、お父さんと息子、娘の家族で釣りに来てたんです。
息子は小学一年生くらい、娘が3歳くらいだと思います。
その子たちはユウシンくんとモモちゃんという名前らしい。
家族で楽しそうに釣りをしていて、すごく微笑ましい光景でした。
自分もいつかは子どもを連れてハゼ釣りしたいなーなんて思ってしまいました。
ユウシンくんが
「パパー!釣れた!すっごい大きいの釣れたよ!」
声高らかに発しました!
僕も気になったのでチラッと見たら、いいサイズのハゼが釣れてました。
ちなみにこの日は5センチくらいの小さなハゼばかり釣れていました。
ユウシンくんが釣り上げたのは10センチは超えてたはず。
その大きなハゼを大事にバケツに入れてました。
モモちゃんはバケツのハゼを興味深く見たり、歩けるのが楽しいのか歩き回ったりと自由奔放。
モモちゃんが
「パパー!こっち来てー!ほらこっち!」
パパ「モモちゃんどうしたの?」
モモちゃん「水たまりがあるよー」
パパは目が離せないので釣りどころではなさそう。
ユウシンくんは釣りに熱中しております。
そんなとある家族の日常を耳にしながら釣りをしていましたがとうとう日も暮れてきました。
パパ「暗くなってきたからもう帰ろうか」
ユウシン「えー!まだやりたい!」
パパ「釣ったハゼ、ママに料理してもらおうよ」
ユウシン「うーん、、、わかった」
パパ「じゃあ帰る準備しよう」
パパとユウシンくんは釣竿などを片付けています。
一方モモちゃんは草を取って遊んでました。
さて釣ったハゼをバケツから持ち帰る袋に入れようとした瞬間、ユウシンくんが大きな声で騒ぎ始めました。
ユウシン「えー!パパ!ハゼが、バケツのハゼがいなくなってる!!!」
パパ「嘘?あれホントだ!逃げたのかな」
ユウシン「逃げるはずないよ!」
ユウシンくんはすかさずモモちゃんにこう言いました。
ユウシン「ねぇモモちゃん、ここにいたハゼどうしたの?」
モモ「、、、」
ユウシン「黙っててもわからないよ?」
パパ「モモちゃんハゼどうしたの?」
モモ「、、、逃してあげた」
モモちゃんはいつの間にか釣ったハゼを逃していたのです。
ユウシン「え!何でそんなことするの?」
ユウシンくんは自分が釣ったハゼを逃がされて怒りと嘆きが混じったような感じで聞きました。
モモ「だって、、、ハゼさん可哀想だから、、、川に逃がしてあげたの」
ユウシンくんは衝撃の事実を知り、怒り心頭です。
ユウシン「何でそんなことするの?僕が釣ったんだよ。1番大きかったんだよ。モモちゃんさ、もし毒あったらどうしてたの?毒あったらモモちゃん死んでたんだよ」
モモ「、、、」
ユウシン「モモちゃんはさ、毒あるかもしれないかわからないでしょ?毒あったらモモちゃん刺されてたよ」
ユウシンくんは自分が釣ったハゼを逃がされたショックが大半だと思うが、得体の知らない物を勝手に触ったことにもお兄ちゃんとして怒ってる模様。
そこへすかさずパパが入りました。
パパ「モモちゃんわざとではないんでしょ?」
モモ「、、、うん。」
ユウシン「わざとじゃなくても毒あったらモモちゃん死んでたんだよ」
パパ「ほらモモちゃんもわざと逃したわけじゃないんだしさ。モモちゃんが嫌がらせでわざと逃してたら怒ったけど、わざとじゃないんだし、可哀想だと思ったんだよ」
既にこの時にはモモちゃんは大号泣でした。
ユウシンくんも泣きそうになり目の力は失ってました。
ユウシン「泣きたいのはこっちだよ。せっかく大きいの釣ったのに。ママにも見せたかったのに」
パパ「そうだね。すごい大きかったもんね。帰ったらママに話してあげよう」
ユウシン「、、、うん」
パパ「またハゼ釣りに行こうよ?次はもっと大きいの釣れるかもしれないし!」
ユウシン「うん!いつ行く?明日は?」
パパ「明日はダメだから明後日に行こう」
ユウシン「わかった!明後日ね!約束だからね!!!」
ユウシンくんの目に力が蘇りました。
そしてモモちゃんにこう言いました。
ユウシン「モモちゃん、今度は絶対逃がさないでね」
モモ「うん」
ユウシン「じゃあ行こ!」
ユウシンくんはモモちゃんに手を差し伸べて2人仲良く手を繋いで帰って行きました。
パパはその様子を微笑ましく見守ってました。
そして僕も同じく微笑ましく見守ってました。
あとがき
僕の釣れたハゼが大きかったらお裾分けしてあげれたのに、この日は小さいのばかりでした。
もしまたそういう時があればお裾分け出来るくらい釣れとかないと!
がんばろう。