
アオガナメさん
山田野川に架かる一ツ橋が大改修されることになった。
川幅はそう大して広くない所謂小さな田舎河川といった趣きの山田野川。流れる水は一応無色透明だが、そもそも生活排水がだだ洩れに流されており、決して清いそれとは言えない。しかして斯かる川に長年架けられていた木造の一ツ橋も老朽化が進み、劣化が酷くて日々の往来に支障を来すようになってしまった。そこでお上からのお達しがあっての工事である。
俺もちょうどアルバイトを探していたところで、給金も良いことから、そこの人足の一人として土方仕事に従事する日々を過ごしていた。現場を仕切っているのは駒込の親方。駒込組には重機は殆どなく、ただ只管に肉体を酷使して川底の砂利を退ける。それが大体における毎日の俺たちの役務であった。果てしなくしんどい。四肢がだるだるになる。それでも日銭を稼げるものだから、文句も言わず黙々と苦役。もう初夏にさしかかっていたから、汗がだくだくと出る。日曜以外は毎日休みなく工事であるゆえ、自然と日焼けもして皮膚がぴりぴり痛む。
そんなある日、駒込の親方と俺を含めた数名の子方が橋杭の根元を掘っていたら、そこから一抱えはあろうかという大きな石が出て来た。その形、正円を描くが如くまん丸で、何かで磨き上げられたかのように表面はつるつるとしている。加えて色合いはちょっといい感じの深き青。むろん人工的に機械を使って研磨するなり着色するなりすれば、こんなの具合の石を作るのは簡単だろうが、そも誰が態々そんなことをして橋杭の底に埋めるなど致したのかという疑問が残る。その尋常ならざるつるつるさから、これ、ただの石ではないと親方は恐れ戦き、我々子方にその巨石を抱えさせ、一ツ橋周辺に展開される集落の長老格たる樋ノ優婆塞のもとへと駆け込んだ。
「アオガナメさんじゃッ」
石を見るなり開口一番、樋ノ優婆塞はそう言った。なにぶん高齢なため、甚だ普段からその発音が怪しい爺様なのだが、我々の耳にはそのように聴こえた。しかし意味が解らない。アオガナメとは何を意味しているのだろう。当たり前のことながら、よもやアオウミガメなんかのことを言っているわけでもなし、それともアホが舐め倒してつるつるにした石とでもいう意なのか。俺等が若干もじもじしていると、樋ノ優婆塞はまたもや「アオガナメさんじゃッ」と唇の端から垂らした涎をすいっと啜りながらそう叫んだ。
実はこの樋ノ優婆塞なる老爺、ただ単なる集落の長老格に非ず。時に険しき山に立ち入ったりもする拝み屋でもある。世に言うところの験者だ。この辺りの者たちは自動車などを購うと、交通安全を祈願して樋ノ優婆塞に祈祷をしてもらったりする。その霊力の真偽は兎も角、町の民間では相当頼みとされている爺様だ。
「神さんじゃッ。ええように扱えよッ」
神様? この珍妙な石が? 俺はまさかという気持ちで、自然、あははと声を洩らして笑った。が、莫迦みたいに笑っているのは俺だけだった。皆、深刻な面持ちで樋ノ優婆塞の話に耳を傾けている様子だ。気まずくなって、俺は、あははを呑み込んだ。果たして親方などは極めて真摯になり、樋ノ優婆塞に今後この石――アオガナメさんをどうしたら良いのかと訊ねている。樋ノ優婆塞はぷるぷると右掌を差し出し、人差し指と親指で円形を作るとそれを誇示し、あからさまに金銭を要求してきた。親方がハッとしたような表情になって、腹巻からくしゃくしゃになった千円札を三枚ばかり取り出すと、それを手渡す。
樋ノ優婆塞は破顔して今後の対策を喋り出した。不明瞭この上ないその言によると、全身全霊を込めて祀ること、榊、お神酒も必要。さすれば工事の大願成就す。とのこと。親方は急に背筋が伸びたようになって一礼し、樋ノ優婆塞のもとを跡にした。親方から「くれぐれも丁寧に扱えよ」との命を受け、アオガナメさんを抱えた我々もその後ろに続く。
斯くして現場の片隅の邪魔にならぬ高台にアオガナメさんは鎮座し、榊とお神酒を以って祀られることとなった。珍しい神さんが掘り出されたということで、噂を聴きつけた近所の媼たちが口々に真言の如きものを唱えながら、アオガナメさん参りにやってきたりもした。俺にはさっぱり分からぬことだが、媼たちは涙を流してつるつるの巨石を有難い、有難い、と有難がっていた。畢竟ただの石ではないかと正直、俺なんかは思う。しかし、駒込の親方をはじめ、現場の他の人足たちの雰囲気も、アオガナメさんを祀るようになってから一本芯が通ったようになったというのか、兎に角、粛々と仕事に従事するという空気感が形成され始めていた。さすが八百万に神が宿る国・日本である。ちょっと見てくれの変わった石が掘り起こされただけで、ここまで現場に神妙な生真面目さが生まれるのだから面白い。
そうこうしていると、現場に一匹の野良犬が紛れ込んできた。
餌に飢えた犬らしく、かつかつに痩せ細っている。持って生まれた野生の勘なのか、ここの親玉は駒込の親方であると早々に悟ったようで、親方のそばに近付くと頻りに尻尾を振って愛想を振りまき始めた。午の弁当の残りでも貰おうという魂胆なのであろう。
ところが親方は大の犬嫌いだったみたいで、その野良犬をにべもなく足蹴にした。 きゃひんと哭き、親方の近隣から逃げ去る野良犬。こともあろうに祀ってあるアオガナメさんの所に移動してしまった。そしてその野良犬は極々自然な動作で、片脚を上げると、アオガナメさんに黄色い小便をチョロロとひっかけたのだった。激怒したのは駒込の親方である。
「こンの腐れ犬外道がッ。神さんになにさらしてけつかんじゃア」
そう怒声を発するや否や、野良犬のもとへと駆け寄る親方。逃げ損ねた野良犬は足を縺れさせて転倒した。いきおい親方はその腹を踏みつぶすようにしたのち殴る蹴るの暴行に走った。元々生命力の弱そうな野良犬であったから、すぐに口から血泡を吐き、動かなくなった。死んだのだ。親方は激怒のあまり野良犬を殺してしまった。いけなかったのは、その殴る蹴るで飛び散った犬の真っ赤な鮮血が、アオガナメさんにばっちり付着してしまったことだった。ああッと顔面を真っ青にして、親方がアオガナメさんに着いた野良犬の血を手で拭おうとする。しかし、親方の両手もまた野良犬の血でべったり濡れていて、余計にアオガナメさんに血を塗りたくってしまうという有様になった。これはいかんということで、俺を含めた人足数名を顎で呼び、「アオガナメさんを綺麗にお清めせいッ」と親方は号令を発した。
俺は川の水をポリバケツに汲み、その水をアオガナメさんにぶっかけた。血も小便も綺麗に流れ落ちたように見える。うむうむ、これで良かろうと思っていると、同じ子方の峯松が俺の頭をばしんっと叩いた。
「こんなんでお清めにはならんで! ちゃんと塩もてこい!」
「なんてよ、塩らどこにあるんよ? 購うてくるんかいッ」
頭を叩かれた動揺から、俺はやや語気を荒らげて峯松に問うた。
峯松は矢鱈と手が早い。すぐ同僚に乱暴狼藉を働く。俺的には一緒に仕事をしたくない男ナンバーワンだ。それでいて親方にはおべっかを使って取り入る。だから親方は峯松を重用している節がある。その点も気に喰わない。別段、親方に気に入られたいわけではないが、なんだかやっぱり只管むかつくのである。
「塩、買うて来いッ」
俺等のやりとりを聞いていた親方が、また号令を発した。塩を買う金はどうなるのだ。まさか自腹か。なにやら峯松も「お前が行ってこい」みたいな空気を俺にぶつけてくるし、口惜しいことこの上ない。歯痒く思いながらも、致し方ない、スーパーマーケットまで粗塩を購いに俺は自転車に乗って疾駆した。途中、冷静さを見事に失ってしまっていた所為もあってか、二度ばかりペダルを踏み外しては転んでしまい余計に口惜しさが増した。
スーパーに行って粗塩を不承不承自腹で購ってきた俺。
現場に戻ると、ちょうど午後三時の休憩時間だった。
駒込の親方に 「塩買うてきました」と俯き加減に報告すると、親方は、 「おい、峯松」とまたお気に入りを呼んだ。こいつと一緒にアオガナメさんのお清めしたってくれ、と親方が峯松に言う。てっきり俺はみんなと一緒に休憩出来るものだと思っていたから、大層がっかりとした態度を見せてしまった。それをまた峯松が指摘する。「アオガナメさんをお清めでけるっちゅうのに、お前なんや、嬉しないんか」と。
やっぱりこいつと組むのは厭。厭を三連発したくなるくらい厭。
でも仕方ない。親方の命令は絶対である。
俺は粗塩の封を開けると、アオガナメさんの上にぱらぱらとそれを振りかけた。つるつるの青い表面に塩が滑って地面に落ちる。お清め、こんなもんでええか? と峯松の顔を見ると、いやいやまだまだと眉間に深く皺を寄せている。ああ、そうかいと俺は乱暴になってしまって、ざばざばとアオガナメさんに塩を全部かけまくった。やっぱり塩はアオガナメさんの表面から凡て滑り落ち、アオガナメさんのぐるりにそれが降り積もるような形になってしまった。塩のデコレーションである。こんな調子で怒られへんのかなと内心びくびくしていた俺は、親方の「おお、ええ感じやないかぁい」という変な節を付けた胴間声に心底安心した。
しかしそれにしても考えてみれば、犬の小便に、殺戮の血――アオガナメさんが本当に神様だったとしたら、所詮は素人が行う即席のお清め程度ではその怒りも静まらないのではないだろうかというレベルの穢され方である。ここは本職の拝み屋を呼んできて、しっかり祈祷してもらった方が親方も得心できるのではと、俺は進言した。本音はもうこれ以上、得体の知れないただの石かも知れないものに関わりたくないという気持ちから発したものではあったのだが、殊の外、この進言が親方の胸を打ったらしい。お前もなかなか殊勝なこと言うがなと珍しく褒められたのは良かったのだけれども、豈図らんやそのまま続けて、早速樋ノ優婆塞のところへ行って祈祷を頼んできてくれと口早に命じられるとは。がくり、である。結局まだまだあの石から逃れられへん。
その時であった。突如、熱帯雨林地域のスコールが如く、ばら、ばらばらばら、と大粒の雨が降り始めた。何事――と思っているうちに雨足はどんどんどんどん強くなり、見る見るうちに所謂豪雨となった。アオガナメさんの周りに積もっていた清めの塩が一息に流れ、溶け、霧散してゆく。親方はそれを見ると顔面蒼白になり、俺に急げ急げと祈祷の依頼を促した。
やがて突として雷まで鳴り始めた。余りの不穏な空気に俺も不安な気持ちになってしまい、優婆塞の家に向って力一杯自転車を漕いだ。なかなか到着しない。こんなに遠くの家だっただろうか。同じところをぐるぐる廻っているような気もする。雨。雷。やがて突風まで吹いてきた。俺はずぶ濡れになりながら、自転車を捨てて自力で走ることを選んだ。樋ノ優婆塞の家。樋ノ優婆塞の家。呪文の如く繰り返す。見えて来た。あばら屋。荒れ果てた破屋。間違いない。雨樋に水が溜まり過ぎて通常の排水が困難になっている。樋から滝のように流れ落ちる雨水。厭な予感がする。
「こ、こんにちはッ。一ツ橋の工事現場の者です。アオガナメさんが――」
返事がない。人の気配すらない。俺は濡れた身体をちょっと気にしながら上がり框に足をかけた。古びれた床に水滴がぽとりと落ちる。
しんとしていた。
ただ激しい雷雨の音が響き渡るばかり。俺は樋ノ優婆塞を探した。そんなに広い家ではない筈だ。平屋で部屋は二つ。あとは風呂か閑所か。いた。まるで肥溜めのような古いタイプの汲み取り式の閑所の中に老爺はいた。卒中か何かは判らない。兎に角、用を足している最中に何らかのアクシデントに見舞われ、便壺の奈落に誤って転げ堕ちたのだろう。そこで糞尿にまみれて樋ノ優婆塞は倒れていた。恐る恐る声をかけてみるが、ぴくりとも反応しない。つまりは絶息していたのである。
慌てて山田野川の一ツ橋――現場まで戻って来た。人間の死体を見たのは生まれて初めてだ。俺は動転していた。豪雨は降り続いている。川の水嵩が尋常ではないくらい増えていた。現場に水が浸食して来ないようにしているのであろう――親方はなけなしの重機を使って土砂を積み、大声で人足たちに指示を送っていた。人足たちも麻袋に土や小石を詰め、俄かの増水に対処しようと懸命な様子であった。
俺は重機のそばに駆け寄り、親方に声をかけた。
「親方ッ。駒込の親方ッ」
「おお! 樋ノ優婆塞にご祈祷頼んだかッ?」
「駄目ですッ。死んでましたッ」
「死んで――って、お前、おいッ!」
その瞬間、重機の足場に川の水が轟と流れ込んで来た。重機のバランスが一気に崩れる。親方を乗せたまま、重機は山田野川の本流に倒れた。助けてくれーッという親方の声が響いたが、それも虚しくすぐに声ごと親方は濁流に呑み込まれた。
うわあと悲鳴を上げながら、俺は急いで高台によじ登った。アオガナメさんが祀られてある場所だ。少々ならば雨滴すらも滑るつるつるの表面。そもそもこの奇異な青い石を掘り起こしてから良くないことだらけではないか。まずは乾くくらいに痩せた野良犬の死、次に清めの粗塩は嫌々の自腹、加えてゲリラの奇襲とも言うべき突然の豪雨、更に頼みの樋ノ優婆塞は閑所の奥底で糞まみれになって死んでいた。そればかりか挙句ついには増水の事故によって駒込の親方すらも流され、生死不明の行き方知れずである。神は神でも、このアオガナメさん、疫病神の輩が如き類に違いない。畢竟、触れてはならぬものだったのだ。否、今からでも遅くはない。元の川へと戻すのが絶対一番善いに決まっている。俺は土砂降りの雨に打たれながら、いきおい榊とお神酒を蹴り飛ばした。
「待っとれよぉ。この雨、止ましたる」
俺は両腕に力を込めて、アオガナメさんを抱え上げた。その刹那「何をしちゃうんならッ」という峯松の声。後頭部に鈍い衝撃を俺は強く感じた。峯松に殴られたのだ。この期に及んでもとことん好かん男である。もちろんアオガナメさんはぬかるみになっている地面に落ちた。
「アオガナメさんは祀らなあかんッ。おどれ如きが好き勝手すなッ」
峯松が叫びながら、元の位置にアオガナメさんを戻そうとする。俺はそれに抵抗すべく、屈みこんでいる峯松の背中に体当たりした。予期せぬ出来事だったらしく、峯松は泥水の溜まった河原にアオガナメさんごと滑り落ちた。峯松は顔を真っ赤にして怒り、
「おどりゃッ――」
と、高台に駆けのぼると、俺に再度殴りかかって来た。鼻の頭をガツンとやられ、俺は一瞬意識が飛んだ。鼻の孔の奥から、熱いものが流れ落ちて来る。鼻血だ。ぼたぼたとぬかるみの中に赤黒い鮮血がその花を咲かせる。その隙に峯松が河原に飛び降りて、あの巨石を抱きかかえて来た。祀ってあった場所にアオガナメさんを下ろす。俺はふらふらになりながらも峯松の動きを制そうとした。しかし、力が入らない。
「峯松ッ――そいつはあかんッ。祀るようなもんとちゃうッ」
「何言うとるんじゃッ。この罰当たりもんがッ」
峯松が俄かにぶつぶつと真言らしきものを唱え、懐から取り出したタオルでアオガナメさんを拭き始めた。しかし雨足は強い。もはや横殴りの雨である。拭いてゆくそばから激しい雨滴にアオガナメさんは濡れてゆく。
そのうちタオルも雨水でぐずぐずになった。それでも峯松はタオルを絞り、アオガナメさんを清めんとする。まるで何かに取り憑かれているかのようであった。
俺は最後の力を振り絞り、峯松を羽交い絞めにした。狂ったかの如く峯松が手足や胴を揺り動かす。俺の羽交い絞めを解こうとしているのだ。俺も必死になって後ろから絞めかかる。やがて峯松の蟀谷の辺りに青筋が浮き出て来た。ぎりぎりぎりという峯松の歯噛みの音が聴こえる。結局のところ膂力は峯松の方が上だった。絞めを解かれ、俺は柔のように投げ飛ばされた。
「アオガナメさんッ――」
峯松が豪雨からあの石を護るかのように、四肢を広げて全身でアオガナメさんに覆い被さった。その刹那である。どンっという雷鳴と共に稲光が走った。落雷。直撃。アオガナメさんと峯松のその身に雷が落ちたのだ。ごぉんごぉんと空気が鳴動する音。断末魔の叫びを上げることも無く、峯松はそのまま動かなくなった。作業服の背中の箇所がぶすぶすと焦げたように黒ずんだ峯松の身体の下で、アオガナメさんが真ッ二つに断ち割れている。
俺は痛む総身を引き摺りながら、峯松の遺体と割れたあの石のもとに近付いた。峯松を石の上から退かせ、そして割れたその断面を覗く。ぞっとした。この巨石、奇矯なのは上っ面だけではなかった。割れた断面も中心までつるつるで、そこから青黒い液体が雨に溶けるが如くぬらぬらと不気味にしたたり落ちている。あたかもそれが鮮血であるかのように。さながら石どころか生き物であるかのように。俺はぶるぶる恐々としながらも、半分になったアオガナメさんをひとつずつ抱えると、高台から河原に降り、増水した山田野川の橋杭目掛けて、それを続けてふたつとも乱暴に放り投げた。
これで雨も止む筈――。
水嵩も低くなる筈――。
すべてが終わる筈――。
だが豪雨は弱まる気配も一向なく、やがて橋は流され、川は激しく猛烈に氾濫。奇っ怪であると思ったのだろう、恐らく山田野川の氾濫と気象の異変を知らせるべく町役場の緊急サイレンが横殴りの暴風雨の中、劈くように鳴り響いた。橋杭のあった辺りから、凄まじく水飛沫をあげて濁流が渦を巻き始める。渦巻きの中心には濁り水と混ざり合うように、割れたアオガナメさんから流れ出たと思しきどす黒い青き液体の存在がはっきりと見てとれた。
そして俺にはその様子をただただ呆然と眺めるしか為す術がなくなった。俄かに濁流の水沫が浸食してきた高台の上に独り立ち尽くし、なおも不安を煽るかの如く響き渡るサイレンの音に身を震わせながら――。