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着信があり、米が無く、タクシードライバーは秋刀魚を買った

今、スマホに着信があった。
着信音が鳴った瞬間、どきりとした。
覚えのない番号だ。
もとより私は電話を親の仇の如く憎む。

もちろんそのまま放置し、
着信音が鳴りやむまで
私は身を強張らせたまま
息を殺していた。

別段借金取りの類いから催促があって
日々びくびく暮らしている
というわけではないのだけれども
兎に角、私は普段から
通常の電話であったとしても
それを激しく厭う。

電話で話すのがそもそも苦手なのだ。
あ。しかし懇意にしている司法書士からの
電話だったのかも知れない。
だったら出て話せば善かったかな。

それはそうと米が無い。どこにも売っていない。
無い無いという話は少し前から
耳にしていたのだが、本当に無いことを
今日この眼ではっきりと確認した。

スーパーマーケットの米売り場は
がらんとしており、
全く以て何も売り物がない状態であった。

南海トラフに関連した地震に備えての
買い占めという噂話や
前年の酷暑で米が取れなかったゆえの
致し方のない米不足という
また別の噂話が飛び交い、
本当の理由なるものが
判然としないわけなのであるが――。

仮に酷暑が原因ならば今年は
昨年以上の厳しい夏が続いているからして
来年も米不足に陥ってしまうことになる。

ところが本日、中食として
弁当を購入したところ、
その弁当には米すなわち白飯が
ふんだんに盛り付けられておって、
私は存分に(といっても腹七分目ぐらいに)
無い無いと騒がれておる米を喰らった。

不思議である。

無いはずの米がある――。
なんだかどこかキナ臭くもあるが、
真の事実が判らぬ以上、
曖昧勝手な明言は避けた方が善い。

そういえば今朝乗ったタクシーの運転手は
朝イチでマーケットに足を運び、
秋刀魚を購ったと言って勇み悦んでいた。
なんでも秋刀魚を喰らうのは
三年ぶりだそうな。

やはり我々は確実に貧民化してきている。

ということで、
書きたいことは書き散らかしたので
ここで最後に一曲。THE POP GROUP「THIEF OF FIRE」
それではまたいずれ。


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