木もれ陽がまぶしいということ
先日11月17日(日)、本をメインにしたイベント「こもれびBook Market」を無事終えることができました。
当初は16日(土)の開催予定でしたが、雨天のため翌日に延期をしての開催となりました。2週間、1週間と開催日に近づくにつれ、悪化していく天気予報。一時は土日ともに雨予報となったりして、「えっ、開催できないこともあるのか…!?」とドキドキでしたが、延期開催をした17日(日)は、半袖で良いほどあたたかく、木もれ陽もキラキラと降り注ぎ、まさにイベントタイトル通りの一日となりました。
ご来場いただいたお客さんが木もれ陽の降り注ぐ参道を歩きながら、本を手に取り、コーヒーを飲んだり、可愛い雑貨を眺めたり、ゆったりと楽しんでいってくださる姿がとても嬉しくて、すれ違う皆さんの顔を見ながらあたたかな気持ちにさせていただきました。
延期になったことでご来場いただけなかった方々もいたことが申し訳ないなぁという気持ちもありましたが、「延期になったことで来ることができたんです!」という方々も結構数いらっしゃり、そう言ってくださる皆さんに何度も励まされました。
「こもれびBook Market」は、黒潮町で本屋を営むYamamoto Marketが主催をしていることから、もちろん、「本」をメインにしたイベントで、このイベントをきっかけに、ご来場いただいた皆さんと本のつながりが広がったり、出会いがあったり、発見があったりと、本の良さや本屋さんとの交流を楽しんでほしいなという思いで始めたイベントです。そうではあるのですが…
私自身、もうすぐ黒潮町にきて10年。神奈川で暮らした二十数年の間には想像もし得なかったような豊かな暮らしをこの黒潮町でさせてもらっていて、そこには、会場となった加茂神社の参道や入野松原、入野の浜、ちょっとローカル感溢れる西の海、港に泊まる漁船の風景、田んぼと川辺が美しい奥の地域、四季折々に変わっていく畑の様子、そして今、私が暮らす有井川周辺の景色・・・といった数々の素晴らしい自然の魅力があり、そして、いつもあたたかくサポートしてくださり、見守ってくださり、私の黒潮町での人生を楽しさで溢れるものにしてくださった皆さんがいる。
「こもれびBook Market」は、そんなふうに私が感じてきた黒潮町の魅力を皆さんに伝える場であったり、私が「幸せ」と思ってきた人々との繋がりを、加茂神社の参道に来ていただいた皆さんがそれぞれに広げてもらったり、感じてもらったり、大切な人たちとあたたかな時間を過ごしてもらったり、そんな場所になればという気持ちで開催させていただいています。だからこそ、黒潮町の人たちや、町外から来てくださった人たちが交わってくださる瞬間は、「あぁ、嬉しいなぁ」とついつい感じてしまいます。
黒潮町が好きすぎる私の、少し押し付けがましいイベントのように聞こえるかもしれませんが、あの日参道に来てくださった皆さんが、会場で感じた自然から得る感覚や、おしゃべりした人たちとの会話、あたたかさ、楽しさ、喜びを、胸に閉まって帰ってくださっていれば、それ以上に嬉しいことはないなと思います。
そしてそんな場を一緒に作ってくださった出店者の皆さん、ヨガのインストラクターさん、スタッフとして協力してくださった皆さんには、感謝でいっぱいです。延期になり、2日間予定をあけるということは、本当に大変なことだと思います。出店ができなくなった方々やお手伝いに来られなくなったという方々もいらっしゃいましたが、あたたかなメッセージをくださったり。マーケットのおかげで繋がることができた皆さんに、感謝です。
イベントが終わり、出店者の皆さんも会場を後にされた本当に最後、神主さんと奥様が参道を箒で綺麗に整えてくださり、「賑やかにしてくれて、ありがとう。もうあとはこれだけやけん、ゆっくり休んでね」と、笑顔で声をかけてくださいました。木もれ陽が降り注ぐ、最高の会場をお貸しいただき、本当にありがとうございました。
また、「こもれびBook Market」はもちろん、それ以外にこれまで開催してきたイベントやYamamoto Marketの本屋でも、いつもお世話になっている木工工房「ATOM HANDS」さん。
昨年に引き続き、今年の「こもれびBook Market」も当たり前のように手伝ってくださり、私の「こうしたい」を応援してくれたり、形にしてくれたり、アドバイスをしてくれたり。開催日まで揺らぐ私の心のサポートも、毎日のようにお話をする中でどれだけ支えられたことか。木工屋さんとして、大家さんとして、そして、高知の両親のような存在として。
会場の葉っぱの看板(岡本真帆さん選書コーナー)や各出店者さんの看板、お客さん用の椅子やテーブルなど、木でできているものはすべてATOM HANDSさんのご協力あってのものです。雨降りの前々日にも、当日の早朝にも、会場の装飾を私のイメージに合わせてしてくださいました。「当たり前のように手伝ってくださり」と、先ほど書きましたが、ATOM HANDSのご夫妻の優しさに、身軽さにいつも甘えてしまいますが、「決して当たり前のことじゃないなぁ」と、その度に感じます。これからも直接感謝を伝えていきたいなと思いますが、この場もお借りして・・・いつもありがとうございます。
さて、翌日夕方、自宅に泊まっていた東京の友人を窪川駅へ送り届け、全てを終えて愛犬と散歩に出かけたそのさらに翌日の朝、谷川俊太郎さんの訃報を母との電話で知りました。
木もれ陽をめいっぱい感じ、鳥の囀りを聞き、笑顔になり、そんな充実の一日を過ごしたあとのすぐのことだったので、谷川さんを代表するこの詩がとても思い出され、この詩の朗読をネットで見返し、涙がこぼれました。
「あの芸能人に会いたい!」みたいなのは全くと言って良いほど無い私ですが、「会って話をしてみたい(聞いてみたい)人=谷川俊太郎さん」というくらい、私は彼の詩が好きです。
でも、谷川さんが亡くなられたことで、私の中で思い出された詩は「生きる」という詩で、「いま、生きている」と、彼の詩とともに、死とともに、強く感じさせていただきました。
木もれ陽がまぶしくて、たくさんの方たちと笑い合えて。私はいま、生きている。やり切った後の燃え尽き症候群のようになりそうなところもありますが、また、力強く、この地で生きていこう、私らしくやっていこうと、このタイミングでまた力をもらいました。
話は少しそれましたが、「こもれびBook Market」、関わってくださった全ての皆様に心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。
2024.11.17 sun
「こもれびBook Market」by Yamamoto Market