「自分たちの社会は、自分たちでつくることができる」という確かな手応えを。
「どうして、ルールメイキングに打ち込んでいるんだろうか?」
みんなのルールメイキング。学校の校則・ルールの対話的な見直しを通じて、みんなが主体的に関われる学校をつくるサポートをしています。そんな取り組みを全国の学校と進める中で、改めて書き起こしておきたい自分への問いだったので、今回書いてみます。
それは、2010年春。
出会ってしまった景色(世界)があったからです。
その景色は、北欧・スウェーデンでした。
大学在学中は、ユースワーク/中高生世代の余暇活動・社会参画支援に取り組んでいました。大学2年生になったときに、あるNPOがスウェーデン若者政策を視察するスタディツアーを企画しました。当時、北欧諸国から学ぶようにしていた僕らは「若者政策の先進国であるスウェーデンに行って肌で感じたい」と先輩と参加しました。
そして実際にスウェーデンを訪れ見聞きしたものが、別世界の「あたりまえ」でした。
(スタディツアーのダイジェスト動画です。よかったらこちらも見てみてください。)
子どもたちが自由に使える予算を、年間50万円つくっています。
ウプサラ市の小学校を訪れた際に校長先生が話してくれたことです。
学校によって金額差はありますが、 この小学校では「子どもが自由に使える予算」つまり「子どもの要望を実現するための予算」を年間 50 万円用意しています。この年は、給食が予算の使い方のテーマになっていました。「給食はいつも健康的なメニューで、もっとピザとかフライド ポテトばかり給食にしてほしい」という声が上がりました。
日本の場合だと「何を言ってるの」の一言で片づけられてしまいますが、スウェーデンではそのような声も大切に扱います。でもただ要望を聞くのではなく、「メニューはどうする?」「そのためにはどんな食材が必要かな?」「いくらかかるかな?」など子どもたちが主体となり、先生がサポートしながら「どうしたら実現できるか」を考えて実行します。実際にこの小学校では話し合いの結果、ジャンクフード中心の 給食週間を実施したそうです。
スウェーデンの学校では、さまざまなカタチで生徒が意思決定の場に参加することができます。学校環境/学習環境への参加はあたりまえで、自分たちを教える先生の採用に生徒が同席したり、学校予算に参加するケースもあるそうです。
・学校環境/学習環境 100%
・学校方針 80%
・学校スケジュール 40%
・教職員採用 20%
・学校予算 0.1%
(2010年ヒアリング時の数値です)
政府に若者の声を届けること、若者の意見を発信することに一番力を入れています。
スウェーデンには、生徒会の共同組織である全国生徒会や地方自治体で活動する若者会の全国組織である全国若者会、それらを束ねる全国青年協議会などのアンブレラ組織があります。それぞれの組織は10〜20代の若者で構成され、代表も20代前半でした。
代表たちが共通して強く伝えてくれたことが「若者の声を届けることが自分たちの一番の仕事だ」でした。彼らは、若者の声を反映させるために政府や自治体との対話機会をつくっています。また加盟団体のロビイングのサポートも行っています。
若者の声を集めて届けること/自分たちの声を届けることの必要性と意義を、若者自身が感じて行動に移している/仕組み化しているのです。
僕たちは地下鉄の無料化を求めています。
休日のストックホルム駅には、こんな旗を持った若者たちが集まっていました。聞くと、地下鉄の無料化を求めて活動しているとのこと。
この日は、他にも地元のサッカーチームの資金を集めるためにフリーペーパーを配る若者たちとも出会いました。彼らのとても和やかに楽しそうに活動する姿がすごく印象的でした。自分の気になったことを自分事と捉え、無理せず自然体でアクションを起こし自分たちの声を届けている。そして、それをあたりまえのものとして見ている大人たち。その光景は、日常、いつもの生活の一部になっていました。
若者は問題ではなく、社会のリソースなんです。
青年事業庁を訪問した際に、職員さんがこのように言っていました。スウェーデンでもまだまだ、若者は問題である/若者は悪いことをする存在だから、その「防止」をしようという発想になるそうです。
しかしそうではなく、政策をつくる人たちが若者の可能性を信じて、その視線で若者を捉えることで、政策の方向性や哲学は大きく変わるでしょう。
相互の「信頼」が土台に。
スタディツアーを終えて、当時の自分はこんな感想を残していました。
今回訪問した全国規模の若者組織の代表は23歳でしたが、日本から訪ねた大人の質問攻めにも臆することな く堂々と意見を述べ、「自分たちの仕事は若者の声を届けること」と言っていました。なぜスウェーデンの若者にはそれが可能なのかと疑問を抱きながら視察をつづけて分かったのが「スウェーデンは大人と若者がすご くフラット、大人と若者がすごく対等な社会である」ことでした。大人が若者を対等な人間として考えているから若者の声を聞くし、若者も聞いてもらえるから声を届けているのだと思います。大人社会が「若者の声を 積極的に聞こう」とし、僕ら若者が「自分たちの声を届けよう」とすることが大事だと感じています。
スウェーデンには、「自分たちの社会は、自分たちでつくる」機会と経験が、学校にも学校外にもたくさんある。相互の信頼を持って、それぞれがそれぞれのペースでアクションしている。
自分たちの社会は、自分たちでつくる。
ルールメイキングサポーターの苫野さんは、下記の記事の中でこのように言っています。
お互いの自由を尊重し、この社会を共につくり合うこと。学校は本来このことをこそ、子どもたちに教える場でなければならないのだ。
校則見直しはあくまでも一例である。重要なことは学校が、大人も子どもも、お互いを対等な存在として認め合い、対話を通した合意形成やコミュニティーづくりの経験を積む場になる必要があるということだ。逆にいえば、このことが実現されなければ、学校はもはやその存在意義を主張することができないだろう。
日本の若者の、生活時間の大部分を占めるのが「学校」です。また学校は若者にとって身近な社会でもあります。学校においても「自分たちの社会は、自分たちでつくることができる」という経験と実感を、すべての生徒が大小さまざまなカタチで得てほしいと思っています。学校の校則・ルールを見直し、つくり合うことが、その経験の第一歩になると信じています。
だから、私はルールメイキングに打ち込んでいます。
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