登山ガイドの必須装備④ ファーストエイドキット
お客様をガイドする際に必ず持参する装備をご紹介します。
今回は、ファーストエイドキットです。
なぜファーストエイドキッドが必要なのか
山では想定外のアクシデントにあってケガをすることがあります。
ケガにも大きく分けると、その場の処置だけですむような軽いケガ、病院に行く必要がある重いケガ、の2種類があります。
木の根につまずき転んで擦り傷ができる、浮石を踏んで捻挫する、毒虫にさされる、植物のトゲがささる、バランスをくずして滑落し骨折する、など。
山では、薬局が近くにあるわけではないので、携帯しているモノで対応する必要があります。特に、重いケガの場合は、病院などの医療機関や救急隊員に引き継ぐまでの「救急措置」を実施する必要があります。
(しかし、あくまで適切な医療処置を受けるまでの補助的な対応です。)
そのため、いろいろなケガに、できる限り対応できるような装備の携帯が必要になります。
主なファーストエイドキット
様々なファーストエイドキットを携帯するのですが、今回は日頃より出かけている山においても比較的使用頻度が多いと思われるモノを紹介します。
(他にもサムスプリントや蘇生用マウスピースなどもありますが、詳しくはまた別の機会で)
1.防護用ゴム手袋
救助者は決して自分を危険にさらした行動をしてはいけないため、手当をする前にあらかじめ感染予防をする必要があります。
そこで、傷病者の血液や体液が直接触れないように、防護用ゴム手袋を使います。作業がしやすいように指にフィットして破れないような厚さのものが良いです。傷病者が複数いる場合は、傷病者ごとに手袋を交換する必要があるため複数携帯します。
2.穴あきペットボトルキャップ
傷がある場所はバイ菌が入り化膿する可能性があります。傷の中に泥や砂利が入っているとさらにバイ菌が繁殖しやすいです。そこで、処置をする前にまずは洗浄をする必要があります。
傷の中に草や砂利が入っていた場合はピンセットで除去して、水で洗い流します。洗浄する際に水圧をかけたいため、穴あきペットボトルキャップを使います。ペットボトルキャップにキリで1つ穴を開けただけのものですが、水が入ったペットボトルに付け替えれば患部を水圧をかけて洗浄できます。
3.絆創膏、綿棒
絆創膏は擦り傷などの軽いケガや靴擦れなどに使います。綿棒は傷から異物を除去する時に使います。普通に市販されているものです。
4.滅菌ガーゼ、包帯
滅菌ガーゼは患部の保護に使います。また、出血している場所にガーゼを直接あてて圧迫することで止血をすることもあります。そのため、患部を覆えるぐらいの大きさが適切です。
包帯は、ガーゼを固定したり、骨折の際に副木を固定するなど汎用性が高いです。伸縮するタイプの包帯を使用します。
5.三角巾
三角巾はただの三角形の薄い布ですが、色々な用途に使えるので携帯しています。広げた状態で使ったり、あらかじめ折りたたんで包帯のような状態で使うこともできます。
代表的な用途は、骨折したときに腕を吊る用途、大きめにたたんで患部に当て保護する用途、包帯のように患部に巻き付けたり結んで固定する用途があります。
腕を吊ったりするため大型サイズの方が使い勝手が良いです。
6.テーピングテープ
テーピングテープは主に患部の固定に使われます。最も使用頻度が高いのは足首の捻挫だと思われます。捻挫以外にも突き指や手首の固定などにも使う場合があります。
ケガの手当以外にも、登山での様々なトラブルにも使えます。ザックが壊れた、トレッキングポールが壊れた、靴のソールが剥がれたなど。
テーピングテープが1本あればかなりのトラブルに対応できますので、ぜひ携帯しておきたいものの1つです。
一番使い勝手が良いのは足首の捻挫の際に最適な非伸縮性3.8cmです。指に使う場合はもっと細い方が良いのですが、テーピングテープは簡単に手で裂けるので半分の幅にして使用することが可能です。
7.ステロイド軟膏
山では、蜂、アブ、ブヨ、毛虫などの毒虫や、うるしなどのかぶれる植物があります。それらに刺されたり触れたりすると、炎症などの症状ができることがあります。
ステロイド軟膏は抗炎症作用や免疫抑制作用があるため、皮膚のかゆみ/赤みを抑えたり、炎症の広がりを抑えることができます。
8.ポイズンリムーバー
ポイズンリムーバーは、蛇や毒虫に刺された際に毒を吸い出すための道具です。吸引口を患部にあててレバーを引くことで毒を吸引することができます。登山だけではなく、森の中でのキャンプでも利用価値があると思います。
9.ハサミ、ピンセット
大ケガをした場合などに、服を切る場合があります。そのためにハサミを携帯しています。
また、トゲが刺さった時は、ケガをしたときに傷の中から異物を取り除くためにピンセットも携帯しています。
私は、ハサミとピンセットを具備している小型のマルチツールを使っています。(一応、ピンセットは大きめのピンセットも別途持っていきます)