Editor’s Letter:「眼差しを向ける先」-PLUG MAGAZINE vol.61「In Real Life」
最新号(10月19日発刊)の特集は「In Real Life」です。「アナログ」、「モノクロ」、「リアル」をテーマに、岡山で働く人たちを創刊から初となるオール白黒写真による巻頭特集に収めました。ぜひ岡山県内の書店やコンビニ、AMAZONなどでチェックしてください!
Editor’s Letter:
「眼差しを向ける先」
今号のテーマは、「アナログ」、「モノクロ」、「リアル」です。
岡山で働く人たちを、創刊初となるオール白黒写真による巻頭特集に収めました。
また、それぞれのインタビューを書き手が文字にすることはせず、出演者のヴォイスをそのまま聴いていただく企画にしています。
余計な情報や主観的な編集、写真の色さえも取り除くことで、地元のひとたちが仕事や作業に向き合うありのままの姿を写したい。そして、岡山での暮らしや未来を考える上で、被写体の思考や捉え方を参照したい。
それが、今回の特集の動機です。
マスメディアや政治は威信失墜。代わって影響力主義とでも言わんばかりに続々と現れるインフルエンサーたちが世間を跋扈しています。いわゆる「盛る」加工がされた自撮り写真などは易しいもので、巧妙に誰かを養分にしようと狙うニセモノの言説で溢れるSNSの世界。画像や文章、音声などがAIによって生成されたディープフェイクなる情報は、もはや真偽の見分けがつかない精度にまで高められつつあります。
そういった時代を生きる中で、「リアル」とは、「オリジナル」とは何かという問いに耐えられるか否か。今後、これらは私たちの活動すべてのベースを支える主題になるのではないでしょうか。
岡山を対象化してきた本誌として、リアルを開示するために選んだアノニマスな人たち。その被写体そのものを写し出そうと目論んだモノクロ表現でしたが、制作を終え、私にはかえってそれが“非現実的”かつ“抽象的”なイメージに感じられました。
The truth is the best picture, the best propaganda.
(真実が最高の写真だ。それは最高のプロパガンダでもある。)
これは、著名な報道写真家ロバート・キャパの言葉ですが、フェイクを警戒していたはずだった私自身の中でも、いつの間にか虚飾と実像が入れ代わりつつあったのかも知れません。
手元の眩い画面を覗かなくても、顔を上げて周りを見つめ、目を凝らせば、そこには気づかなかったリアルな格好良さや美しさ、憧れや尊敬、学びや発見、感動や面白さが必ずあります。
今回の特集は、私自身の錆び付いたフォーカスに油を差し、固まったアングルを揺すってくれました。
おかげさまで本誌は来年で二十周年。
これからも、OKAYAMAに眼差しを向け続けて参ります。
プラグマガジン 編集長 YAMAMON