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LOCAL TRIBE vol.3 「岡山から“産地教育”の必要性を考える」(繊研新聞 2024年2月16日付)



 デニムの聖地として確固たる知名度を誇る岡山県。桃太郎や特産品である果物などと並べて、「デニムで有名な岡山県」と喧伝(けんでん)する地元の人も随分と多くなりました。政治家が郷土愛のアピールを狙ってデニムで仕立てたスーツを愛用するほど、いまやお国自慢の一つ、私たちのボキャブラリーとしてもすっかり定着しています。

聖地の輝きは永遠か
 
 児島や井原地域をはじめ、染色、織布、縫製、加工などの業者が集積した一大生産地として、現在も世界にそのプレゼンスを示す岡山県。しかし、名声が高まる一方で、他の伝統的な技術職などと同様に、若者のなり手不足は喫緊の課題となっています。これは岡山に限ったことではありません。近年、各所で過熱する産地のプロモーション活動も、人材確保の面に限ってはあまり有効に作用していないのは明らかでしょう。
 産地を次の世代に残すには、表面的なコマーシャルよりも実態に迫った「産地教育」こそ急務だと言えます。岡山のデニムを誇らしげに語る地元の人たちも、実はその歴史や背景、生産工程や技術力などについて、ほとんど何も知りません。いまこそ産地として、どのような学びの機会を作り、いかに若者たちに伝えていくべきかが問われているような気がします。

“顔の見える”産地に
 

 中国デザイン専門学校(岡山市北区)は、03年に全国初のデニム・ジーンズコースを開設しました。06年からデニムジーンズ科として確立し、これまで100名以上の人材を業界に輩出。また、デニム関連企業へのヒアリングや監修の協力を得て作成した教科書は、企業の社員教育などにも活用されています。
 現在、デニムジーンズ専攻に在籍するのは2名。デニムの裁断士を目指す細川拓海さんとブランドの立ち上げを志す濵部慶太さん。二人に「デニムの聖地」で学ぶ当事者としての思いを聞きました。
 「興味あるブランドや製品を調べると児島で作られていることが多く、聖地と言われる所以は生産背景を学ぶほどに実感しています。ただ、その聖地にも足りないピースはあるような気がしていて…。その一部を埋める役割でもある裁断士として地域や業界に必要とされる人間になりたいと思っています」(細川)。
「京都の大学で哲学を専攻していましたが、デニムを本気で学びたくなり転向しました。本場とも言える岡山県で専門的に学べることは非常に魅力があります。ゆくゆくはデニムとリペアを中心としたブランドを立ち上げたい。自分が学んだデニムの魅力、モノづくりの素晴らしさを下の世代にも伝えていきたいですね」(濵部)。
 
 素晴らしい学びの環境があり、熱意ある若者は確かにいます。しかし、あまりにも少ないという現実を否めません。「間近で見る職人さんたちの仕事ぶりはやっぱりかっこいい」と二人は話します。
 一括りにされた産地ではなく、そこで働く一人ひとりの顔がもっと見えること。リアルに宿る格好良さを若者に知ってもらうことは重要です。何より、地元の私たちが作り手への理解を深め、きちんと伝える役割を担わなくてはなりません。「産地教育」とは、私たちのアティテュードなのです。

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