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2022SS_調べたもの_春の定義:仮説4

 こんにちは、わたしです。仕事を終えて映画を観に出たら、まだ明るくて、びっくりしました。夏至はもうすぐなのかな。春と夏の夕方は好きです。なんていうか、救いと拡がりがある。おかげで映画館までの運転も魅力的な時間でした。

海の春の定義について、前回わたしは魚の分布密度ではないことを知りました。こうなると魚が元気になることくらいしか思い浮かびません。これを活性と言うそうです。では活性を決める変数はなんなのか。

 それが海の水に溶ける酸素量なのではないかというのが、この4つめの仮説です。

仮説4:酸素量の増加

 まずここで指すのは前述の通り、海水中の酸素量です。正確な文句は溶存酸素量です。海水に溶けることができる最大の酸素量は、海水温に依存します。ここだけ見ると、あったかくなるといっぱい水に溶けて、酸素が増えるのかなって思いますが、ちょっと待ってください。ここで指す酸素は気体で、海水は液体です。温度が高いと、気体の分子的なものの熱運動量は増加します。元気に液体から出て行ってしまいます。だから温度が高いと溶解度が下がるのです。苦手だった化学でそんなことを習った記憶があります。
 ここまで書いていて思いました。じゃあ春から初夏にかけて海水中の酸素量が増加するわけないじゃんって。この仮説を立てた時には、いつも通り何にも考えてなかったのだと思います。イメージだけで、条件反射的に、安易に、物を言いました。この反省を次回に活かせますように。all the best for me.
 でもせっかくなので、一応検証します。

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図1.東京湾における溶存酸素量の年間推移

出典:Fig.2 temporal variation in D.O. in the bottom layer in(a)2003,(b)2004 and (c)2005 海洋情報部技報 p118

 底層のデータではありますが、やっぱり相対的に夏に低いです。特に2005年にその傾向が顕著です。相関係数を求めるまでもなく、季節変動はあります。卓越して夏に低い。でも。この一見低そうな溶存酸素量はどういった意味を持つのですか。
 つまり、魚の活性が最も高く、または低くなる溶存酸素量を知らないままに、議論を終えてはならないということです。その酸素量帯域に飛び込むか外れたときに、春の定義への寄与度について、はじめて言及できると思いました。

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図2.魚類に対する溶存酸素濃度の影響

出典:Fig 1-11.Water Quality Management in Aquaculture(1985) , p18

表1.溶存酸素の致死濃度

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 これらは淡水魚に対するデータですが、受容してください。これを見ると、溶存酸素濃度が1.0mg/L 以下である場合、死を引き起こさないまでも彼らに悪影響を及ぼし、健康を害するように見えます。さらに、溶存酸素濃度が継続的に4.0または5.0mg/Lを下回る場合、彼らは成長も、そして食事もしません。じゃあ、夏、だめですね。ただこれは継続的に値が維持された場合なので、例えば、夏にスコールが降って海中の酸素量が増加すれば彼らは息を吹き返します。
 一方で、冬になって溶存酸素量が増えても、一般的に釣りはオフシーズンなので、何か他の要因で魚の活性が低いのか、そもそも東京湾に魚がいないのかと、ほら、また同じ疑問が浮かびます。

まとめ
 東京湾の溶存酸素量は夏にかけて低いです。この値を維持すると魚の活性は著しく低下します。それにもかかわらず夏に魚が釣れるということは、溶存酸素量以外に他の要因がある、またはこの値が継続的に維持されていないと思いました。いずれにせよ、溶存酸素量は活性の因子に十分になり得ていますが、気温と負の相関があるため明らかに仮説から除外されます。

文献:
1)Garcia, H. E., R. A. Locarnini, T. P. Boyer, J. I. Antonov, O.K. Baranova, M.M. Zweng, J.R. Reagan, D.R. Johnson, 2014. World Ocean Atlas 2013, Volume 3: Dissolved Oxygen, Apparent Oxygen Utilization, and Oxygen Saturation. S. Levitus, Ed., A. Mishonov Technical Ed.; NOAA Atlas NESDIS 75, 27 pp.
2)IPCC (2019).  IPCC Special Report on the Ocean and Cryosphere in a Changing Climate, [Pörtner, H.-O., D.C. Roberts, V. Masson-Delmotte, P. Zhai, M. Tignor, E. Poloczanska, K. Mintenbeck, A. Alegría, M. Nicolai, A. Okem, J. Petzold, B. Rama and N.M. Weyer (eds.)]. In press.
3)東京湾環境局(2018).都内河川及び東京湾の水環境の状況 > 貧酸素水塊、青潮 > 貧酸素水塊
4)山尾 理(2006).東京湾奥部における底層溶存酸素濃度の時間変化
5)環境省(2021).底層溶存酸素量に関する東京湾の類型指定検討結果
6)海上保安庁(2019).令和元年度東京湾環境一斉調査結果報告書
7)美見 昭光(2007).宍道湖におけるコノシロの大量斃死と貧酸素水塊との関連性について
8)中野 俊樹(2016).魚類におけるストレスとその防御に関する研究 日本水産學會誌 p. 278-281
9)Katsutoshi KAWABE(2001).The Effect of Water Temperature on the Oxygen Consumption Rate and Limiting Oxygen Level for Existence of the Blacktip Grouper, Epinephelus fasciatus , SUISANZOSHOKU 49(2),185-189
10)Claude E. Boyd(1985).Water Quality Management in Aquaculture
Auburn University, Auburn, AL, United States

 写真は酸素がいっぱい溶けていそうな海です。

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