四月五日、月曜日
健さんがとうとう日本に帰った。UZUには自分とマティだけ。
見送りから帰ってきた朝の八時、白く明るい部屋で横たわると空のベットが居なくなった事をより一層感じさせる。一年弱、一緒の部屋で寝ていたのかと思うとまた感慨深い。
居なくなる前に、やっぱり一度、ゆっくり話すべきだったと後悔もしたが、常に喋ってきたし、色々見聞きしてた事を、もう一度反芻する瞬間が多々。
目を覚ましたのは3時。目を覚ましトイレに行くと庭が少し広く感じた。
目をこすって、よく見ると、バーカウンターが取り外され、無残に穴が出来ていた。
フルフル震えながら家に駆け込み、寝ているマティに罵声を浴びせる。
外に連れ出し、これは何だと問い詰める。何だか言い訳をしてるマティアスを眺め、全身がフルフルと震え、健さんが旅立って数時間しか経っていない、健さんはまだ日本にも着いていない、短時間に問題起こすかと、半分呆れてきたところで、一旦中断し、一緒にハチャプリを買いに行き食べる。
ペガが訪ねてきた。
何だか彼女もイラついてる様子だったので、放置した。するとマティと言い合いしだす始末で、厭きれた自分は不貞寝を決め込んだ。
ロベルトがやって来る。案の定、マティがしでかした事に対して、文句を自分に言ってくる。勿論、自分の監督不足。(下っ端の自分が言える事ではないとは知ってるけども)窓口やるなら、しっかりやらないと。
ロベルトと少し話し、綺麗にするからと落ち着いて、帰ったのは夜の八時とか。
そこから始まるマティとの大喧嘩。自分の肉体で喧嘩で勝てるわけもないし、ドイツ語の口喧嘩を勝ち抜く程、頭も良くない。それでも、言い合いし続けていると、マティは彼女のところに行くと、準備し始める。このまま、積もり積もった喧嘩を放っておく事に、血も沸くどころか、通り過ぎ呆れていた。出ていくマティに「このままで彼女の所行くんやったら、もう帰ってくんな」と言い放った。マティも彼女と別れそうで、彼女から呼びつけられているようだった。
少しして、帰ってきたマティ。「彼女に今日行かないと伝えると、振られた。これ以上何を求める?」との嫌味に、ンな事知るか!てめえが甲斐性ないからやろとまた怒り出す自分。感情が忙しい日でした。
お互いに溜まっていた鬱憤を吐き出した。上から目線でちょくちょく言ってくるが、それでもドイツ人は年下の話を聞いてくれる。というか、聞き流してる。
お互いに落としどころを見つけ、ハグして一日を終えた。
火曜日
朝、九時前にはマティが起こしてくれ、目を覚ます。
ここで一緒にやっていくのだから、朝話したり何かを一緒にする時間を作ろうと昨日決めたからだ。起こしてくれるのは大変ありがたい。
朝十時から駐車場に花壇を作るため、庭仕事。一時間半位。庭仕事の後、マホさんから電話が入り、車で近くまで来てるとの事。米を買いに行く為に車に乗っけてもらう。ジョージアについて、話を聞きながら、家に行き、お昼ご飯をご馳走になる。三時には家を去り、家に帰る。
家に帰ると渡さんがビールと焼きそば引っさげてやってきてくれる。豚肉を買ってきてくれた渡さん。健さんがいなくなって、緊張も解けた頃だろうと言って遊びに来てくれた。とても有難く嬉しかった。
そしてアイコが遊びに来た。元気か?と丁寧なあいさつをしてくる。
渡さんが焚いてくれた火を見ながら、ビールを飲んでいく。こういう時、自分は緊張する。自分は話下手で、誰とでも健さんが喋っていた。外国人の場合は、自分は通訳だった。やはり元引き籠りの自分は、会話の仕方を学ばないといけない。英語もドイツ語もジョージア語も、ましてや日本語でさえも、少し難しい時がある。
暫くすると、ロベルトがまたやってくる。
今度もいきなりマティが昨日しでかしたことに対する文句を自分に言ってくる。信用問題だとか、クソだとか。ロベルト曰く、俺は健を信用してる。でお前を信用してる。健を信用してるからだ。と、ちょくちょく頂くお馴染みのお言葉。理解してます。散々色々言われた挙句、肩パンして帰っていくロベルト。
この後ばかりは、マティも自分が何をしたのか、それが自分にどう降りかかってきているのかをようやくわかったらしい。何度も言ったのに、結局、マティは自分の事をなめている。人の話聞く振りばかりで、自分の主張を通そうとする。
お馴染みのドイツですね。
水曜日
今日は天気が良い。太陽は暑くて、家の中はとても冷えている。彼女が仕事に向かう道中、UZUにやってきた朝八時。今日は起こされるのが七時半前。一日ごとに少しずつ早く起こされるのかと、少し考えた。
彼女は楽器をUZUに忘れて仕事に行き、九時から十時半まで庭仕事。十一時半になると、彼女から電話がかかり、楽器を今すぐ持ってきてほしいと。渡さんに置手紙を残し、楽器を持っていく。
トビリシの植物園の入り口近くのカフェに向かう。彼女に楽器を渡し、お茶をもらい直ぐに家に戻る。その後、かんちゃんとアイコが来てくれて、一緒に散歩に出る。vakeまで歩き、チョハを調べ、ピッコロでビールを飲む。アイコはそのカフェで仕事がもらえるかもしれない様だった。
家に帰ると四時半、階段の三段目をセメントで作った。これで少し整えたら暖炉横の階段は完成だ。その次はマティが解体したところを作るか、Barカウンターを奥の角の所に作るか。
バーカウンターを作るより、まず解体したところを綺麗にするのが先決かもしれないと感じている。
着々とUZUの改造を進めていくのも良いが、少しゆっくり動いた方が、色々といいのではないかと考えたり。
ロベルトが今日もやってきた。アイコとマティとアイコの弟、ワホの三人が作業していた所にきたらしい。アイコは英語も喋れる分、通訳してくれる。
それが中々色々と言われるらしく、辛そうにも見受けられた。
マティとカンチャンと自分で親子丼を作り食べて、眠りに着いた。
木曜日
今日も八時半には、マティに珈琲で無理やりにでも起こされる。感謝です。
珈琲を飲むかとお前は俺に訊いてくれた事、最近全然ないよなと、喧嘩の時に言ってから、たまに作ってくれる。
今日は健さんが帰国してからの一回目のイベント。どういった形になるのか、不安と期待と緊張でおっかない日だった。
今日は料理人のナバさんと冷やしうどんを作った。作るコストは安く上がった。
投げ銭もコストが低い分、赤字ではなかった。
暑いわりに、天気は少し曇り気味。四時には、うどんを作りに手伝いに人が来てくれ、健さんが居なくなり、UZUを知ってる人たちは、ささっと動いてくれ、安心し、色々な物事に感謝した。
それでも今日のイベントの感想は、締まりが悪い。
自分が常に準備やなんだと動き続けていたせいで、場所にまとまりがない。言い方悪く言い表すなら、皆が勝手を知らずに、自由に遊んでいる。UZUに初めて来る人が、続々と増えてきている。前までは、ビールを皆が各自持ち込んで、みんなで飲んでいたが、知らない人が増えると、皆買いたがらないのか、少なくなってきた。
それでも、古株の人らは持ってきてくれる。
この流れは、お酒でお金を取るいい機会になるかもしれない。皆が持って来なくなり、建設予定のバーカウンターが出来れば、上手いことお金が入ってくる仕組みが出来るかも。と思っている。
金曜日
今日は、連絡と渦のFacebookの管理の一日になった。何をしようか、何がしたいのか、わからなかったのもある。それとラズさんの誕生日パーティーがNozomiBarであった。
八時には起きるのが慣れてきたように思える。今日は曇り時々雨。家に引き籠ることに決め、シャワーを浴び、昼ご飯を食べ、明日のイベントについて悩んでいた。心ではラーメンをやると決めていたのだが、体と自分の甘さと、状況とで、どうしようか悩んでいた。何ラーメンを作るのか、人は足りるのか。一人で晩から翌日の晩まで耐久を抜けれるのか。色々と考えた結果、肉もベジも両方作ることに決めた。
明日、買える物で考えることにして、YouTubeで勉強する。
五時半前には家を出てBarに向かう。マティもいつもお世話になってるからお祝いしに行くと、一緒に向かう。
道中サボテンを買い、プレゼントする。
八時半には家に帰り、イベントを作り眠る。
土曜日
イベント当日、朝八時には起き上がり、生地を練る。今回は卵麺。こちらの方が良い仕上がりに持っていき易いと思っている。
そのまま、中央駅まで電車で向かい、鳥の骨、野菜、計十キロ何だかんだで買った。買い物が済み、ゾノさんと一緒に渦に帰る。前日から、手伝いますと連絡をくれた。有難い。
ここでの自分個人の問題は、説明下手。手持ち無沙汰にならないか、心配だった。実際なっていたんじゃないだろうかと思う。
四時にはスープも完成し、五時にはトッピングも完成。
ベジは味噌とタヒニで返しを作り、肉はほぼ鶏白湯のスープにチャーシューを煮込んだ醤油でオッケーとした。
麺は六時には切り終えた。
麺は細麺。卵麺で踏み込みも良かったせいか、途中で千切れたりしなかった。
途中から来た人に交代してもらい、麺を茹でる。渡さんが管理してくれていた炎のおかげで、直ぐに始めることが出来た。麺を茹でる時は沸騰した状態が大切。
それを一番上手く調節してくれるのが、とてもすごい。
かと思いきや、途中で雨が降り出す。この時ばかりは、ラーメンやるんじゃなかったと頭を抱えそうだったが、渡さん曰く、これぐらいの雨じゃ火は消えないから大丈夫だと。
そこからは雨に濡れながら、ラーメンを作り続けた。
ゾノさんとペガはホットワインをストーブで作り、アイコ、カンチャン、渡さん、自分はラーメンを作った。
協力してくれる人が固定になってきた。負担ではなかろうか。こういったイベント続きでは流石に疲れるだろうと思う。木土以外でにゆっくり気軽に立ち寄れる日を作ろうと思う。
お世話になってる感謝を込めて。恩返し程、返せる物はないが、せめて楽しんでほしい。
マティは別れた彼女と再開し、話し込んでいた。こういう時、何も彼はしない。
日曜日
今日も一日やり切った感の中、余った麺で焼きそばを作り、一日中家から出ずにダラダラと過ごした。
明日からまた一週間が始まる。
健さんがいなくなっての最初の一週間、ようやく閉幕です。
おやすみなさい。
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