100文字ファンタジーまとめ:No.2
こちらは、ワタシがTwitter上で公開していました、「100文字ファンタジー」のまとめです。
こちらは上演フリーの朗読台本としてお使いいただけます。「上演フリー」とは、「当作品を朗読などの音読活動で使用する場合、ワタシは使用料等の金銭を一切要求しない」ことを意味しております。ですので、お気軽に読んでいただき、YouTubeやTwitterといったメディアに投稿していただいたり、朗読会などで発表いただいて構いません。
その際に、ワタシの名前を出していただけると嬉しいです。
使用料等が発生しないのは、あくまで音読活動です。書籍への記載等、音読活動の範疇を超える使用については、ご一報ください。
【大敵(思考)】
所詮は、電流なのだ。
どんな衝動も、その刺激に過ぎない。
そう理性で理解しても、抗い難いのは、我らの頭上に咲く花が電流で寿命を得ているからだ。
発する熱が、もどかしい。
仕方ないので、電流の暴れるままにしておこう。
花が腹を膨らませるまで。
【大敵(構想)】
「そいつ」もまた、花である。
世界を己の漆黒で染めるべく、花弁と種を撒き散らす。
生え出した芽は、或いは竜となり、或いは悪魔となり、或いは疫病となり…種々の災厄として結実し、嵐を呼ぶ。
「そいつ」とその眷属に挑む太陽の花に、幸ある結末あれ…!
【ささやき】
ソーダが歌うと
晴れやか顔をした人々が一緒に山を登り
頂上で澄み切った空気を味わって、瞳を輝かせた
泥沼が歌うと
青い顔した人々が次々と沼の中に入り込んでは
瞳を曇らせながら沈んでいった
一月の後
ソーダは歌い手として輝き
沼は口が塞がってしまった
【黒絵の具】
怖いとか。
汚いとか。
危ないとか。
そういうイメージがあったかも知れない。
でも…
髪の毛の色も
夜空の色も
影法師の色も
この色で出来ているんだ
使わないで、妙な絵を描いてしまうよりも、
怖がらずに使ってしまった方が、断然良い!
【荒れる庭】
庭師が怒っていたので、話を聞いてみた。
「客がね、花を岩に植えろと言うんだよ。
もちろん、無理だ、と断ったさ。
すると、その客は、"物を知らなくて申し訳ないが、どうして無理か分からない"と言ってきたんだ」
客の庭は、今も荒れ果てている。
【火】
旧友に出会った。
酷く埃を被っていて、寂しそうに縮んでいたが
こちらを認めると、顔を輝かせて挨拶してきた
道を踏み外したように見えた旧友であったが、そんなことはなかったのだ
彼の積もり続けた言葉が溢れると、心がぼうぼうと燃え上がる
友は、いつまでも友だ
【ペンが剣よりも強い理由】
炎を剣で斬りつけても
真っ二つに出来やしないんだ、と高を括られて、バカにされてしまう
炎と向き合ってペンを振るうと
アレコレを表現しようと四苦八苦しているうちに
炎は自ら燃え尽きて、縮んでしまう
そういうことだ
【雀譚】
オナガ「長はスズメさんが良いと思うんだ。とても気が利くからね!」
ツバメ「絶対反対だね!」
オナガ「どうしてさ?」
ツバメ「アイツは気が利くんじゃない、無知なだけだ。しかも勉強しないし、忘れっぽい。だから、胸を張って小言を言ってるだけなんだ!」
【優しいΩ】
オメガの顔は、鬼のように怖い。
だから、彼には友達が少ない。
でも、彼はとっても気のいいヤツ!
友達になると、とても喜んでくれるし、色々と手伝ってくれる!
彼は友達と出会う、鬼の顔を精一杯綻ばせて語るんだ、
「何か困ったことはないかい?
【稲妻】
当初、チェス盤の上には
買ってきたばかりのピカピカの硝子の駒を置いていた
ひっくり返し、振り回して、投げ捨てた
今は、
丸太をゴリゴリ削って、ささくれ立って歪な形をしているものの、
愛くるしい駒を一つ一つ作っては、
盤面に並べている
目を、輝かせて
【広がる】
ベビーフェイスが、無慈悲に殴る。
怒泣のレンジが、歯軋りする。
氷のアヤメが、悪徳上司にお茶をかける。
ブラック・ハウルが、雨の中で泣く。
オメガが、境界線の上で踊る。
プレジデントが、友達作りに励む。
そして、アイオーンが悶え悩む。
【形状】
ライオンくんは、たくさんの女の子に囲まれて、幸せ。
コゲラくんは、たった1人の女の子と一緒に、一生懸命彫刻を作ることができて、幸せ。
どっちも「幸せ」なんだ。
【消しゴムと拳】
拳があんまりにも乱暴するものだから
心優しい消しゴムが、拳を止めに入った
消しゴムが、拳の悪い心を消してゆく
その身を小さく、小さく縮めながら
消しゴムが遂に消えてしまったとき
拳は無垢な赤ちゃんになっていました
…お前の話さ、ベビーフェイス
【無謬王】
神様に並び立ちたい王様は
「完璧」であるために、間違いを激しく嫌いました。
どんな些細な間違いにも原因と解決策を求め、「完璧」に近づこうとしました。
その結果
王様は民を失い、城を失い、王冠を失いました。
間違いを嫌うはずが、間違い続けていたのです。
【お絵描き】
「上手な絵を描くぞ!」
意気込んで筆を振るう、振るう、振るう。
晴れでも雨でも、筆を振るう、振るう、振るう。
…ふと気付くと、カンバスは真っ黒になっていた!
どうしよう!
「もう、綺麗な色を一色で良いや」
…大賞を取ってしまった…。
【サラダ】
サラダは怖い。
野菜を千切って盛り付けるだけ、と聞くと気楽に聞こえる。
…が…!
シンプル過ぎる料理なだけに、盛り付けが如実に評価として採点されるのだ…!
これなら、ラザニアの方がまだマシだ…!
全部混ぜて焼けば良い(語弊有)のだから…!
サラダ怖!
【幸福論】
夜更けのバー。スーツ姿の女と仮面のヒーローが並んで座っている。
女「私は愛しているとき、愛されてる時が一番幸せ。
ちょっと歪でも、ね」
ヒーロー「オレは、誰かを助けるのが好きだ。裏切れても、後悔しない」
2人はカチン、とグラスを合わせる。
【怒りん坊】
ツバメさんが間違えてしまうと、他の鳥たちは「ドンマイ!」と声をかけ、直すのを手伝いました。
しかし、怒りん坊のスズメは、ツバメを厳しく叱りつけ、空の神様にまで言いつけました。
しかし、今度はスズメが間違えてしまうと
他の鳥は笑うばかりでした。
【雀譚】
鳥たちの水飲み場で、スズメが我が物顔で取り仕切っていた。
「お前は飲み過ぎ!」「お前は態度が悪い!」「こっち来るな!」
鳥たちはスズメの騒がしい声で、うんざり。
しかし突然、スズメの声が聞こえなくなった。
声を聞きつけたネコに、食べられてしまったのだ…
【笑顔】
殴りつけられ、蹴り飛ばされ、血を吹き出す。
散々にやられたハコベくんだが、イジメっ子が疲れて帰ると、ケロリと立ち上がる。
「あの子1人に嫌われても、僕には沢山の大切な友達が居るからね!」
坂の下を見ると、ウズラやウサギと言った、沢山の顔ぶれがあった。
【自由】
メジロがふと、開いた窓から中に入ると、
そこには瓶の中で、水に浮いているヒヤシンスがあった。
メジロは肝を冷やしながら訊いた、
「そんな檻みたいなところ、窮屈じゃないのかい?」
「平気だよ。
君たちみたいなお客さんが、いくらでも世界を広げてくれるから」