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なぜ、ヤンデレなのか?

どうも、眼珠天蚕です。

最近のVTuber界隈ではヤンデレのシチュエーションボイスが流行しており、その勢いは留まることを知りません。

これについて、知り合いの方からの「なんでヤンデレってあんなに流行ってるんでしょうね?」という疑問を耳にしました。確かに、こんなに流行しているヤンデレシチュエーションボイスですが、それについて考察している記事は見かけません。(ヤンデレをやると伸びます、と言っているだけの記事を見たことはありますが…)

ということで。今回、演技・脚本の分野で活動しているワタシが、「ヤンデレがなぜ、こんなに流行っているのか?」について、考察したいと思います。

また、それだけでは「ヤンデレをやれば伸びます」と言っている記事と同質になり、あまり意味がないと思いますので。「ヤンデレ演技の人気を、別のジャンルに波及させるにはどうすればよいか?」についても、考察したいと思います。

ヤンデレ人気を支える2つの要素

結論から言いますと、ヤンデレは「煽情性」「下手の立場」という2つの要素によって人気が支えられています。

「煽情性」については、ヤンデレのシチュエーションボイスを聞けば、誰もが納得していただけると思います。

ヤンデレのキャラクター(=演者)は、想い人(=視聴者)に中毒的な恋愛感情を抱いています。そして、想い人の心を虜にするために、あらゆる手段を講じます。恋慕する異性を虜にするのですから、その方法は昔ながらの王道の手段…色仕掛けです。

セリフはとにかく、桃色に染まっています。無垢な子供のようなヤンデレなんて存在しません。むしろ、子供がヤンデレとなれば、その子供の行動はすべからく煽情的になります。ヤンデレ的な行動は意図的な行動であり、必ず下心があるからです。無垢ではありえません。

また、ヤンデレの過激な行動…身体的な拘束や暴力…も、桃色に染まったセリフと併用されることで、視聴者の被虐心をくすぐります。これもまた、十分に煽情性を含んだ要素です。

さて、「下手の立場」とは何かと言えば。ヤンデレのキャラクターは暴力的な行動を取ったとしても、彼らの視線は視聴者よりも低い位置にある、ということです。

ヤンデレのキャラクターは視聴者を崇拝していると言っても過言ではないほど、依存しています。なので、視聴者を見下すことはありません。ヤンデレのどんな行動も、その動機は視聴者への愛情のためなのです。

この立場というのが、ほかの煽情的なジャンルとの明確な差異だと思います。わかりやすい例が、2019年末に極短期間だけ流行ったTwitterタグ「メスガキボイスチャレンジ」です。(メスガキについては、pixiv百科事典などを参考にしてください)

メスガキは十分煽情的なジャンルであり、流行る要素はあったと思います。ですが、タグは1週間も経過しないうちに廃れてしまいました。この要因として「メスガキという言葉の認知性が、ヤンデレに比べて低い」という意見もあると思いますが、これについてワタシは否定的です。視聴者は流行期間中に「メスガキボイスチャレンジ」に関する動画投稿を少なからず目にしているはずですし、その際に「メスガキ」の意味が分からなかったとしても、検索するまでもなく音声を耳にすることで、その意図を感覚的に理解できたことでしょう。

「メスガキ」の意味が理解された上で、「ヤンデレ」ほど流行らなかった理由。それは、メスガキのキャラクターが上から目線であり、視聴者を見下す言動をとっていたから、です。

そもそもの話として、シチュエーションボイスの視聴者の多くは、「自己評価の低い臆病者」です。

※多く、であり、全員というワケではありません。悪しからず。

※また、ワタシがシチュエーションボイスの視聴者をこのように断じた理由については、後日別の記事で紹介したいと思います。

そんな視聴者からすると、ヤンデレとは「労せずして自分に対して一心に恋慕の情を注いでくれる、エロチックな異性」であるワケです。歓迎されないワケがありません。

これらの事情がヤンデレの大流行の理由でしょう。

ヤンデレの今後はどうなる?

「ヤンデレは今後も流行るのか?」と言う問いに対して、ワタシの答えは「YES」です。

「自己評価の低い臆病者」たちは、決してこの世から居なくなりません。彼らのニッチな需要を満たすヤンデレコンテンツは歓迎されますし、ヘビーローテーションされるほどに重宝されることでしょう。

ただし、すでにYouTubeの動向の通り、無料の配信プラットフォームでは規制強化など警戒の動きは強まってゆくことでしょう。

下図はTwitterで「ヤンデレ」の語句を検索した結果ですが、非常にネガティブな印象を持たれており、警戒されていることが一目瞭然です。自殺防止センターとは恐れ入ますよね!

画像1

実際、Twitterで「ヤンデレ」を検索した結果を見ると、非常にネガティブ且つ煽情的なツイートが五万と表示されます。

ワタシたちのオタク的な「極々小さな界隈」においてヤンデレがネタとして扱われていても、世間では「シャレにならないレベルでヤバイ代物」として認知されているワケです。

YouTubeは過去にも、一般常識的に考えて視聴者の毒になるコンテンツには規制をかけてきました。2020年3月現在、ASMRコンテンツが警告を受けるという話もよく目にします。

ヤンデレも上記のジャンルのように、規制対象に含まれることは十分に考えられます。

ヤンデレは元々日陰のジャンルですから、日の当たる場所に出て市民権を得るというのは相当困難な話です。昔インターネットで話題になった「謎の忍者の教え」が言わんとしている通り、市民権を得るという話自体が分相応でないのでしょう。

ヤンデレは次第に、FANZAのように一般の目には触れない、有料で煽情的なコンテンツを扱うプラットフォームでの公開が主体になってゆくでしょう。

演者さんたちの進むべき道

さて、話を演者さんたちの方へ向けましょう。

ワタシは企画を通して多くの演者さんと接してきました。その中で感じてきたことは、演者さんは必ずしもヤンデレ演技に対して思い入れがあるワケではない、ということです。

勿論、演者さんも十人十色ですから、「ヤンデレ演技が好き」という方もおります。しかしながら、ワタシは過去2回、台本リクエスト企画を行いましたが、そのどちらでも「ヤンデレ台本を書いてほしい」というリクエストは1つもありませんでした

ではどんなリクエストが多かったのかと言えば、人に寄り添う、もしくは癒しを与える内容…が一番多かったです。

これは考えてみれば至極自然なことで、多くのVTuberさんは自己承認欲求をポジティブな理由で満たしたい、という理由でデビューしていることが多いからです。Twitterの自己紹介欄やYouTubeの自己紹介動画を参照すれば、「あなたの親友になりたい」とか「人々を楽しませたい」といったポジティブな動機を耳にすることができます。

これらから察するに、彼らの本当にやりたいシチュエーションボイス・コンテンツはヤンデレとは対極の、「癒し」や「ぬくもり」といったポジティブな内容だと容易に予測できます。

または、演技にもっと真剣な方々は、ヤンデレという単一ジャンルだけではなく、もっと広い数多くの役割を演じてみたい…という志を持っていることでしょう。

彼らのこういった欲求を満たすと共に、ヤンデレコンテンツのように人気を出すにはどうすれば良いか。登録者数の少ない身の上のワタシですが(笑)、大きく2つ方法があるかと思います。

1つは、マーケティングの世界で言うところの「リードナーチャリング」…つまり、将来においてコンテンツを応援してくれる視聴者が増えるように、界隈の方向性を変えていくことです。

「演技コンテンツは楽しいんだぞ!」というポジティブなアピールを地道に、愚直に続けてゆく…という、至極当たり前な方法です。

これは気の長い話です。個人の意識・行動だけでは成し遂げられませんし、時間もかなりかかります。しかし、現在のVTuber視聴者層の多くが「二次元キャラクターに恋愛感情を抱く、自己評価の低い臆病者」である限りは、力の入った演技よりも煽情性が評価されてしまいます。

※すべての視聴者がそうである、と言ってるワケではありません。アニメを楽しむように、演者の演技を純粋に楽しむ視聴者もしっかり存在します。

アニメと同じ感覚で演技を楽しむ視聴者にこちらを向いてもらえるように、努力を重ねていく必要があると思うのです。ワタシも微力ながら、声劇動画の魅力を紹介する記事などで、そういった将来の視聴者にこちらを振り向いてほしいな、という想いがあります。

もう1つの方法は、ポジティブな演技を欲している分野に売り込みに行く、というものです。

こういった演技の需要がある分野としては…知人の受け売りなのですが…例えば、福祉分野があると思います。

例えば、施設に入って久しい高齢者。例えば、友達との接触が限られている入院中の子供。彼らにバーチャルな孫として、もしくはバーチャルな友達・ヒーロー・ヒロインとして1対1で親密に接するというのは、非常に喜ばれることではないでしょうか?

ワタシもこういった催しを是非してみたいと考えており、なんとか都合がつけられないかと、情報収集や講習会参加などを画策しているところです。

いずれの方法を取るにせよ、ワタシの提示した方法に収まらない第三の選択をするにせよ、現状に甘んじ続けるだけでは、好きなことをするよりも、(界隈の)多数派に迎合することに疲弊するようになってゆくでしょう。

是非とも、演者同志の交流を深めて、新しい扉を開いてほしいものです。

すべての演者に、幸あらんことを…!

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