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子どもの心の成熟と「押し返し」の重要性

世界との関わりの始まり

子どもが一歳を過ぎると、「外の世界」と本格的に関わり始めます。しかし、まだ分別がつかないため、やってはいけないことをたくさんしてしまいます。例えば、回っている扇風機に指を突っ込もうとしたり、階段から落ちそうになったり、高いところに登ろうとしたり、とにかく親がハラハラしたり、びっくりするようなことを平気で行います。

親の役割と「押し返し」

こうした行動をとる子どもに対して、親を中心とした「外の世界」に求められるのは、適切に「押し返す」ことです。この「押し返し」とは、簡単に言えば、叱る、止める、諫めるといった行動を通じて、子どもの行動を制御することです。現代の世の中には「自由にさせてあげた方が良い」「叱るのは可哀想」という風潮もありますが、適切に叱られる、止められる、諫められることによって、子どもの心の成熟がもたらされることも理解しておいてほしいと願います。

心理学における「ほど良い母親」

心理学の世界では、乳幼児を育てる際の母親の在り方として「ほど良い母親(Good enough mother)」が重要とされています。この「ほど良い」とは、子どもに対して100%上手く反応できていなくても大丈夫、ほどほどで良いという意味です。乳幼児期の子どもは泣くことでさまざまな不快を訴えますが、親はその泣きに対して「お腹が空いたのか」「オムツが気持ち悪いのか」といった予測を立てて対応します。

親の失敗と子どもの心の成熟

この予測が当たることもあれば、外れてしまうこともあります。しかし、親が子どもの気持ちを推し量ろうとして、間違ってしまう体験は「あった方が良い」のです。一生懸命、子どものためにやろうとしたけれど、思いとズレてしまうことは、子どもの心の成熟にプラスになります。親が子どもの要求にすべて完璧に応えることができてしまうと、子どもは欲求不満に耐える力が身につきません。こうした差を適度に体験することで、子どもの現実認識力が高まり、心の成熟を促進します。

不快感を関係性の中で納める

「自分の思い」と「環境が与えてくれること」の差は、言わば「子どもの思い通りにならない」という体験です。これを通して子どもは環境に合わせて自分を調整することを学びます。親が「思い通りにならない環境」として立ちはだかり、その不快感を受け止めることで、子どもは不快感を納める経験を重ねていきます。この関わり方が重要であり、幼い時期の方がやりやすいのです。子どもが幼いほど、親が叱ってもその親にすがって慰められる構図になりやすいためです。

家庭と学校の連携

子どもが学校で叱られた場合、家庭と学校が連携し、親がその気持ちを受け止めることが重要です。こうした「関係性の中で不快感を納める」パターンを経験することが、子どもの社会的成長に寄与します。

「世界からの押し返し」の重要性

学校は多くの子どもたちにとって「思い通りにならない場所」です。こうした場所での体験を通じて、不快感を納め、環境との調和を経験します。これにより、子どもは社会的な存在として成長します。幼い頃から「世界からの押し返し」を経験することが、子どもの心の成熟に重要であることを理解する必要があります。

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