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それは違うような・・・

令和6年11月1日から、計画通知を指定確認検査機関(民間機関)が審査できるようになりました。

計画通知とは、国(一部の独法を含む)、都道府県、建築主事を置く市町村が行う建築行為については、確認申請ではなくて、建築主事に通知するというものです。

計画通知と言っても中身は確認申請と全くの同じです。

この計画通知を民間審査機関でも出来るように改正したものです。

どのような背景で改正に至ったのかですが、ことの発端は令和5年の地方分権改革の提案です。兵庫県では、次のように「支障」理由を挙げています。

近年、全国各地で地震が頻発しており、大規模災害がいつ起きてもおかしくない状況の中、大規模災害が発生すると、被災地においては、建築物の被災状況の確認、被災後のまちづくり計画等の立案、仮設住宅の建設地確保等の業務に多くの人員を配置する必要がある。しかし、被災後は公共施設や公営住宅、UR 団地等についても大きな建築需要が生じることとなるが、現状ではこれらの計画通知は特定行政庁に置かれた建築主事で対応しなければならないと規定されていることから、これらの業務に迅速に対応することが困難となる。

https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/doc/r05/r5_kekka_15_mlit.pdf

これに呼応するように全国知事会で次のような意見を行っています。

現在の急激な人口減少や少子高齢化の進展等を踏まえると、人手の確保や専門人材の育成は急務である。地域住民の生活にとって重要な業務を担う人材を確保するための制度を整備する必要があり、提案の実現に向けた積極的な検討を求める。

https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/doc/r05/r5_kekka_15_mlit.pdf

「建築基準法施行関係統計報告集計結果表(令和4年度)」の集計結果によると、確認件数524,417件のうち、建築主事が35,150件です。また、計画通知は6,809件あります。

現時点でも確認件数の6.7%は民間審査機関が担っています。これに加えて、年間6,000件〜ほどある計画通知を民間審査機関が担えるようになったわけです。

ここで私が言いたいことは、計画通知までもが民間が行うようになると今でさえ役所は建築審査は少ないのに、審査自体がほぼ無くなれば特定行政庁職員の建築法規の知識を習得する機会が失われます。

ますます建築士を取得する(取得できる)建築職は減少するでしょうし、同時に建築主事も減少、建築法規の体系の理解力が欠如して、ひいては建築行政を適正に運用できる技術力自体が低下するんじゃないかと心配しています。

兵庫県さんは災害時対応と言っていますが、東日本大震災時に災害救助法に基づく各種業務に加えて、大量の1・2号物件の計画通知を審査していた身としては、対応するのが建築職員として義務だと思っていましたし、これに加えて、復興業務に携わるのは公務員として当然なのではと思います。

とはいえですが、例えば、災害救助法が適用された地域では計画通知の審査を民間でも出来るようになるというのであれば合理的だと思います。一時的に民間の力を借りるのは災害時として当然です。当初は兵庫県もそのような制度をイメージしていたのでは?と思います。

ところが、最終調整結果としては、災害の有無を問わずに全ての計画通知を民間が審査できるようになっており、少し飛躍しているような、、、
繰り返しですが、法規審査を行う経験がないと建築行政や都市計画行政、まちづくりに必要な基礎知識が養われないのは確かです。

今後の予想として、まちづくりに必要な建築法規の基礎を理解する人材が不足することで、都市計画行政にも弊害が生じるんじゃないかなと思います。

いずれは民間審査機関さんが半官的な存在としてまちづくりも担うようになるのかもしれないですね。

また、基礎自治体のうち特定行政庁の多くは一級建築基準適合判定資格者が消滅し、二級主事の限定特定行政庁となるかもしれないですね。






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建築基準法と都市(やまけんブログ)
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