とある編集者の日々の観察 「タマサンゴのコロコロ散布」
アスファルトの隙間に生えるタマサンゴというナス科の植物。いつもオレンジ色の丸い実がいっぱい実っています。いったいどうやって増えているのか?通勤電車の中で妄想が炸裂して止まらないのです。ツイッター山と溪谷社いきもの部(@yamakei_ikimono)の中の人の日々のつぶやきまとめです。
2017年11月8日 減らない実
今朝のいきもの。「スキマ植物」としてずっと見ている近所のタマサンゴですが、夏には実がオレンジ色になっていたけど、11月でもまだ実がたわわ。7月の写真と比べてみる。
11月28日 判明する更新生態。
スキマ植物として路傍に生きるタマサンゴですが、果実がヒヨドリにも見向きもされず、その種子散布方式が謎でした(うそ)。
今回、約半年に渡る追跡調査の結果「コロコロ散布」であることが判明しました。散布距離は約20m(本体は奥の電柱裏)ですが、距離は車道の斜度に依存するようです。
11月29日 根拠の明示。
昨日発表したタマサンゴの「コロコロ散布」ですが、「それはただ転がっているだけ」という意見もあろうか思います。そのため、その理論を補強する写真を提示しておきます。母株からクランク状に坂を下った地点、距離約50m。つまり、コロコロの先の「コロン」を経て発芽するわけです。
はじまる妄想。
さて、コロコロからコロンを経てスキマからスキマに拡がるタマサンゴですが、先ほど提示した写真とフォロワー様からのコメントから新たな仮説が立てられました。
先ほど「クランク状の坂の下」と書きましたが、ここには家2軒分の水平移動があるのです。そこも緩やか坂になっていますが、コロコロだけでどこまで拡がるか。当然、雨水の力も働くはずです。しかし、要所要所に設けられたグレーチングを超えられるのか?
さて、ここである特殊な散布動物の登場です。そうです。子どもです。あのオレンジ色。拾いますよね? スーパーボール(昭和)みたいで。
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タマサンゴのオレンジ色の果実はヒヨドリではなく子どもに向けられたものではないか…と論考しました。しかし、「拾う」だけでは散布されません。ここで親が登場します。
「道端のものを拾っちゃいけません」
そうして「捨てる」という行為を経て散布が完了するのです。
完成する新理論。
子どもと親の協働によるタマサンゴの散布。
子:こんなの拾った!
親:捨てなさい!
このやり取りに必要な時間を約1分半と推定すると、この間の親子の移動距離はおよそ30m。来ました! ここに「コロコロー子ー親散布」の仮説を提唱して、わたしの通勤時間が終わりとなります。
11月29日深夜 検証実験開始。
仮説は検証する必要があります。そのため、タマサンゴのコロコロのその後を追跡するために、2日前に発見したコロコロに「玉」とマーキングをしました。これでどこに転がっていってもわかります。いや、そうじゃない。母株に残っているすべての果実に番号を…。夜中に何やってんだ…。
11月30日 調査開始。
タマサンゴ、コロコロ散布調査1日目。昨晩マーキングした果実を通勤途中に意気揚々とチェック。
あっ……! こ、これはヤバイ!!
お掃除お婆さんが! ああああ、やはり私の「玉」はありませんでした。路傍に生きるスキマ植物の厳しい種子散布の現実を垣間見ました。
朝の通勤中に炸裂する新理論
さて、一夜にして大きな成果を得ることができました。タマサンゴの果実が「コロコロ」→「お掃除お婆さん」→「燃えるゴミ」という明確な種子消失ラインの発見です。この発見によって、スキマ植物としてのタマサンゴの分布が地域の居住世帯の推定に……。
家の前を掃除する…この素晴らしい習慣は、その家の世代、家族構成に大きく依存するのではないか。コロコロ散布であるタマサンゴは、あまり家の前を掃除しない場所、地域で多いのではないか? しかも、そこには若い世代、つまり、子-親散布が盛んに行われる可能性が……。
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話をタマサンゴに戻します。少なくとも2日間はそこにありました。つまり、お婆さんの掃除は毎日ではないのです。その2日の間に……
①路駐する車に踏まれてそこのグレーチングに定着する。
②子どもに拾われて、子-親散布のラインに入る。
③なんらかの力によって次のコロコロ過程に入る。
このいずれかに…えー、そろそろ通勤が終わるので本日のタマサンゴの種子散布に関する論考は終了とします。ありがとうございました。
観察はずっと続くのだ。
2018年4月28日 花続々。
今年も続々とタマサンゴの花が咲いている。秋にはコロコロ散布が再び?
7月5日
今年もタマサンゴのコロコロ散布が始まりました! 左奥に電柱の根元から生えているタマサンゴが見えます。さて…あいかわらず深夜になにやってんだ?
7月6日 どんどんコロコロ。
7:53
朝、コロコロがはじまっていた。よし。
23:32
お、雨でコロコロが促進されているな。グレーチングまで到達したよ。
7月10日
0:05 刈られるタマサンゴ。
【速報】あああっ、ずっと観察してきたタマサンゴがすべて刈り取られてしまいました。お掃除ついでなのか? 唯一の救いは、刈り取られたときにコロコロして、誰かに踏まれたひとつの果実。ここにタマサンゴの更新を見ましたが、ショックのあまり新たな理論を構築する気持ちが湧きません。
いや、待てよ。
コロコロ→踏まれる
というのは重要じゃないか? そこまでが、街に生き、スキマで育つタマサンゴの更新生態じゃないのか!? 転んでもただでは起きないぞ。タマサンゴに学ぶのだ!(笑)
7月13日 タマサンゴは負けない。
「草を刈る」というのは除草の一般的な行為ですが、雑草を、あるいは多年生植物、いや低木を舐めんな…ということでしょうか? タマサンゴ、どんどん出てきました! ここからまたコロコロへの道が始まります。
また夏が来る。
2019年7月17日 新たなコロコロ、はじまる。
雨が降りしきる深夜(なぜいつも深夜なのか…推して知るべし…)。タマサンゴの「コロコロ」が始まっていた。たくましいなぁ。刈られても刈られても、また芽を出し、花を咲かせ、実をつける。そして、コロコロ(笑)。
2020年2月4日
昨夏にコロコロ行かず、ただコロっと落ちアスファルトとコンクリの継ぎ目にとどまっていたタマサンゴですが、着々と成長しております。継ぎ目に沿って複数株がまるで倒木上更新のように。
街中のスキマに生きるタマサンゴの観察でした。
(ブチョーw@yamakei_ikimono)