【学生さんレポート~6/25勉強会「ふりすくさんのお話」】
今回も、宮崎大学・竹内元先生の御協力の下、参加&サポートいただいた大学生・大石陽菜さんより報告をまとめていただきました。当日参加できた方の振り返りに、参加できなかった方への共有に。とても貴重な資料です。心より感謝いたします。ぜひご覧ください。
不登校支援をとらえなおす(第5回)「ふりすくさんのお話」報告
2024年6月25日に、宮崎市民プラザ4階・学習室において、不登校支援をテーマにした勉強会が行われた。
みよしクリニックの精神保健福祉士であり、児童思春期デイケア「ふりすく」の統括である三好好枝さんに、ふりすくの活動内容を紹介していただいた。
ふりすくは、精神科「みよしクリニック」が運営するフリースクールである。
みよしクリニックでは、精神科医4名、小児科医1名、心理士4名のもと、精神科訪問看護、認知症デイケア、児童思春期デイケア、精神保健福祉力カウンセリングなどが行われている。
みよしクリニックがふりすくを立ち上げた理由は、クリニックの診察であった
相談に、学校に行けない不安感や焦燥感、どうしたらいいのか誰にも助けを求められない孤独感、将来の見通しが立てられない恐怖感、苦しい気持ちのまま日々を過ごして症状だけがどんどん酷くなっていく絶望感が、本人や保護者にあったからである。
そのため、安心できる居場所を体験し、安全な出会いとコミュニケーションの機会の獲得を通して、社会参加の機会を得ること、自分らしい健やかさを取り戻すこと、社会の問題解決能力・対
人関係スキルの向上を目指している。
定員は、医療保険で回すことができる31名であり、クリニックでの受診後、医師がふりすくの利用の必要性を感じた際に利用できる。リハビリ医療機関としてのフリースクールである。
宮崎市内に数多くあるフリースクールと異なる点は、一番初めに不登校の相談を受ける人が精神科医だという点である。
精神科医によって、本人や保護者の状態が確認される。
その後、医者がフリースクールに通うことが適切かどうか判断する。そして、ふりすくでの治療が始まる。
目的は再登校ではなく、本人の症状や苦しさの改善である。
ふりすくでは、専門家による徹底したケアが行われている。例えば、看護師による自傷痕の確認と衛生管理である。自傷行為をする子に対して、その行為の否定はせず、自傷行為をしてしまうほどのストレスや苦しさ、辛い気持ちに寄り添う。
そして、自傷行為を隠さないようにすべてを教えてくれるような相談できる関係性をつくっている。
また、同年代との交流の場をつくっている。他者との交流がないことは、不登校児のコミュニケーション能力の衰えにつながるからだ。上手にお喋りできる子とペアリングして、安全な場所をつくる。しかし、適切でない言動がでるときもある。
その際は、その都度、指摘すると同時に、替わりの言動を学習する。
他にも、自分の特性について自分でしっかり知る。
自分の特性や苦しみ、ストレスを理解しておかないと、大人になり社会に出た際のメンタルダウンしてしまうからだ。
仲の良い人には、自分の特性について自分で伝えることができるようにしている。
人と会うことに不安感を持っている子どもには、安心できる人と一緒に治療を受けてもらう。
また、こだわりを受容する経験をさせている。その子どもの好きなことをその場でできるように常に準備している。
自分が好きなことをしっかりできる場所であることを認識させる。そうすることで、子どもが、スタッフに自分の事を見せるようになる。そして、安心できる人がいなくても過ごすことができるようになったり、他の子との交流が少しづつできるようになったりする。
次に、学校と精神科の連携についてお話をしてくださった。
髪をおろして登校して良いなら、一番後ろの席で良いならといった、登校できるためのヒントを子どもがくれる。
しかし、その要望に対して、学校でもできない部分がある。
そこにふりすくが調整に入る。
つまり、不登校の子どもと学校の溝を埋める役割を担っているのである。
そして、現在の症状で本人ができそうなこと、少し頑張れそうなことを分析し、保護者や学校に伝える。
忙しい保護者の代わりに日程調整や登校日のシミュレーションを行う。先生の会いたいという思いを本人や保護者に伝える。保護者の要望と学校のできることの調整に入るといったことをしている。
子どものなかには、充足感や満足感が分からない子がいる。そのため、本人が何か出来たら十分すぎるほど褒める。褒めつくして、達成感を味わう喜びに気付いてもらう。
そして、これができたから次も頑張ろうではなく、しんどくなったらこうしていいよ、逃げていいよ、帰っていいよという選択肢や態度をすべて教える。
このように、アセスメントをして修正し、チャレンジする。何回もチャレンジすることを繰り返し行い、できるようにしていく。
それでもできない所は、環境調整に入ったり、避けたりする。このように、少しずつできることを増やしていくというやり方である。
社会のルールや常識、他者の考えや言葉、規範、配慮を受けるうえで生じる不都合などの、現在の日本で自立した社会生活を営むうえで、苦しい思いをしないように、ソーシャルスキルトレーニングを行っている。
そして、子どもの苦しみに共感し、社会のなかで自立できるように伴走していく役割を担っている。
最後に、みよしクリニックの思いとして、未来ある子どもたちが「生きていてよかった」と思える支援ができる医療機関でありたいことがある。
困難なくできる子どもとそうでない子どもとでは、成績や収人に差が生じることが多い。
配慮を受け続けることに嫌気がさしたり、申し訳なく感じたりすることがあるかもしれない。また、理解が得られず苦しい思いをすることがあるかもしれない。
孤独感や自責感、不全感を抱えて生きる大人はとても多い。
そのため、児童・思春期の時期に苦しみを分かち合える大人や仲間と出会えることは幸運である。
ふりすくに限らず、一緒に未来を描こうと伴走してくれる大人と出会ってほしい。
自分なりの成長と自分なりの喜び、自分なりの幸せと自分なりの選択肢を実感できるようなサポートをしていきたいという。