しほちゃんは、ういている#8
東京の気温25度。台風12号がすぎたあとは涼しくなる。きょうは、エアコンがいらないくらいに過ごしやすい。そとにでると植木鉢や空き缶がころがっている。また今年も、破壊の季節がやってきた。
彼女はお気に入りのブランドのレインコートをまとって、台風の日は外にでる。なぜなら、台風の日はフードを深くかぶっても誰にも怪しまれないし、顔を見られないから最高だ。レインコートは他人からの好奇な視線から彼女を守ってくれる。支えてくれる。たよれる相棒だ。
しほちゃんは顔をみられるのが、きらい。
いつもは人で混んでいる商店街や映画館も、台風の日ばかりはお客さんがまったくいない。貸し切り状態だった。しかし、いま話題の「カメラを止めるな!」だけは台風の日でも連日満席だった。この映画は都内では池袋と新宿の2館でしか上映していなかったが、口コミやSNSが人気を呼び全国上映が決まった。制作費約三百万。撮影日数八日。無名の新人監督と役者だからできた映画のストーリーが反響をよんだ。
スタバにむかうと、いつもなら席の窓際でMac Bookを持ち込んで、むづかい顔をし作業してる人たちが一人もいないので、殺伐としていない。本屋さんは立ち読みしているお客さんがふだんに比べて、すくない。気分がいい。店内でゆったりとした時間がながれる。JRの電車はガラガラで人気がない。まるで東京中の機能が停止したみたいだ。