佐藤康光先生の将棋
第47期棋王戦挑戦者決定トーナメント、郷田真隆九段対佐藤康光九段。
まさしく驚天動地の銀の舞であった。
2021/11/24 という日は、将棋ファンの記憶と心に残るべき一日となったと言っても良いのではないか?
会長の 銀が暴れし棋王戦
11月24日は 暴銀記念日 。。
朝から終局に至るまで、プロである自分も"怪鳥" "暴銀"などとファンの方々と一緒に楽しんでしまった。(正直、棋譜を並べながら自然に笑顔になってしまう。)
この一局は評価値を追うと「奇天烈な作戦から劣勢になるも、腕力で大逆転」という内容に見えるが、プロの目線から見れば「一日を通して激戦」という方が正しいように思う。
が、その認識はそれ程重要ではないのかもしれない。
現代の棋士は普段から悶々とした思いを抱えている。
「評価値というのはいかほどのものなのだろう?人間の中では最高峰のプロ棋士同士の微妙な感覚のせめぎ合い、水面下の読みのぶつかり合いまで表現してくれない。本当に難解な局面なのに簡単なPKを外したかのように言われてしまう。一方、将棋ソフトを勉強に活用、大きな影響を受けている現実がある。etc…」
ところが、である。
本局に関しては寧ろ評価値という指標が観るファンの盛り上がりに大きく貢献したとさえ思うのである。
トップ棋士で、現職将棋連盟会長である佐藤康光先生と言う唯一無二のキャラクターは、その棋風考え方まで将棋ファンの間に浸透している。
その前提がある上で見る評価値というのは、指し手の裁判官ではなく、"佐藤先生の個性を際立たせる存在"でしかないのだ。
観る側に公平な評価を求めるというのは非力な考え方かも知れないな、と思った。
長年トップで戦い、"将棋道"を行く佐藤康光先生の棋譜からは「評価値でもなんでも、何とでも言いなさい。私はこの指し手で行く。」との声が聞こえるようではないか。
格好良い。今日1日の将棋ファンの盛り上がり。そして棋王戦タイトル挑戦に近付いているという結果。
まさしく"将棋指し"だなぁ。と思うのである。
会長のように多くの方に認められるまでは本当に険しい道のりだが、「何と言われようが」との精神を持つ事は今日からでも出来る。改めて、そういう気持ちで指していきたい。
本当に、心のもやを切り裂くかのような△9三銀だった。
山本博志
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