GID特例法違憲判決について

最高裁判所大法廷は2023年10月25日GID特例法(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律)のいわゆる手術要件について、違憲であるとの判断を示しました。★

自分が作った法律が違憲と判断されるのは、複雑な心境でもあります。

もともとこの法律は、与党側は南野知恵子参議院議員(後に法務大臣)が、野党側は私が折衝して、議員立法で2003年に成立したものです。

当時も、この内容の法律では、救済されるのは当事者の一部になってしまうなどから、野党側は、ハードルの低い要件で性別変更を可能とする法案を準備していました。

折衝を続けましたが、この内容が与党(特に自民党)において賛成できるぎりぎりのラインのものだということでした。ハードルが高いではないかという他の野党の皆さんに、これ以上要求すると、そもそも法律が成立しなくなってしまう、ここは法律の成立を優先させようと、逆に説得に回ったことが思い出されます。

そうはいっても、この法律は2003年当時におけるICD-10(国際疾病分類)などを参考にしていましたし、ほかの国と比べても標準的といってもよい内容でした。

2019年にICD-11に改定された際には、「性同一性障害」(GID)が精神疾患のリストから外されました。治療を必要とする疾病ではなく、いわば「ふつうのこと」と考えられるようになったということでしょう。

すでに手術要件などは撤廃する国が多くなってきていることから、現在において法律を評価すると、遅れたものになってしまっていることは否めません。最高裁も、「憲法が保障する意思に反して体を傷つけられない自由を制約しており、手術を受けるか、戸籍上の性別変更を断念するかという過酷な二者択一を迫っている」として、憲法に違反するという判断をしたものです。

人権というものは固定的な概念ではなく、つねに獲得されつづけるものです。最高裁判決を受けて、他の要件についても見直しを進めることが必要と考えます。

★ 戸籍上の性別記載を変更できるようにするためには次の五つの要件を満たす必要があります。


  1. 
20歳以上であること

  2. 現に婚姻をしていないこと

  3. 現に未成年の子がいないこと

  4. 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること

  5. その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観 を備えていること

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