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夏休みに時短勤務を疑似体験!30代男性教員が感じた「想像以上に厳しい」現実!

2024年の夏休み、年休を活用して時短勤務を疑似体験してみました。

時短勤務を実際に自分で体験してみることで、多くのことが分かりましたし、現在時短勤務をされている先生が、想像した以上に大変な環境で働いているということが実感できました。

今回は、そんな夏休みの経験をまとめてみようと思います。


(1) 夏休みに時短勤務を試してみた理由

僕は2023年度に一年間の育児休業を取得したあと、2024年度にフルタイム勤務で復帰しています。

現在は妻が育休中で家事・育児をメインで担当してくれていますが、下の子が3歳になる数年後には妻も仕事に復帰する予定です。

妻の復帰後、保育園の送迎などが必要になるため、選択肢の一つになってくるのが、夫婦どちらか・夫婦両方の時短勤務です。

自分の学校では、時短勤務されている子育て中の先生も数人いますし、現在夫婦のどちらかが時短勤務している方も多いのではないでしょうか。

今回は、今後に向けて時短勤務を疑似体験することで、時短勤務のメリットとデメリットを肌で感じたいと思いました。

将来的に共働きになった場合、この制度がどのように影響するのかを理解することも目的の一つです。

(2) 夏休みの疑似時短勤務

夏休みは、以下のパターンで時短勤務を数日ずつ疑似体験しました。

・午前中に1時間年休パターン

 朝に1時間の年休を取得し、保育園に子どもを送ってから勤務するパターンです。

1時間の年休を取得すると、保育園に子どもを送っても余裕をもって到着できます。

学校の時間割では、1時間目の途中で到着するイメージです。

・午後1時間年休パターン

 夕方の1時間を年休として使い、早めに退勤して保育園に子どもを迎えに行ってから帰宅するパターンです。

1時間年休を取れば、保育園の迎えには十分間に合います。

学校の時間割で言うと、6時間目の途中で学校を出発するイメージです。

・疑似時短勤務で感じたメリット

実際に、朝夕の時短勤務を経験してみて、仕事に追われていない夏休みであれば、仕事と家庭のバランスがとれて、いい制度だなと感じました。

 時短勤務の日には、保育園の送り迎えも担当しましたが、子どもはとても喜んでくれました。

家族で過ごせる時間が増え、妻の家事負担が減少するのはメリットだと感じました。

しかし、実際に時短勤務をとるとなると、授業や校務分掌をこなしていかなくてはいけません。

そういったことまで考えると「想像以上に厳しいな…。」と感じた点もいくつかありました。

次にそちらを紹介します。

(3)疑似時短勤務で感じた定時の壁

夏休みに時短勤務を体験して、最も感じたのは「定時の壁」の高さでした。

フルタイム教員も定時が存在しますが、そもそも教員には残業代が支払われないため、多くのフルタイム教員はあまり定時を気にせず、始業前や終業後に仕事をしています。

"フルタイム教員にとって定時は超えようと思えば超えられるハードル"です。

超えようと思えば超えられる

一方で、時短勤務教員にとっては、勤務時間が短い分、給与が減り、家事や育児に追われているため、定時を超えて働く余裕がありません。

"時短教員にとっての定時は、簡単には超えられないレンガの壁と言えるのではないか"と思いました。

簡単には超えられない

実際にこの夏休みの体験では、時短で確保した時間は保育園の送迎に充てられているので、定時より前に出勤したり、定時を超えた時間に仕事をしたりすることができず、計画した仕事量をこなせないことがありました。

これまで定時を気にせず働いていたフルタイム教員にとって、時短勤務はメリットがある一方で非常に制約の多い、窮屈な働き方でもあるとも感じられました。

(4)実際に時短をとるとしたら

今回の疑似体験を通して、実際に教員が時短勤務を取得する場合に、どんなことが起きるかを予想していきたいと思います。
※週5勤務+朝夕1時間ずつ短縮を想定しています。

・空コマの減少

勤務時間が減りますが、人手が足りない学校が多いことを考えると、それなりの授業をこなさなければならない可能性があります。

ただし、朝夕1時間ずつ短縮しているため、6時間×5日間=30時間の内、実際に授業を担当できるのは2~5時間目×5日間の20時間となります。

ここで、週の担当コマ数が配慮されればいいですが、場合によっては空きコマがほぼ無いような時間割が組まれる可能性もあります。

短縮勤務で朝夕に時間外勤務をして授業準備ができない中で、空きコマまで減少してしまった場合、学校にいる間に授業準備を行うことが非常に難しくなります。

・授業準備をどうするか問題

時短勤務+空きコマの減少により、学校で授業準備ができなければ、
・授業準備を諦める
・家に持ち帰って授業準備をする
の2つの選択肢しかありません。

実際、ある程度のキャリアがあれば、授業直前に指導書を確認するだけで、"それなりの授業"を行うことはできてしまいます。

一度経験のある学年や教科の担当であれば、過去に授業を行った際の記録やワークシートが残っていることもありますし、ワークシートやデジタルコンテンツも多数提供されているので、それらを活用することもできます。

ただ、準備が十分でなければ"いい授業"を行うのは難しいです。

授業中に、
・この展開ならこんなワークシートを作ればよかった
・こんな単元構成にしたら、もっと子どものためになったのではないか

と思うこともあるでしょう。

子育て中だけ、と割り切って授業準備をほぼせずに授業をするケースもあるのではないかと思いますが、「いい授業ができず、児童・生徒に申し訳ない」という葛藤とも戦うことになるのではないでしょうか。

最初は割り切っていても、目の前の子どもを見ていると育児中だけとわり切れず、「自分の時間を犠牲にしてでも、いい授業をしたい」と思ってしまうのも教員の性です。

結果として、学校の少ない空きコマでできなかった分の授業準備や担任業務を家に持ち帰り、給与の発生していない中で業務を行う場合もありそうです。

・キャリアに対する影響

育児休業から職場復帰する年代の教員は、一定の経験を積んでおり、学年主任や校務分掌のリーダーを任されることが多くなってくる年代でもあります。

しかし、時短勤務をしている教員がこれらの責任ある役割が任されるケースは珍しいのではないでしょうか。

これらの役職は、学校運営において自らの意見を反映させることができる魅力的なポジションで、これらの経験を通じて教務主任やそれ以上の地位に昇進することが一般的です。

しかし、時短勤務ではフルタイム教員と同じような働き方をするのは不可能であるため、そのようなポジションを経験する機会が減少し、結果的にキャリアの選択肢を狭めてしまう可能性があります。

同じ能力を持つ同僚がフルタイムで働き、評価されているのを見ると、「自分ももっとできるのに」と感じることでしょう。

時短勤務がキャリアにマイナスの影響を与えると感じることも、残念ながらあるかもしれません。

また、夕方行われる会議に出席することもできないので、学校運営や行事に対して自分の意見を反映させることも難しくなってきます。

・同僚への申し訳なさ

時短で勤務していることについての申し訳なさを感じることもあるかもしれません。

急に発生したトラブルの対応や、時短勤務で担いきれない仕事を同僚がやってくれているという申し訳なさや、同僚が遅くまで残っているのに、自分だけ早く帰るといううしろめたさを感じることもあるかもしれません。
※時短を取得する教員が悪いわけではなく、十分な補充ができないことがわるいのですが

子育てと仕事を両立しようと頑張ろうと決意していても、実際に一緒に働いている職場や同僚に対して申し訳ないという気持ちを持ち続けるという場合は結構多いのではないかと思います。

・働く意味の喪失

育児休業が終わり、「時短勤務ではあってもこれまでの経験を生かしてバリバリ働き、子育ても頑張っていくぞ!」と意気込んで職場復帰したものの、そこで待っているのは、
・過密な時間割
・不十分な準備のまま行われる授業
・持ち帰り仕事
・同僚への申し訳なさ
などです。

同僚に負担かけて申し訳ないなぁという気持ちをもちながら帰宅し、家事をこなして子どもを寝かしつけた後、眠い中で授業準備をするような生活が、持続可能な働き方でしょうか。

育休を経て時短勤務で職場に復帰した教員の中で、翌年に退職してしまう方や非常勤講師を選ぶ方が多い理由も、なんとなくわかったような気がします。

(5)夫婦共働きの時短勤務

教員の世界を見ていると、女性教員が時短勤務を取得しているケースが大半ですが、夫婦で時短勤務するという選択肢もあります。

夫が朝1時間時短勤務を取得して、朝食の準備や子どもを保育園へ送ってから出勤し、妻が夕方1時間時短勤務を取得して、保育園に子どもを迎えに行ってから、夕方の家事をするパターンです。

きちんと実現すれば、夫婦の負担が偏ることがなくなりそうですが、実際にはデメリットもかなりありそうです。

夫は朝1時間の時短勤務であるものの、結局残業しなくてはいけないというようなケースが多く発生しそうです。

残業していたら、1時間時短勤務をとった意味はなくなってしまい、その分の給与を損したことになってしまいます。

夕方1時間早く帰宅する妻も、夕方できない仕事を、朝早く出勤してこなすというケースがありそうです。

一般企業でフレックスタイムが認められていれば、夫婦の勤務時間をずらすことで対応できそうですが、教員でフレックスタイムはあまり認められていません。

結局は夫婦のどちらかがフルタイム・どちらかが時短勤務を選択することになり、多くのケースでは妻が時短勤務を選択し、一部の先生は退職の決断をされているように思われます。

このことは、実力ある女性教員の退職を招き、教育現場の人手不足を加速させている要因の一つであると思うので、時短勤務以外により子育て世代にニーズに合った、柔軟な働き方があってもいいのではないかと思います。

もう数年したら、自分の家族も今後の働き方やキャリアを改めて見つめ直すことになります。

夫婦ともに納得できる働き方で、家族全員が幸せになれるような形を模索していきたいと思います。

(6)まとめ

今回の記事では、夏休みを利用して時短勤務を疑似体験した経験をまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。

時短勤務は一見すると魅力的な制度ですが、その裏には多くの課題があることに気づきました。

特に、家庭と仕事のバランスを取ることの難しさについては、個人だけでなく組織や社会として改善の余地があると感じます。

時短勤務を検討している方は、今回の記事を参考に、ご自身でも疑似体験してみてはいかがでしょうか。きっとこれまで考えていたこととは違うことを感じたり、考えさせられたりすること思いますよ。

今回の記事が、みなさんの参考になれば幸いです。

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