大切な人のハレノヒに。【贈り物としての日本酒】
大切な日
親友が誕生日を迎えた。
青春の全てを共にした、もう10年以上の付き合いになる彼女は私にとって家族同然の存在だ。
この上ないくらい嬉しかったあの時も、絶望に打ちひしがれたあの時も、不安に押しつぶされそうだったあの日も、笑っちゃうくらい馬鹿をしてた日々も、
私の思い出には常に彼女の姿がある。
人生を共に歩んできたといっても過言ではない。
そんな彼女は私より少し早く、区切りの歳に歩みを進めた。
ということで今日は、大切な人が迎えたハレノヒの、思い出の一杯について綴ろうと思う。
変化と不変
私の親友、彼女はお酒が異常に強い。
顔色ひとつ変えずお酒を浴びるように飲む彼女に、私はいつも羨望の眼差しを向けている。
彼女のポテンシャルが欲しい!と駄々をこねる私を軽くあしらい、王者のような貫祿で飲み続ける。
ここ数年変わらない光景だ。
そんな彼女とお酒を飲んでいると、たまに学生時代を思い出す。
昔は、といっても数年前までは、パックのジュースを飲んで、安いアイスを片手に担任の愚痴を言っていた。
叶うかもわからない夢を熱く語ったし、自分達ならなんでも出来ると信じて疑わなかった。
根拠なんか何もないのに、JKは最強だと豪語していた。
でも今は違う。
テーブルに並べるのはお酒とおつまみばかりだし、仕事の話に恋愛の話、ずいぶん現実的な話をするようになった。
私たちは着実に、歩みを進めているんだと感じる。
それなりにしっかりと大人になってしまったし、嫌でも現実に目を向けるようになった。
変化を感じると寂しさが襲う。
でも、変わっていくことは決して悪ではないし、私たちには変わらないこともある。
たとえば、私はこれからもずっと彼女と一緒に笑っていたいし、彼女には幸せでいてほしい。
その幸せに少しでも加担していたいし、その気持ちは今も昔も変わらない。
大切な人であることはこの先もずっと変わることはない。
そんな親友に向けて、どんなお酒をプレゼントしようか。
素敵な一杯に出会えるといい。
贈り物としての日本酒
最近日本酒にはまってるらしい彼女には、どうにかして好みの一杯を贈りたいと思っていたから、
買い出しに向かったお店の棚とはずいぶんな時間睨めっこをした。
日本酒の入門編。苦手意識を持たないためには香り高いフルーティーな味わいのものがいいだろうか。
いやでも、甘味が強すぎるとしつこくくどく感じてしまうかもしれない。
お米の旨味を感じるような銘柄を選んだら、日本酒の奥深さに興味を持ってくれるだろうか。
うーんだけど、どんなご飯と合わせて飲むかも分からないし、その楽しさを見出すまでにはまだ時間がかかるだろう。
彼女の人柄も、味の好みも、色々な面を知りすぎてるからこそ逆に選びきれなかった。
どれもこれもベストではない気がしたし、ときめきを感じられなかった。
諦めかけた、妥協せざる得ないのかと考えていたそのとき、それは突然目の前に現れた。
── 越後鶴亀 純米吟醸 ワイン酵母仕込み
目があった瞬間出逢ってしまった、と思った。
ワクワクが止まらなかった。
彼女がこのお酒を飲みながら笑っている姿が目に浮かぶ。
これだ、間違いない。
彼女は絶対このお酒を好きになってくれる。
確信を持った私は颯爽とレジに向かう。
さて彼女は、どんな反応を見せてくれるだろうか。
越後鶴亀
越後鶴亀はその名の通り、新潟県の地酒である。
「人々に喜ばれる美味しい酒造りを」という想いから、おめでたい席に欠かせない"鶴"と"亀"を名前に採用したそう。
近年その評価は間違いなく高い。
「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」受賞をはじめ、現代のスタイルに合わせたニュータイプの日本酒として多くの人から支持されている。
特に、若年層や女性など、今まで日本酒にあまりいい印象を持っていなかったり、馴染みがなかったりした人々にとっては、そのイメージを180度転換させるようなお酒だろう。
私がこのお酒と出会ったのもちょうど1年前くらいで、
誕生日に父からプレゼントされた。
「せっかくの誕生日だから、おめでたく、華やかに飲めるお酒を」と渡してくれたお酒。
それまでは、とにかく甘く香りが強めのものを好んで飲んでいたが、
父は、少し違う風味を味わってもらいたいと選んでくれたようだった。
その味わいは今まで好んでいた単純な"甘味"とは全くの別物だった。
甘さは感じるが、柑橘系のさっぱりした酸味。
甘味につきものであるしつこさはなく、舌に残るのは爽やかな味わい。
"ワイン酵母仕込み"を謳っているだけに、酸が強めの白ワインを飲んでいるような感覚。
甘味と酸味の絶妙なバランスに惚れ惚れしたのを覚えている。
そんな越後鶴亀と合わせるおつまみは何にしよう。
白ワインと合わせるように少し癖が強いブルーチーズをカゴに入れる。
ブルーチーズの独特なくさみは、越後鶴亀の優しい酸味が包み込んでくれるはずだ。
バゲットにクリームチーズを乗せてみてもいいかも。
食中にいただいても、越後鶴亀の甘味は邪魔をしないから。
その他、誕生日パーティーに並ぶ華やかな食事たちのお供にぴったりなはずだ。
年に1度の親友のハレノヒ。
今年は、華やかなだけじゃない、今までとは少し違った大人な味を大切な人に届けに向かう。
今年も彼女にとって幸せな一年でありますように。
来年もまた隣でお祝いできますようにと願いを込めて。