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レトロ番組風Youtubeチャンネル「フィルムエスト」のドラマを観て、著作権の裁判例を思い出した話


懐かしさ満点のサスペンスドラマ『外湯巡りミステリー・道後ストリップ嬢連続殺人』が話題に

 数年前から、昭和レトロや平成レトロなものが若い世代に人気です。
 最近話題になったのは、80年代~90年代の2時間サスペンスドラマをオマージュした、Youtubeの動画です。
 フィルムエストというチャンネルの、『外湯巡りミステリー・道後ストリップ嬢連続殺人』です。

 主演は、友近さんとモグライダー・芝さんです。
 友近さん演じる旅行ライターと、モグライダー・芝さん演じるカメラマンが、道後温泉で踊り子の殺人事件に遭遇し、真相に迫っていく、というストーリーです。
 アナログ放送を彷彿とさせる荒い画質、主役2人の小粋なやり取り、踊り子の女性達のバブリーなファッション、最後に崖で犯人が自白するシーンなど、懐かしさやあるあるが詰まっています。

フィルムエストのレトロ感を演出する、独特のフォント

 このチャンネルでは、昭和のバラエティ番組やワイドショーと見紛う動画が多くアップされています。
 画質やナレーション、BGM、フォントなどに、昭和のテレビ番組の特徴が滲み出ています。特に、フォントは「こんな感じだったんだろうな」という古めかしさがあります。

 例えば、新紙幣が発行された直後にアップされた『渋沢栄一の1万円札を40年早く入手した主婦』では、「やっぱり出た ニセ札ぞくぞく!!」というテロップが表示されます。筆文字にもデジタルの文字にも見えて、やや恐怖心を煽るようなフォントが、昭和のワイドショーを思わせます。

フォントの著作物性が争われたことがある

 ところで、フォントに著作権は認められるのでしょうか。
 基本的には著作物性はありませんが、例外的に認められることもある、という解釈です。
 「ゴナU事件」という裁判で、フォント(印刷用書体)に著作権があるのか、争われました。
 
 印刷用書体は基本的に、「文字の有する情報伝達機能を発揮する」ことが目的なので、著作物性を認めると権利関係が複雑になってしまいます。
 そのため、基本的には著作物性はありません。
 ただし例外的に、「従来の印刷用書体に比して顕著な特徴を有するといった独創性を備え」ていて、「それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備え」ている場合は、印刷用書体にも著作権があると解釈されます。
 余程クリエイティブであって、見る人が「美しい」と感じるようなフォントでなければ、著作権があるとは言えない、ということです。

まとめ

 レトロブームは、まだまだ続きそうです。
 フィルムエストの動画を観ていて、フォントで懐かしさや古めかしさが演出できることを知りました。
 次はどんな「レトロなもの」が話題になるのか、気になります。

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