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校長室からこんにちは No・4【共に育つ】学校五日制を考える(第4号・2002年12月23日発行)

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---★ 山口“悟風”智・作「おかあさんへの手紙」特別号 ★-------
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☆今回は、筆者の山口“悟風”智が、北海道上川郡東川町立東川第二小学校に勤務した時代(1992〜94年度、悟風58〜60歳)に書いたもののうち、学校通信「二小だより」に92年6月より93年6月まで連載した「校長室からコンニチハ」(全10回)のうち、NO・4(1992年10月執筆)をお送りします。
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 校長室からコンニチハ NO・4
 【 共 に 育 つ 】
  ======== 学校五日制を考える ========

       東川町立東川第二小学校長
            山 口   智


 いつもより、作柄はかんばしくないと聞きましたが、実りの秋を迎えお忙しい毎日とお察しいたします。

 学校は10月1日に研究会を開き、管内からたくさんの先生方が参観に来られて二小の子どもたちの頑張りを見ていただきました。

 今は、25日に予定しています“学芸会”にむけて劇、音楽、遊戯等の練習に打ち込んでおります。どうぞ、25日にはお揃いでおいでになり、二小の子の頑張りに拍手をお送りください。お待ちしております。

 さて、去る9月12日(土)。
 【学校五日制】という新しい歩みが始まりました。
 五日制のねらいや意味については、先の“二小だより”でおおよそお解りのことと思います。今日は、<<休みになる土曜日をどう過ごせば良いのか>>ということについて考えていきましょう。

 先にお便りしたように、五日制はお子さんをご家庭(地域)にお返しして、学校だけでは育て切れないことを家庭で教育してくださいということです。言い換えれば、お子さんと一緒の時間を増やして父母の皆さんでなければできない“教育”をしてください。ということです。

 『この忙しいのに、校長はなにを寝言みたいなことを…』と、思われるでしょうが、もうちょっと我慢して聞いてください。

 例えば、お母さん。お母さんは食事の支度をお子さんに見せたり、手伝わせたりすることがおありでしょう。それが家庭でなければ出来ない“教育”なのです。
 お父さんがトラクターやコンバインを操作しているところ…。草を刈っている姿…。それが教育なのです。お母さんの食事の支度を見ないで育った子は、味噌汁ひとつ、魚一匹焼けない子に育ってしまうのです。
 テレビでも、二十歳を越した女子大生がお米ひとつ満足にとげない様子などが時折、放映されますね。

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子どもは、直接体験しないことは決して覚えないし、出来るようにはならないのです
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 鉛筆をナイフで削れないのは、ナイフで鉛筆を削らせるという体験をさせないからでしょう。林檎の皮むきも同じです。泳がせなければ泳げるようになりません。【体験】の大切さについてもう少し考えていきましょう。
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【体験】とは、自分で経験すること、自分がやってみた経験
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という意味です。

 人の話を聞いたり、本で読んだり、テレビで見たりしたことも、<<体験>>ですが、これは、<<間接体験>>といって頭で分かっても実際には出来ないものです。
 例えば、よく『腹一杯食べながら痩せられる』とか、『初段への近道』といった本が売られていますが、その本を買って本棚に並べておいても(読んだとしても)実践しなければ、一向に痩せもしないし、初段にはなれませんね。
 今、学校が五日制になったのは、子供たちに<<直接体験>>をたくさんして欲しいという“願い”が込められているのです。

 【体 験】は、大きく分けてつぎの三つが考えられます。
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   1→ 自然体験 →四季折々の野山、海、山、川等との関わり
体験 2→ 社会体験 →社会施設や世の中のしくみとの関わり
   3→ 生活体験 →衣食住を含め身の回りの生活との関わり
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1→ 自然の中に飛び出し、色々な生き物の生活を見たり触れたり、四季
  折々の変化の中で、芽を出し葉をつけ花を咲かせて実を結ぶ、そして枯れていく。この地球は人間だけのものでないことを実感として覚えること。そこから、他の生命体に対する思いやりの心が育ち、このことが豊かな人間性の原点となるのです。そして…… やがて、自然が不思議さに満ちていることや、大自然の恩恵を知り、感謝の心が育ち、人間の営みは、大自然の中ではいかに小さいものかを悟り、自然に対する畏敬(いけい)の念が育っていくのです。
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2→ 社会は、人と人とのコミュニケーション(言葉や文字などで意思
  の伝達を行うこと)によって成り立っています。
  他の人と上手に意思の伝達ができること<<社会性>>を身につけること。この力は、幼少の頃から、色々な人とのコミュニケーションを通して身につくもので、“体験”がなければ上手に意思の伝達ができなくなります。人間は人間との交流なくしては人間には育ちません
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3→ これは、家庭での生活体験が最も大切だし、子供たちにとって一番お手本が、母であり、父であり、祖父母兄弟です。
   日本中の子供たちの殆どが、学校に入る前に自由に日本語を話せるようになる。その教師はお母さん貴女です。といつかお話ししましたね。
   奥さんがご主人を無視し、冷たい仲の家庭で育った娘は、結婚しても夫への気配りが出来ないそうです。逆に奥さんがご主人のご機嫌を上手にとり気配りをする賢い母親を見て育った娘は、自分の夫への気配りが上手な奥さんになるそうです。
   家庭での生活体験は、その子の性格をつくりやがて自立し社会人として責任をとれる人間になれるかどうかの大切な体験なのです。
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(1992年10月、日付不明)

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☆次回は、「校長室からコンニチハ」No・5を掲載する予定です。

☆このメールマガジン版に掲載した山口“悟風”智の作品は、明らかな間違いを除き、筆者・悟風が書いたまま載せています。

山口“悟風”智のプロフィールは、
http://plaza.rakuten.co.jp/gofu63/profile/
をご覧下さい。
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★編集後記「人並みだったとしておこう」★

 「子どもは、直接体験しないことは決して覚えないし、出来るようにはならないのです」——父“悟風”智校長がこの文章で言いたかったのは、ここに集約されているでしょう。父の人生を踏まえると、まさに実体験から、この言葉が出てきていると思います。

 父は生前、家庭菜園を作っていました。かなりの腕前で、「おかあさんへの手紙」通常号第15号の「★社交辞令にホクホク」には、プロの農業経営者から「ホウ、なかなか先生うまいんだな」と褒められて、大喜びした場面が出てきます。

 父が野菜作りを学んだのは、農業高校に通ったからでした。本当は、他に行きたい学校があったそうです。しかし、家庭の事情で、通学費がかかるその学校ではなく、家から歩いても行ける農業高に行くことになったと聞いています。志望校が「母校」にならなかったことは、父にとってはいつまでも悔しい思い出だったようです。私が高校に進学する時、父のかつての志望校を受験させようとしたほどですから。ただ、私は、自分の意思で、別の学校を選び、通わせてもらいました。

 ただ、父は農業高に入って良かったとも思っていたようです。入学した経緯は不本意だったものの、野菜作りや家畜の世話を実習で経験したことで、生涯の趣味である家庭菜園作りが出来るようになりました。よく「農高に行ったから、今でもイモやカボチャを家で作れるんだ」と話していました。その時、父は「体験」の重みを感じ取っていたのでしょう。
(発行者・山口一朗)

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■発行者: 「悟風の書斎」管理人・山口一朗
        yamaguchi_gofu@yahoo.co.jp
「悟風の書斎」http://www.asahi-net.or.jp/~jh2i-ymgc/gofu.html
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※トップの画像は、「キトウシ山」RelativeWorksさん撮影。
山口“悟風”智が晩年を過ごした地域にある山で、この写真は「photoAChttps://www.photo-ac.com/ よりご提供いただきました。ありがとうございました。

■「おことわり」

 明らかな間違い以外は、基本的に筆者・山口“悟風”智が書いたまま載せています。なお、この「特別号」を復刻するにあたり、リンク切れしているURLは全てリンクを消去しています。(編集者・悟風のムスコ)

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