2回目のウェディングドレス
今回は、私自身が結婚式のお仕事をしていることもあり、
式の延期を決断した方々に何かお伝えできる事はないかな?
と思い、書いてみました。
仲間たちが、素敵な提案や具体的なアイディアを届けている中、
私が本音で伝えられることは何か?と考えた時に、
私は私の過去のストーリーを伝えたいと思いました。
なぜなら、
私自身も 結婚式を一度中止した過去があるから。
アイディアよりも、自分の経験そのものが、一番伝えられること。
そう思えたからです。
その経験を通し感じたことを、
アートディレクターとしての言葉ではなく、
等身大のやまがたゆか自身の言葉で届けられたらと思います。
誰のせいでもない、当日結婚式の中止を決断。
6年前、私は家族と親しい友人だけを呼びたいと、
軽井沢での結婚式を選び、
前日から星のリゾートが運営するホテル に宿泊ー。
義理の父が突然、救急車で運ばれた。
前日の夜、突然の連絡。
それでも結婚式の準備は進み、当日を迎えたものの、
花嫁支度の直前に、危篤状態との連絡が病院から入り、
開始3時間前に中止を決定したという
自分の人生の中でも
最大と言ってもいい決断をしたことがある。
中止を決断した時の記憶は
今でも脳裏に焼き付いている。
ー 初めて目にする、けんじさんの涙。
ー やりたくないなら、やらなくていいの。と声をかけてくれるママの声。
ー 「世界で一番幸せでいて欲しい」前夜にもらったパパからの手紙。
一生分の涙を流すレベルで泣きじゃくり、中止は決断したものの
借りたドレスも、用意したカメラマンさんもいたので、
撮影だけはしたけど、
実は今でもその時の写真は、見れない。
そのくらいに、苦しかったし、今も「あの瞬間」は苦しいまま。
苦しいの奥にある大切なことに気づいた。
結婚式は、いつやるかじゃない。
だれがいるか。でもない。
私と私の大切な人が、『どんな気持ちで、どんな想いで』
その瞬間を共に味わい、過ごすのか。
私にはそれが一番大切だった。
まっすぐに、心の底から、大好きなひとと、挙げること。
それ以上に尊いことはなかった。
だから、今でも中止したことを、心からよかったと思っている。
モチベーションを保つのはむずかしい。
絶対に、もう一度、元気になったお義父さんも一緒に
ここで式を挙げよう。と2人で決めたものの
必死に頑張ったダイエットやエステも
オリジナルの招待状作りも、もう私には気力が残っていなかった。
(友人は呼ばず、完全に家族のみにしたので作らなかったという背景もある )
一つだけ生まれた新しい希望。
もう一度があるからこそ
自分にギフトしてあげたかったのが
「ドレス」だった。
中止にした時に来たドレス。
笑顔で着れるわけもなく、
目の周りを真っ赤にして、精一杯の真顔の自分が着たドレス。
その姿が、もう一度脳裏に過ぎるのはなんだか違うと思うから、
一番の私にとっての贅沢をしてみよう!と思い
「自分のためのドレス」を創ることにした。
憧れのテキスタイルでずっと使える1着を。
大学でテキスタイルデザインを学んでいた私には
テキスタイルを学びながらも、生き方やあり方も教えてもらったと言える、
憧れでもあり、今もなお尊敬する教授がいた。
須藤玲子さん
https://note.com/yamagatauka/n/n7eafe3c18df3
須藤先生(と呼んでいたので)が創る布は
愛情しかこもっていないのを知っていた。
そしてなにより美しい。
テキスタイル1枚に
『本質的・美しく・ユニーク』が詰まったような布たち。
私は意を決して、先生へ連絡をとり
自分で布を選び、ダイエットもせずに、ありのままの自分の体型をもとに、
その後も長く使えるようなワンピースドレスを作ってもらった。
わがままは、それだけ。でもそれだけで楽しみになれた。
たった1枚のワンピースドレスが
わたしにもう一度
「結婚式がたのしみ」
という待ちこがれる喜びをくれた。
nuno.に勤める大学同期の友人が採寸してくれた瞬間も
仮縫いの瞬間も
先生が完成を手渡ししてくれた瞬間も
全部しあわせだったし
嬉しかった。
その、ひとつひとつが
「苦しかった」ことと同じくらいに「嬉しかった」として
じんわりじんわり積もっていく感じがしたのを
今でも心が覚えてる。
想像通り、しあわせを着こんで、当日を迎えた。
初公開じぶんの結婚式写真。
なんか、ハプニングがあってたまたま撮れている1枚が一番のお気に入り。
姉夫婦と大好きな姪っこ甥っ子と。
アクセサリーもブーケも
こだわってはいないけれども
それでも、この日改めて自然体で過ごせたことが何よりのしあわせだった。
誰のためでもない、あなたのための時間を。
当日だけじゃない。
その日を迎えるまでも、
その後の平凡な毎日も。
全部自分のための時間。
決して…自分本意ではないよ。
その為には、
大好きな人がしあわせを感じていることだったり
大切な人が健康でいてくれることだったり
ほんの少しの贅沢を楽しむことだったり。
難しい事は選ばなくてよい。
たくさんたくさんがんばらなくても良い。
結婚式の準備くらい、
自分に優しく優しく。
長くなってしまいましたが、
これが私自身が経験したストーリーです。
ほんの少しでも気持ちがホッとする。
肩の力が抜けたらと思い書かせてもらいました。
おしまい
おしまいの後に。
CRAZYWEDDINGみんなで考えたこの企画。
結婚式には人生をよりドラマチックにする力があるし、
その可能性を信じてる。
だから、結婚式の準備から、その力は宿ってる。
届けるわたしたちは、可能性を疑ってないから、
ひとりひとりが想った言葉や考えが
どうか、どこかのだれかの『結婚式までの日々』が楽しくなりますように。
願いを込めた企画です。