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疫病の時代の指揮者

 この記事は2020年の3月に公開するために書いたものでした。私が初めてnoteに一番最初に書いた記事です。でも公開しようとしたときコロナに関することで警告のようなものが出たので公開するのをやめたものです。記録のために公開しておきます。


 今週の相場は大荒れでした。ニューヨークダウは1294ドル高で始まり、次の日は786ドル安というようにジェットコースター相場を演じました。その大きな原因が3月3日に行われた緊急利下げにあることは間違いありません。その発表があった日は786ドル安という結果になりました。声明文では新型コロナウイルスの影響のためとあります。中国に発生し、いま世界に蔓延しつつある疫病が市場に大きな影を投げかけています。これを書いている3月8日現在アメリカの感染者数は433人で、日本の感染者数の461人に迫っています。人類が克服したはずの疫病の静かな死神の様な忍び寄る不安を感じさせます。もちろんインフルエンザの患者の数からすれば微微たるものなのですが、未知のウイルスがどこまで広がるのかわからず先の見えない不安を皆感じています。その不安の矛先としてトイレットペーパーが店頭から消え、さらなる非日常感を醸成しています。

 FRBの議長は市場という舞台のメインプレイヤーであり、私達もまた観客であり演者の一人なのです。今回の相場急変で多くの資産を失った相場師たちは数しれないでしょう。週末の取引日にFXを取引しているYouTuberのライブを少し見たのですが、そこにあったのは混乱と絶望です。私はいたたまれなくなり見るのをやめました。多くの資産を失うのは臨死体験に近いです。限りなく死に近づいていくそんな感覚です。非業の死を遂げた戦士を眺めている。

 こんなことを考えるのは今読んでいる本である「他界からのまなざし」を読んでいるからだ。他界とは冥界であり死の世界のことです。この本によれば日本の他界観とは近傍他界観であり、キリスト教の地獄と天国の様な望遠他界観とは区別されています。近傍他界観とはあの世がこの世と表裏一体になり一つの世界を形作っているさまを表します。この中で世阿弥の能を分析しながらその演劇空間が作る他界性をありありと記述しています。私もまた市場の動きを見る観客として他界に連れ去られるようなそんな演劇空間にいるのではないかという感覚に襲われます。死者の側から見る生者の世界。非業の死をとげたシテに導かれ向こう側に連れて行かれる。それはこの世の肯定であって、小さな喜びの発見の場を再確認させる場所でもあります。

 これからも不安定な相場は続きそうです。指揮者であろFRB議長の采配は難しいものになりそうです。


 

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