ヴァーチャルキャラクター「洛天依」の話をしよう! −その2−
一番ビックリしたのは自分たちでした。天依は2016年2月湖南テレビの春節番組にAR出演したその一夜にして中国ヴァーチャルキャラクターのプリンセスになったのです。
中国テレビ事情
ここでまた少し中国の事情を説明します。
中国のテレビ局は大雑把に言うと、全部国営なのですが、CCTV(中央電視台)がいわゆる国営放送の中心で、その他に34の省や市(日本の都道府県みたいな行政区)があり、そのそれぞれが放送局を持っています。その中で「湖南TV」(湖南省のTV局)は、バラエティー番組や歌番組で高視聴率を稼いでいる中国では1,2位を競う人気のあるテレビ局です。テレビ局の視聴率で5%に達するのはまれに見る高視聴率と言われていました。もっともこの数字的な根拠は、統計的な数字ではなく僕がテレビ局やエンタテイメント事業にかかわる複数の関係者から聞いた話しとしてですが。ただCCTVだけで10チャンネル以上、大きな省や市も複数チャンネル運営していて、なおかつほとんどのテレビ局がネット専用のTV局も持っているので、TV放送、ストリーミング放送も含むと膨大な映像コンテンツの選択肢があります。そして莫大な人口です。10億人で計算しても5%で5000万人。日本の人口の半分くらいの人が視聴している計算になります。そんな中国のテレビ局も頭を抱える問題があります。それはテレビ離れです。
中国でも日本と同様にすでにテレビ離れが始まっていて、特に若者はスマホをスクリーンとする動画やゲーム、ストリーミング放送などの虜になる世界中で起こっていることと同じですね。
湖南テレビ春節歌番組への出演オファーが!
そんな中国テレビ事情が背景にある中で、2016年の年明け日本にいた僕たちのもとに湖南テレビの春節番組への洛天依出演オファーの連絡があったのです。それもARの生放送です。
中国のテレビ局の制作の仕方はまったく知らない、もちろん言葉も通じない、そんな環境でARでキャラクターを生放送で出演させる技術的な大きなリスク、そもそも何も企画が決まっていない、何をどう作ればいいの?そして本番は2月らしい、、え〜あと1ヶ月くらいしかないじゃん!!そんな圧倒的にリスクの高い要因と予測不可能なことばかりのことが頭をよぎる中で、いつものことながら「できる?できない?」と即断即決を迫る電話。僕は少し考えて「やろうよ!できるよ!きっと」と答えていました。
電話を切って会社のみんなに「やるっていっちゃったよ」と少し笑いながら告げた時のみんなのちょっとびっくりしながらも少し輝いている目を今でも覚えています。きっとここでは書ききれない、いろんな思いや考えや感じたことがみなそれぞれにあったんだと思います。
さて、ここからが大変です。決めた以上1秒も無駄にできない。会場はどこでどんな環境で、どんな舞台セットでいつが本番で、企画を内容を天依は何をすればいいんだ?早速湖南テレビの担当プロデューサーと電話会議を始めて、また超びっくりなことが起こったのです。
なななんと!幸っちゃんじゃありませんか!!
打合せが始まって、僕たちはどきどきしながら天依をどうやって出演させたいのか尋ねた時に、中国制作チームが「こう言う感じの若者が熱狂するのをやりたいんだ!」といって送ってきた一枚の画像データを見て、超びっくり!年末NHK紅白歌合戦の小林幸子さんが「千本桜」を歌うシーンではありませんか?!
その年、紅白歌合戦に復活した小林幸子さんの「千本桜」は、幸子さん自身の計らいはもちろん、dwangoさんの発注でLATEGRAが演出技術制作を担当させてもらったものだったのです。この一枚の画像を見た時は本当に鳥肌が立ちました。そう幸子さんの紅白出場は、一度は芸能界から抹消されたような扱いを受けながら、ニコニコ動画で若者たちの圧倒的な人気者「ラスボス」となって再ブレイクし、4年ぶりに紅白歌合戦に復活した記念すべき、本当に意味のある舞台だったのです。
なんとその大切な舞台の写真が、LATEGRAがその制作に関わったことをまったく知らない異国の中国のテレビ制作から届き、これを天依でやりたい、と。本当に感動し、人の縁に感謝し、正直この瞬間に「これは行ける!」と直感しました。
中国テレビ事情で前述したように中国テレビ局も若者離れに苦しんでいて、その打開策としてボーカロイドキャラクターである「洛天依」に出演オファーをしてくれたのでした。
長い長いトラブルの連続と目からウロコの連続
とにかく何も具体的に決まっていない、わからない状況だったので、早速湖南省の現地にナベさん(テクニカル責任者)と飛ぶことにしました。そしてここから未体験連続ゾーンへの突入になります。
書き始めたらいろいろ思い出してしまって、伝えたい洛天依との物語りがたくさん浮かんでくるので明日の日曜日に続きを書きます。
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。Twitterにも投稿してますので、何か訊きたいことや感想などあったらぜひ遠慮なくください。
昨日のTwitter投稿でボカロや天依を好きな人たちに「いいね」してもらったりリツイートしてもらったりして、僕はこういったことをするのは始めてなんですが、とても嬉しく勇気づけられて励みになるなぁ、と人生初の心地よさを感じています。ありがとうございます。。。。つづく、、