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星野リゾート青森屋で見つけた、地方創生のヒント - ねぶたとリンゴが生み出す地域経済の循環 -

先日、星野リゾート青森屋に宿泊してきました。

青森の文化、特にねぶたとりんごを前面に押し出した、その徹底した「青森らしさ」に圧倒されました。館内の装飾、アクティビティ、食事に至るまで、青森の魅力が余すところなく表現されており、まさに「青森づくし」の空間です。

青森屋での滞在は色々な目線での感じ方があると思っていて、「観光客としての目線」「同業者としての目線」「エンターテイメント提供者としての目線」など目線の違いで全く異なるアウトプットになると思います。私は今回の旅は終始「地域創生へのヒントを探す目線」で体験して来ましたので、そこで感じとることができた地域創生へのアイディアをお伝えしたいと思います。

私の心が動いた青森屋のシーン

「ねぶたとりんごの一点突破」地域資源を最大限に活かす

青森屋では、ねぶたとりんごといった地域資源を最大限に活用することで、独自の観光体験を提供しています。

例えば、館内いたるところに展示された大小の迫力あるねぶたは圧巻で、青森ねぶた祭りの熱気や迫力というものを肌で感じることができます。また、りんごを使った様々なアクティビティや津軽弁ラジオ体操、どのアングルでも思わず写真を撮りたくなるような可愛らしく幻想的な館内装飾など、一般的なローカルエンターテイメントを超えた領域で青森を五感で楽しむことができます。

何より一つ一つのコンテンツへの心血を注いだ作り込みとクオリティの高さは、同じ地域を商品として扱う人間から見ても敬意を払わずにはいられないほどの熱量と本気が伝わってきます。その上であのコンテンツボリュームですから、とてもじゃないですが一泊では時間が足りません。

そして、日本酒が大好きな私からすると青森は日本酒天国。館内のディスプレイはもとより豊富な日本酒のラインナップ。青森といえば「田酒」や「豊盃」といった有名銘柄を地場で楽しむことができたのは、私にとっては何よりも体験価値の高い出来事です。そしてその思い出をしっかりと売店で購入し、思い出をシェアできる動線設計も完璧です。国内でも指折りの銘酒が揃う山形県でも、まだまだこの資源をフルで有効活用できているとは言えません。

象徴的なのは動画内の最後にもありますが、「みちのく祭りや」と呼ばれるねぶた祭りを想起させるショーイベントの存在です。大人は一人1,500円程度で参加することができて、美しい映像美と対照的な演者が繰り広げる熱いパフォーマンス。その背景に見え隠れする青森の情景に観るものは圧倒されます。ショーの最後には観覧者も参加して作り上げる最高の体験価値、その瞬間に生まれるオリジナルの一体感。

なにより驚いたのは、演者の皆さんは社員スタッフさん達で運営されているとのこと。安易に「どこの劇団の方だろう」とか「どんなところへ外注してるんだろう」などと考えていた私の考えは浅はかでした。もちろん本番のねぶた祭とは違うという批判的な考えを持たれる方もいらっしゃると思いますが、ここで大切なのはどのようにして「また青森の地を訪れたい」という気持ちにさせることができるかだと思っています。

そこの論点は本物や偽物というレイヤーの話ではなく、観る者に行動変容を起こさせるほど人の心をどうやって動かそうとするかを考える思考量と年間365日ショーを続ける圧倒的な熱量です。(実際に私も青森屋さんのコンテンツをみて、生のねぶた祭も見たいという気持ちになりました)

「地域の文化で外貨を稼ぎ、地域へお金を落とす」
サステナブルな地域循環経済

私が宿泊した当日は11月の平日に関わらず稼働率は90%を超えていて、多くはインバウンド客が占め、日本のお客様を探す方が難しいといった感じでした。ただし、ここでの外貨というのはインバウンドだけでなく青森県外すべてを含む意味でのマネー流入という意味です。

青森屋から学ぶことは、「地域資源(文化)に熱量を込めてコンテンツ化し、食材や雇用に形を変えて地域にお金を落とし、循環させる」というサステナブルな経済スキームをもっと真剣に他の地方は設計していかないといけないという危機感ではないかと感じています。
この辺がまだまだデザインしきれていない地方に起こりがちなのは、安易な海外訪問集客キャンペーン多発というケースです。
それ自体を否定するつもりは全くありませんが、集客の前に今地域に並んでいる商品が自己満足ではなく、他者からみて本当に魅力的であるのかは常に引きで冷静に考えていないといけない部分だと思います。

そしてそれを作る私たちも含めた地域の観光事業従事者の熱量と本気も同時に試されているのだと思います。

また、青森県内では学生が青森を訪れた観光客に自分の地元の観光情報を直接案内するような取り組みが精力的に行われているとのこと。これを県や教育委員会、地元企業が真剣に取り組み、地域の発信文化を醸成することで若い方は地元への関心や愛着も自然と高まっていく仕組みが作られていきます。これは地域の観光人材育成という側面で、稚魚を育てて放流するような未来への重要な投資活動だと思います。

山形(古窯グループ)への応用を考える

古窯グループもまた、地域の魅力を発掘し、発信することで、微力ではありますが地域活性化に貢献することを目指しています。それらを実現させるためには、まだまだできることはたくさんあるし、まだまだできていない部分もたくさんあるなというのが青森屋の熱量と比較しての率直な感想です。
また、自施設最適ではなく、面的最適も視野に入れながら山形の魅力作りの高みを目指していく姿勢が大切であると感じました。
青森屋の事例を参考に、私たちももう一度地域資源を最大限に活用し、地域観光に対してどのくらい貢献できているかを考えさせられる貴重な機会になりました。

この記事が、地方観光業や地方創生に関わる方々にとって、少しでも参考になれば幸いです。

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