ママのおまじない(no.66〜no.70)
この「ママのおまじない」は、心臓病の子どものための保育教室『そらとぶペンギン』に通っていた生徒が小学生となり、そのお母さんが2004年から2007年まで、『そらとぶペンギン』のサイトに掲載していたものです。
66.歯の矯正
ずっと気になっていた。
ゆきの下の前歯。
永久歯が生えてきてから、なんか変だぞ。
まるで3人掛けのベンチに4人座っているような・・・歯並び。
歯がきちんと入る場所がなくて、互い違いになっている。
近所の歯医者さんに相談して、「小児矯正歯科」を紹介してもらい、昨日、行ってきた。
自転車で行けるので助かったが、ゆきは、自転車のうしろに乗りながらも
ずっと不安がって「こわい~」と叫んでいた。(笑)
待合室では、とうとう、シクシク泣きはじめてしまった。
先生は、そんなゆきを見て、「矯正にはどんな意味があるか、どんな治療をしていくかを、心臓のこともあるので、ゆっくりわかってもらうようにしていきましょう。」と。
この医院は、心臓病のお子さんもかなり来ているそうだ。
安心した。
帰り道を自転車でいそいだ。
泣きつかれたのか、爆睡中のゆき。
これからの長丁場の治療に、少し不安に、少し憂鬱になっていた私。
そこにどこからともなく、桜の花びらが風に乗って、舞ってきた。
なんだか、とてもしあわせな瞬間のような気がした。
「よ~し♪一緒にがんばるか!」と気合がはいった春の日であった
67.ほけんしつの先生
おにいちゃんやゆきは、学校の養護の先生を「ほけんしつの先生」と呼んでいる。
この春、その先生が異動になった。
この一年、担任の先生と養護の先生のおかげで、ゆきはとても楽しい学校生活を送れたと思っている。
身体が弱いということで、必要以上に甘えているゆきを、
「ここは幼稚園ではないんだよ。少しずつ、できることは、やっていこうね。」と言ってくれたのが養護の先生。
異動と聞いて、かなり不安になった私。
でも、いつもゆきにとってベストな先生ばかりではないと、思いながら、担任の先生といっしょに、新しい養護の先生と話し合ってきた。
私と同世代の、優しい感じの先生。
「ゆきちゃんが、気持ちよく保健室の来れるようにしますね。」
「おかあさんも今まで、ご苦労されたのでしょうね。」と私のことまで気にかけてくださった。(涙・・・)
昨年の先生は、「だいじょうぶ!まかせておいて!」のベテランの先生。
今度の先生は、「わからないこと、迷うことは一緒に考えましょう!」のお母さん先生という印象だった。
心の底から安心した。
すぐに運動会の練習が始まるし、暑い日も多くなる。
保健室は、ゆきにとって、学校生活の緊張から解放される、安らぎの場所なのだ。
たくさん、たくさんお世話をおかけするかと思いますが、
よろしくお願いします!ほけんしつの先生!
68.やってみたいな、こんなこと
『わたしは1年生のとき、走るのがおそく、
走っても走ってもはやくなりませんでした。
はじめは、はーはーしました。
いまでは、はーはーするけど、はやくなりました。
こんどは、もっともっとはやく走れるようになりたいです。』
これは、ゆきが「やってみたいな、こんなこと」というテーマでみんなの前で発表したもの。
担任の先生が、学級通信で紹介してくれた。
それを読んで、涙がでた。
ゆきを、健康な身体に生んであげたかった。
ごめんね。
はーはーしちゃう心臓でごめんね。
そう思った。
今まで、ゆきに対して、「ごめんね」という感情は、ほとんどもたなかった私。
心臓が悪いゆきがゆきなのだ・・・と思い込んできた。
でも、今回はかなりコタエタ・・・ナケテクル・・
69.結果よければすべてよし!
私は、結構、完璧主義だ。
ゼロか100か・・・どちらかだ。
完璧にうまくやらなければ、やらない方がましだ・・・という感じだった。
でも、最近、20や50や75・・・があってもいいし、経過が多少、うまくいかなくても、結果まずまず、うまくいけばいいのでは・・・と思うようになってきた。
昨年一年、ゆきのクラスのクラス委員をやらせてもらった。
しかも、おにいちゃんがいるという理由だけで、委員長になってしまった。(涙)
お母さん方との茶話会、子どもたちの親睦会、給食試食会では、慣れない司会や進行をやった。
そして、クラスで少し問題がおきて、私が代表で先生とお話ししたり、あるときは、校長先生ともお話しする機会もあったりもした。
「私には、委員長なんて無理~」と泣きたくなるときもあった。
私のやったことが、誤解されて、あとで謝ることもあった。
とにかく嵐のような一年だった。
そんな一年間を通して、感じたことは、
途中でなにかあってもだいじょうぶ!なんとかなるさ!
「結果よければ、すべてよし!」
今年も、懲りずにおにいちゃんのクラスの委員になってしまった。(笑)
ゆっくりガンバロウ。。っと。
70.遠足の準備
先日、ゆきの遠足だった。
『小金井公園』という広~い公園に行くのだ。
前日、遠足の準備をし始めると、急に、「Rくんが、『おまえ!明日、お母さんと自転車で来たら、ぶっとばすぞ!』って言うんだ。」と泣き始めた。
遠足はいつも私が送っていくから、それをおもしろく思っていない子もいるんだな・・・と思いながら、
「よし!直接、ママがRくんに話して、わかってもらうよ。それでいい?」と私。
「うん、それならいいよ。」とゆき。
Rくんのお宅に思いきって、電話した。
Rくんに替わってもらい、
ゆきの病気のこと、
病院の先生にも、長い距離を歩くのを禁止されていること、
本当は、みんなと一緒に歩いて行きたいこと、
現地で合流するので、一緒に楽しく遊んでほしいこと、
そして、
これからも、よろしくね!ということ。。。
そして、Rくんは、「OK!」と言ってくれた。
本当にわかってくれたかどうか、わからないけど、
ゆきは、納得したようだ。
これで、心も遠足の準備完了!
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