ママのおまじない(no.51〜no.55)

この「ママのおまじない」は、心臓病の子どものための保育教室『そらとぶペンギン』に通っていた生徒が小学生となり、そのお母さんが2004年から2007年まで、『そらとぶペンギン』のサイトに掲載していたものです。

51.パパの思い

先日、ゆきがおなかにいた頃のことを書かせてもらった。
そのとき、「夫は何事もないように過ごしていた・・・」と書いたが、
よく考えてみると、そんな訳がなかった。

私は、家にしろ、病院にしろ、ゆきと一緒に過ごし、体調の変化や日々の成長を近くで感じることができた。
生活のすべてを、すっぽり、ゆきとおにいちゃんのことだけにあげることもできた。
一日中、誰の目も気にせず、泣くこともできた。

しかし、パパは病院の先生にどんなことを告げられようと、翌日は会社に行き、仕事をこなさなければならなかった。
大勢の人の中で、何もなかったように、淡々と過ごさなければならなかった。
何も手につかない日もあっただろうに。
そして家に帰ってからは、私のストレスを黙って一身に受け(笑)耐えてくれた。

ICUで初めて、点滴とチューブだらけのゆきに会った時、
だた呆然と涙しか出ない私の横で、「生まれたばっかりで大変だろうけど、がんばろうね!」とゆきに声を出して話しかけていた。
近くにいた看護師さんも驚いていた。

今、そんなパパにむかってゆきは一言、
「パパは男だから、一緒におふろ入りたくないな~」
父親ってサビシイのね。。。

52.冷たい手と曲がった指

日に日に寒さも厳しくなってきた。
学校から帰ってきたゆきは、ランドセルを背負ったままヒーターの前で手足を温めている。
触ってみると、手というより氷のような冷たさである。
朝は、学校に着くとまず、席に着いて、太ももに手を挟んで温めているらしい。(この姿を想像すると、なんとなくジーンときてしまう・・・)
血液の循環の悪いゆきの手は、一度冷えるとなかなか温まらないんだよね。

音楽の時間、「鍵盤ハーモニカ」をやっている。
手は、ピアノと同じように動かす。
ゆきの右手の小指は、曲がっているため短いのだ。
赤ちゃんのころ、手から点滴がはいっていて、薬が漏れたのか、そこの皮膚が、ただれて指も曲がったままになってしまった。
その当時は、心臓のことに気をとられ、指の変形までわからなかった。
「鍵盤ハーモニカ」で小指を使うとき、鍵盤に小指が届かない。
ゆきは、どうしたらできるか先生に相談したらしい。
自分でも小指の曲がっているのは、気にしつつも、きちんと対処しているんだと感心した。

ゆきの小さな手と指・・・大切ないろんなものが凝縮されている。
これからも大切に使っていこうね。

53.心配のたね

年齢を重ねていくと、だんだんと「心配のたね」が増えてくる。
私もいくつかの「たね」を持っている。
ゆきのこと。
おにいちゃんのこと。
夫のこと。
自分のこと。
親のこと・・・

時々、そのたねが勝手にさわぎだして、胸のあたりがざわざわしてきて苦しくなる。
でもね、「心配」って字を考えると、「こころ」を「くばる」って書く。
そのものに、心を寄せて、近寄らせて、見つめるって感じだ。
だから「心配」って悪いことじゃないような・・・
真剣に考えているからこそなのでは・・・と勝手に思ったりもする。
私も元々、心配性。

「たね」を自分からお金を出して買っているところがある。(笑)
たねから芽がでて、葉や花、実をつけることを祈ろう。
「心配のたね」が「幸せのたね」になることを信じよう。

今週は、この冬一番の寒さになるらしい。
この寒さのあとは、きっと春だぞ~

54.北風と外あそび

寒い、寒い、寒い!
とにかく寒い!
日によっては、外がまるで冷凍庫のような冷たさの日もある。
学校から帰ると、疲れきっているゆき。
健康な大人でも、外に出ていると、身を縮めて身体いっぱい力をいれている。

そんな寒い日、学校から帰ってのんびり温まっていると、近所の同じクラスのお友だちからのお誘い。
「ゆきちゃ~ん、外であそぼ!」と。
いつもなら、「断って!」と言うのに、その日は「行く!」と言って飛び出していった。
窓からその姿を見ると、お友だちとまるで小犬がじゃれ合うように、はしゃいでいる。
でも今日は、北風ぴゅーぴゅーの寒い日。
大丈夫かな?
いや!心配しすぎてもよくない!

2時間近くたっても、帰ってこない。
迎えに行くと、
「ママ、なんの用?」と言っただけで、ほとんど私のことなど無視して友だちが、なわとびをやっているのを、じーと見ていた。
「5時になったら、帰っておいでよ。」としか言えなかった。
チアノーゼもでていて、しんどいだろうに・・・
でもゆきひとりだけ連れ帰ることができなかった。

5時にきちんと帰ってきて、すぐに宿題にとりかかっていた。
たくましい!
寒くても、みんなと遊べて、エネルギーを充電してきたんだね。
この楽しさ、うれしさが明日につながるんだね。

さて、今日は早く寝かそう!

55.友達になろうよ

大人になると、「友だち」という言葉が、妙にはずかしくなり、またまぶしくもあり・・・

ゆきが「クラスのOくん、ゆきと話してくれないいんだ~」と淋しそうに言っていた。
私は、いい加減に「恥ずかしいのかもよ」とだけ言って、ごまかしていた。
今日、学校から帰ってくるなり、
「Oくんに『友だちになろうよ。」って思いきって言ったんだ』とゆきがうれしそうに 話し始めた。
「Oくんはなんて言ったの?」
「何も言わない、」
「だからゆきが、ピィピィってとりにマネして、笑わしたんだ。
そうしたら、Oくんもピィピィって言ってくれたんだ♪
だからもうOくんとは、友だちだよ」って。。。

ステキ~!!!
我が子ながらそういう風に素直に言葉にできるって、すばらしいことだと思った。
病気があるから、健康だからなんて関係ないんだね。
友だちっていいね。
本当にうれしい出来事。

私ももっともっと思ったことを、言葉にしてみよう。
そうしたら、友だち100人できるかも(笑)・・・
楽しみ~♪


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