駐妻初期に救われた1つのノート
前回の、駐妻初期は私にとって地獄のような日々だったという話はこちら。
今回はそんな地獄の日々をどうやって乗り越えたのか。当時救われた1つのノートについて書いていく。
駐妻は不満をぶつける相手がいない
駐妻は大体最初は知り合いがいない。
・夫の会社つながりの知り合い
・習い事つながりの知り合い
・日本人会での知り合い
時間が経つにつれてこれらの知り合いは増えていく。
しかし、これらの知り合いに「海外生活の不満」「夫への不満」を話せるだろうか?
環境も年齢も感覚も近く、相当ウマが合う相手でなければ出会っていきなり不満をぶつけることはできない。
では日本の家族、友人はどうだろうか。
私は日本の家族、友人に相談しても気持ちが晴れることはなかった。
どうしても状況が違うし、まして相手に"駐妻"の経験があるわけではないのでこちらの不満・不安があまり伝わらない。
もらえる言葉といえば「なんとかなるよ」「●●なら大丈夫」「むしろ羨ましいよ」「ないものねだりだよ」などなど。
駐妻初期に日本の家族や友人に相談したことがある人なら一度は経験しているのではないか。
「大変そうだね」「それは酷いね」と言ってくれる人ももちろんいたが、時差7~8時間の相手に毎日毎日愚痴を送り付けるわけにもいかない。
でも、海外生活の不満・夫への不満は駐妻初期であればあるほど毎日のように溢れてくる。
唯一不安をぶつけられそうな相手といえば自分の夫だが、夫は夫で海外生活に慣れているわけではないので相応のストレスをためている。
"海外で仕事をしている"という日本では感じないストレスも加わり、妻の不満・不安を受け止めるほどのキャパがない場合がほとんどだ。
そのため、駐妻初期という地獄の日々を乗り越えるためには不満をぶつける場所が必要になる。
旦那デスノートを作った
はじまりは「夫 うざい」「夫 無理」「駐在 すぐ 離婚」などのキーワードでネットサーフィンをしていたときにたまたま見つけた”旦那デスノート”という一つのサイト。
こんなものがこの世にあるのか!!と驚きつつも興味本位で覗いてみると、色んな不満や恨みを抱えた女性が書き込んでいる。
私も書いてみようか?
いや、ちょっとさすがに縁起が悪い??
今書いても明日も明後日も新しい不満は出てくるからな・・・
そんなことを考えていたらふと思いつき、不満を書き込む用のノート(日記型のアプリ)を作ってみた。
そして、それからは夫への不満が爆発しそうなとき、泣きたくなったときにひたすらそのノートに不満を書き込んでいった。
ちなみに、このノートの存在は夫に申告した。
ある日夫との言い合いの最中、”これ以上何を言ってもこの人には私の気持ちは理解されない”と悟り、言い合いをやめて無言でノートに不満を書き込みはじめたとき。
いきなり大人しくなった私を不思議に思ったのか、
夫「なにしてるの?」と。
私「旦那デスノート書いてる」(←このとき命名した。)
と答えたときの夫のぎょっとした顔は今でも忘れない。
今思えば旦那デスノートとか自分恐ろしいな・・・と感じるが、当時はそれくらいの精神状態だった。
そして、そんな穏やかでない名前のノートだが、思いのほかプラスの効果を発揮した。
不毛な言い合いがなくなった
まず、これまで夫にぶつけていた不満を全てノートに書くことで、不毛な言い合いがなくなった。
家庭内でよくあるのが
女性が日頃の不満を爆発させ、感情的に男性に色々ぶちまけ、男性は冷静に会話ができないことで面倒くさがって無言をつらぬく。そしてその態度に女性は更に発狂する
という構図。
旦那デスノートがあれば、不満を感じたときにすぐノートに書けるので爆発するまで溜めこむことがないし、ノートに書くので夫に文句をいう回数が激減した。
夫の方から何が不満なのか聞いてくるようになった
これまでは感情に任せて当たり散らしていたので夫は無言を貫き、私の話をゆっくり聞くということはなかった。
だが、ひたすら旦那デスノートに書き込むことでそもそもの文句が減ったことと、言い合いになりかけたときもパタッと文句を止め旦那デスノートに書きはじめる私を見て、「何をそんなに書いているのか?」夫は気になったらしい。
目の前で黙々と旦那デスノートを書いていると、「何書いてるの?ちょっと今何が不満なのか教えて」と夫から話を聞いてくるようになった。
(これは、敢えて「今から旦那デスノート書くので話しかけないでね」と言ったり、あからさまに旦那デスノートを書いている素振りを見せていたからだと思う)
冷静に文句を伝えられるようになる
旦那デスノートに書き出すということは、自分の思考の整理にもなる。
発狂寸前モードのときはただ頭が怒りで支配されるが、文字にすることで「何がいやなのか?」「どうしてほしかったのか?」「なぜ夫が間違ってると思うのか?」を論理的に考えることができる。(もちろんノートに書くときは支離滅裂な状態だが)
そのため、夫に「何が不満なの? 」と聞かれたときも、ノートを見ながら冷静に論理的に話すことができた。
・こういう状況のとき、こう行動するのが望ましいよね?
・でもあなたはこういう行動をとったよね?
・そのせいで私はこんな不満を溜め込んだ
・あなたの行動って正しいと思う?(私は正しいと思えない)
と順序立てて伝えることで夫も「たしかに俺が悪かったかも」と考えてくれる。
そして夫が自分の非を認めたら
・今後どう行動するのがいいと思う?
・私の案はこんな感じだけど
と自分がどうしてほしかったのか、今後どう対応してほしいのかを提案する。
人目を気にせずなんでも書ける
旦那デスノートはいわば自分だけの秘密のノートなので、誰に見せるというわけでもない。
そのためどんな酷い残虐な言葉を書き連ねても、夫への罵倒を並べても、誰かに何かを言われるわけではない。
TwitterなどのSNSで愚痴を投稿して共感してもらえることで気が晴れるということもあるが、SNSは必ず第三者が見る。更には自分が知らない誰か、不特定多数の人に見られる可能性を占めている。
スパム扱いされてアカウント凍結になるリスクもある。
だから、SNSは人に見られても当たり障りのない表現でしか文句を書くことができない。
その点、旦那デスノートは例えば100回「●ね」と画面を埋め尽くしても誰にも何も言われない。
むしろ携帯で打ち込む場合は3回目くらいから予測変換に「●ね」と出てくるのでその場所を連打するだけで画面が埋め尽くされる。(これは結構爽快)
これを読んで「こいつ恐ろしいな」と思う人がいるかもしれない。
でも人間誰でも恐ろしい部分は持っていて、日々の不満を吐き出さずに溜め込むとある日プツンと糸が切れてしまって鬱になったり離婚になったりしてしまう。
だから誰の目にも触れない、自分の中のダークな感情を吐き出せる場所を持つことは悪いことではない。望まない海外生活はそれくらい心が荒れる。
心が落ち着けばただの笑い話
旦那デスノートは今でも私の携帯の中に入っている。
最後に使ったのは1年前の冬。お世話になったのは最初の半年で、この1年間は旦那デスノートの出番はなかった。
日々小さな文句はあれど、それだけお互いに安定したということだ。
時々見返してみると、
このときの夫ほんとにやばい(笑)
こんなことで私は夫●ねとブチ切れてたのか(笑)
と結構笑えてくる。
それと同時にこんな時期を自分は乗り越えたんだとちょっとした勲章にもなった。
これが、私が駐妻初期を乗り越えた私なりの方法。
駐妻中期ではアイデンティティ・クライシスと向き合うことになる。
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