博物館資料保存論 レポート(設問形式)⑪
【問】火災・地震・水害・犯罪等、各種災害に関する被害の防止と対策について簡潔にまとめよ。
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火災
火災が博物館資料に与える被害としては、資料そのものの焼失、火災による温度上昇や燃焼の際に発生するガスや煤、消火剤の残留、分解ガスの影響などがあがる。博物館資料が火災にあった場合、その後の対処を保存の専門家に相談することが必要となってくる。
火災が発生した場合の対処として消火作業は当然ながら必要であり、その作業には酸素濃度もしくは燃料濃度を下げる窒息作用、温度を下げる冷却作業、燃焼を抑える抑制作用などの原則に基づき進行する。消火設備は上記の原則に準じて設計され、スプリンクラーや屋内外の消火栓設備、泡消火設備などの水系消火設備と粉末消火剤やハロゲン消火設備、不活性ガス消火設備などのガス系消火設備に分けることが出来る。この消火作業が資料に与えるダメージをいかに少なくするかという事も重要なポイントとなり、配備されている消火システムが博物館資料にどのような作用を及ぼすかを事前理解しておくことも救援活動に繋がる。
地震
近年博物館資料に与える地震の影響の大きさを改めて自覚したのは1995年の阪神淡路大震災の時である。この震災で博物館施設や社寺が破損され、所蔵されている多数の資料が被災した。
地震によって博物館資料が受ける被害には、落下・転倒による衝撃、棚内での移動や揺れによる資料の破損、スプリンクラーの誤作動による資料の水損、建物の損壊によって生じたほこりなどによる汚損、展示具に起因した落下、滑落などがある。
現在はこのような事故の経験を通じ博物館資料の保管にあたり、収納箱の重ね置きを避ける、重いものを下の棚に、軽いものを上の棚に配架するという基本事項の重要性が再確認された。収蔵棚にネットやロープを張り落下を防止する、資料を吊り下げるS字フックの強化、様々な種類の免振台の開発、テグスやワイヤーの適切な活用などの注意喚起で被害防止に努めている。
水害
博物館思慮に被害を及ぼす水害の原因として、河川の氾濫や津波に、排水管などの破壊、漏水などがあげられる。また、消火で使用した消化液も水害として考慮する必要がある。被災資料は救出過程でカビの繁殖、津波の塩害による錆の進行という新たな劣化が生じることもある。
こういった場合の応急処置としてドライクリーニング、水洗作業などが行ある。塩分による錆の進行が認められる資料に対しては脱塩処理を施し、処理後は金属部分の錆止め処理をセットで行う必要がある。水損した資料は救出後や脱塩処理後に急激に乾燥させると、収縮、変形、破損を引き起場合があるので感想環境が整った保管場所の確保が重要となる。その他冷凍庫を利用して資料を凍結させカビの繁殖を送らせる真空凍結乾燥という方法、水損した紙資料を新聞紙等でくるみプラスチックバッグに入れて脱気したのち熱圧着させるスクウェルチ・パッキング法などがある。この方法は乾燥させる場所がない場合や冷凍庫の確保がすぐにできない場合な効果的な方法として注目できる。
犯罪
博物館資料への犯罪には、盗難、放火、意図をもって行われる破壊・汚損行為といった非文化的蛮行(ヴァンダリズム)があげられる。これらの犯罪は危機管理の中で防犯対策を行う事である程度の防御が可能と考えられる。
防犯対策としては窓ガラスなどに格子を設置するなどといった外部からの侵入防止、セキュリティカードを所持したセキュリティーシステムを利用した施錠対策、監視員の配置や監視カメラの設置、大型の荷物の持ち込み制限、そのほか屋外資料に対する監視カメラ、防犯照明・防犯警報装置の設置、地域コミュニティー全体での不定期な見回り活動がある。いずれにしても博物館資料の防犯対策に当たり、資料を所蔵する機関や地域のなかでの危機管理の意識を十分に持ち、想定できる犯罪の予測をしつつ防犯対策を講じる必要がある。