耐え忍ぶ物語
「ああー、いい朝だ」
彼の名は、ヤマト。この国を統べる王であり、英雄だ。
腰には銀の剣を差し、よく締められたジャイアントヒグマの革で刃を覆っている。
服装は至って庶民的だが、内から溢れ出るオーラが彼の異質さを周囲に知らしめている。
すれ違うものは皆、身体的にこうべをたれこそしないが心の中で頭の後ろを
見せているのが感じられる。
街並みは一見地味だが、どっしりとした貴族を感じさせる桟橋や家屋、よく手入れされた馬車など
奥ゆかしい魅力があった。
その時、上空から1500メートルはありそうなドラゴンがヤマトに向かってきているのが見えた。
ドラゴンの表情は凶悪そのもの、ぎらつく漆黒の瞳がヤマトをしっかりと見つめていた。
ヤマトはドラゴンを制するかのように、純粋に燃える瞳で見つめた。
地を蹴り、空を蹴り、駆け上がる。これは彼が長年の修行で会得した武空魔術、スカイグライドだ。
ドラゴンの頭上まで駆けると、ドラゴンはヤマトを見上げた。
ヤマトは刃に巻いていたジャイアントヒグマの革を外し、素早く、ドラゴンの瞳に巻き付けた。
「空に帰れ、邪悪なドラゴンよ」
銀の剣をヒグマの革の上からドラゴンに叩きつける、ヤマト。
ドラゴンは暴れだし、体が透け、そして空に消えた。ヒグマの革が地上に落ちていく。
ヤマトは空を階段があるかのような軽やかさで駆け下りた。
「拍手で私に気を使わなくていい。当たり前のことをしただけだ。」
落ちてきたヒグマの革を手も触れず、鮮やかに銀の剣に巻き付けるヤマト。
「しかし、皆。よく頑張っているな。いつも感謝しているぞ」
彼の偉大なところは、感謝を常に忘れないところだ。庶民にも躊躇なく頭を下げる。
凶悪な帝国”ガルバント”を壊滅させた際にも、彼は民に頭をさげた。
”君たちに戦場に出てほしくはない。しかし、どうしても足りないのだ。この国を守るために戦ってくれないか”
涙を流しながら頭を下げた彼がゆっくりと顔を上げると、そこには涙を流しながら彼のもとへ駆け寄ってくる
国民がいた。
”ありがとう、ありがとう・・・”
国民と一丸となって、ガルバント侵略に挑んだ結果、彼は無事、偉業をやり遂
「侵略は言葉が悪いなぁ」
※
「うわあ・・・惨いな。言葉を間違えると即首切りだよ」
「うちの王様は怖い怖い」
「彼も”スピーカー”として頑張っていたのになあ。”凶悪な帝国”って・・・」
「なかなか自分の国のことをあそこまで言えないよ・・・尊敬する」
「ガルバントが負けたのも、俺たち何の武器も持っていない国民が戦闘に加わったことで
優しいガルバント兵が迂闊に攻撃できなかったからだものな・・・」
「本当に可哀そうな人だよ・・・」
彼らの名は、イーグルとミルヒィ。この国を支える民であり、やはり、英雄だ。
終わり