「ああー、いい朝だ」 彼の名は、ヤマト。この国を統べる王であり、英雄だ。 腰には銀の剣を差し、よく締められたジャイアントヒグマの革で刃を覆っている。 服装は至って庶民的だが、内から溢れ出るオーラが彼の異質さを周囲に知らしめている。 すれ違うものは皆、身体的にこうべをたれこそしないが心の中で頭の後ろを 見せているのが感じられる。 街並みは一見地味だが、どっしりとした貴族を感じさせる桟橋や家屋、よく手入れされた馬車など 奥ゆかしい魅力があった。 その時、上空から1500メートルは
「今日も配信ありがとね~。月末でね、みんな忙しいと思うけどね。 焦らず、無理せず、ゆるふぁいだよ~」 私は天井に向かって、つぶやいた。 正確には、間に金属と液晶のコラボレーション、俗にいうスマートフォンを挟んでいる。 スマートフォンを持っている手をおろし、体の横に置いた。 私はちょっとした配信者だ。昼間は手作りパンの移動販売を行っており、休憩時間や移動販売の無い朝の時間帯に配信をしている。 Vtuberや弾き語りなど、配信には様々な形態があるが 私は、顔を
「嘘でしたーー」 テレビからタレントの軽薄なネタ晴らし。 今日はエイプリルフール。 嘘をついて良いらしい日で、誰もが馬鹿になって良い日、らしい。 僕はわざわざ、この日に嘘はつかない。 詐欺師をしている癖に何を言っていると思うかもしれない。 しかし、詐欺師にも嘘をつきたくない時だってある。 そもそも、つきたくて嘘をついているわけではない・・・という話は 長篇(なが)くなるのでやめておこう。 とにかく、私は4月1日を“嘘の休息日”と決めている。 この日だけは嘘をつかず、真っ当に生
さて、後篇です。 前回は、トム・クルーズ演じるマーベリックが海軍のパイロット養成所トップガンの教官に就任。トップガンを卒業したエリートたちを訓練し、困難なミッションに挑む、というところまで書きました。 書いてて思ったのですが、これ、ミッションインポッシブルですね笑 というのは半分冗談ですが、この困難なミッションというのが半端なく 困難なのです。そのミッションの内容については、是非、映画館で ご確認ください。 それでですね、このミッションに挑むまでの訓練、そして、実戦が映画
イントロから熱量が半端ないサビ。そこからちゃんと定番コードのAメロ、Bメロもありつつ(それも大変すばらしいメロディ)、さりげない転調が目に染みて、最後は全て受け止めて素晴らしいサビとアウトロで終わる。 そんな映画でした。 まず、映画の始まりからして素晴らしいです。 戦闘機の離陸から着艦までのディテールを熱量の高い映像と編集、そしてデンジャーゾーンと、ほぼトップガンの完コピなんですがそのレベルが高い。上辺だけの模倣ではなく、ちゃんと1作目と同じようにかっこいいんです
いや、面白かった。でも、もっと面白くなったんじゃないか。 というのが正直な感想です。 内容は、怪獣が頻出する日本を舞台に、怪獣に対処する特殊部門”禍特対”とウルトラマン、そして、外星人たちの活躍を描く、空想特撮映画と なっております。 見どころとしては、やはり、怪獣たちとウルトラマンのバトルシーンが主となります。また、個性豊かな外星人たちと人類のやり取りの数々も魅力の一つでしょう。特にメフィラス星人は素晴らしく、一度観たら忘れられない口癖(〇〇〇〇、私の好きな言葉です)、演じ
僕は仕事中に、配信を聴いている。 配信というのは、主にラジオアプリの放送だ。 リスナー(ラジオを聴く人のことだ)のスタイルには主に二つある。 積極的にコメントを配信に載せていく”コメンテーター”、コメントはせず、ひたすら聴きに回るのが”聴き専” 。僕はどちらかというと聴き専であることが多い。 ただ、何もコメントせずいきなり聞き専に回ると
M1:summer soul/cero 熱い日差しが妙に嬉しくて、僕は目覚めた。背筋を伸ばして、窓の外を見る。鳥はベタすぎ るくらいに元気に鳴いていて、広がる雲の隙間から覗く青が妙に澄んで見えた。軋む背骨が 徐々に起動していくのを感じる。そろそろ起きて、お湯に浸かろう。なんてたって、夢にまで観た合宿2日目だ。万全で臨みたい。 扉を開けると広がるのはコテージの森。所狭しと並んだ山小屋はまさに森である。その光景に少し息が詰まったが、それだけ多くの人にコテージが愛されているのだ
✽ 「あー暇だ」 Twitter「あー暇だ」 Instagram「あーー暇だ」 いろんな世界で呟いてみても、やはり一人。 返事をする者はいない。孤独は美味いが、15年も味わうと飽きてくる。 僕はインスタントタピオカを飲み干した。ついでに見上げた天井は相変わらず白かった。 塗装のムラが味わい深い。 プラスチックカップの中にはいつも通り、大量のタピオカが 余ってしまった。後で、冷蔵庫の残り少ないハーゲンダッツと混ぜて、食べよう。 絶対美味い。味は俺が保証する。 僕は一人暮ら
さっきから光が見えてこない。 私は眠気覚ましのガムを口に放り込んだ。 時刻は深夜2時23分。 残業を済ませた私は、コンビニで食料を買い込んで、車に乗り込んだ。真っ直ぐ帰ってもよかったが、いつものクセで高速道路へと車を走らせた。残業帰りはいつも高速を走ってしまう。気分転換になるし、見晴らしもいい。何より高速入口の係員の元気がいつもよく、なんだか明日への活力になる。 しかし、さすがに今日は見晴らしが良すぎる。車も数台しか走っていなかったし、なんなら今は一台も走っていない。 私の車
※ 確かに閉まっていた。 教室のドアは鍵が閉まっていたはず。 出る時にちゃんと確認した。 カロリーメイトを買うために扉を出た時は 閉まっていた。 しかし、今、扉は明確に開いている。 誰がどう見ても、空いている。 僕は緊張感を漲らせた。 カロリーメイトをジーンズ👖のポケットに突っ込み、スマホを右手に持つ。硬質な最新機器は時に強烈な凶器となる。 少しだけ開いたスライドドアの取手に触れる。金属の冷たさが更に緊張感を高めた。 扉をゆっくりと横に動かす。溝を擦る音。頭を下げて、室内に踏