山田トムトム

『長渕剛大辞典』随時加筆中。

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『長渕剛大辞典』随時加筆中。

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『長渕剛大辞典』

あ行●アイコウジュンコ 1990年の『オールナイトニッポンスペシャル』で発表された、長渕が小学校二年生の時に好意をよせていた同級生の女生徒の名前で、後の楽曲『順子』のモデルになったという。長渕は過去に好きになった女性の名前は幼少時代から全て覚えているとのこと。 ●アイ・ファイブ 長渕がハマーH2を購入した、世田谷区にあったアメ車専門のカーショップ。黄色のH2は日本初だったという。同店は所ジョージ御用達でも知られたが2017年に閉店。 ●青木俊樹 ファッションデザイナー。201

    • 長渕剛がパンデミック三部作で歌った「死」

      世界がコロナ禍に陥った時、長渕剛は、やっぱりすぐに行動を起こした。 (長渕にとっては静観は現実逃避でしかない) 妻がコロナに感染し隔離され、夫婦が離ればなれになってしまうというリアルで鮮烈なストーリーの『しゃくなげ色の空』(2020年6月9日配信リリース)というデュエット曲を発表。 突如、世界中を途轍もない不安に陥れた伝染病。 だけど我々はその現実を受け入れなくてはならない、というのが歌のテーマだった。 だからこそ、妻パートを女性歌手(AI)に歌わせ、長渕史初のデュエッ

      • 『BLACK TRAIN』

        1.「BLACK TRAIN」 渦巻く世界の闇と人間たちのドス黒い心は、やがて実体化され黒色の汽車となる ブラックトレインに乗せられ、それでも続いてゆく俺たちの人生 ブラックトレインに乗りながら眺める様々な人々の様々な人生を、各曲(各編)から成るブラックトレインというテーマで綴った短編集のようなロードムービーLP 2.「嘆きのコーヒーサイフォン」 ボンクラ若手スタッフの教育に頭を悩まされイライラする初老男という内容の歌詞 対象も自分も一歩引いて見る長渕の客観性と習性により生

        • 『Stay Alive』

          1.「日本に生まれた」 東日本大震災の影響下で作られたLPのオープニング 曲名から連想する、いかにも長渕っぽい愛憎入り混じった日本への想いのメッセージ性の強い歌ではなく、 日本のこと日本に生まれた自分のこと我々日本人のことを、一歩引いてシビアに見つめ、よぎった気持ちのままを淡々と連ねている それは長渕は活動家ではなく、詩人でありミュージシャンだから 2.「ガーベラ」 子供たちの純朴なコーラスが曲とマッチしており、リスナーの心をかきむしる 同じく子供が歌った曲、ザ・クラッシュ

        『長渕剛大辞典』

          『TRY AGAIN』

          1.「Happy Birthday」 女友達の誕生日に告白しちゃおうかなデヘヘという歌 この時期の長渕は、作り込んだり吟味するより、日記をつけるようにラフに曲を量産して録って出しの気分だったんだと思う リリースしたことだけに意義があるようなLP 2.「女神のスウィング」 ニューヨークへ旅行に行き、すぐにかぶれる長渕 3.「Succes」 最後まであきらめないを「脈拍が落ちる前に唇を噛み切り真っ赤な唾を今吐き捨てた」と言い換えるような、長渕ならではのワードセンスがふんだんに

          『FRIENDS』

          1.「SAMURAI」 スペイシーなシンセのイントロから始まる、カットアップなエクスペリメンタルポップ 新しい音楽に挑戦しながらも、無理した変化球や小手先だけの技にはならず、あくまで長渕剛の曲の世界が成立している これぞポップミュージックなLP 2.「BLUE JEANS」 これもアレンジがかっこいい 実験と挑戦の果ての洗練ポップス 3.「蝉semi」 長渕は素手で蝉を捕まえるの上手そう 4.「君のそばに...」 LP全曲アレンジとミックスがとにかく垢抜けててうっとり

          『Come on Stand up!』

          1.「鹿児島中央STATION」 フリースタイル即興的LP すっかり変わってしまった故郷の地元駅に降り立ち、よぎった様々な感情を矢継ぎ早に歌詞にした 直感と感性で即興的に書き殴った歌が、練って練って推敲しまくった時より、まっさらな言葉の自分らしい歌になることが長渕にはよくある 2.「Fighting Boxer」 前LPに続きこのLPも、陰か陽かで言うと陽に振り切れてる時の長渕で、歌詞よりメロディ、文学的より肉体的 この曲もそう 3.「いけ!いけ!GO!GO!」 キャッチ

          『Come on Stand up!』

          『Keep On Fighting』

          1.「情熱」 筋トレにますますのめりこみ、桜島オールナイトライブ開催へ向け、ポジティブ全開陽気でアッパーなLPのオープニング 「情熱情熱情熱情熱情熱情熱」の連呼が白痴っぽい 2.「Keep On Fighting」 LPリリース時のインタビューで長渕は「若い連中に聴いて貰いたいからブレイクビーツやスクラッチを取り入れてみた」と語っていた 若い連中からしたら、それこそがおじさんっぽい発想 3.「LANIKAI」 長渕レゲエ 長渕がハワイのビーチで波と戯れる、のどかなムードの

          『Keep On Fighting』

          『空SORA』

          1.「勇気の花」 良く言えば原点回帰だけど、本人がイメージする「リスナーが求めている長渕剛」を長渕が演じたような作為的なLP ただそれは、過渡期から脱け出すのに必要な初期化のような作業だったんだろうな 冒頭のアコギのイントロから、音がクリアでダイナミックで乾いてる ウエストコースト長渕 2.「すっからぴんのからっけつ」 LA録音、豪華外人バンドの為か、いかにも長渕っぽい演歌フォークが洗練されたグルーヴになってる 曲名は単に語感と言葉遊びで意味はない 3.「コオロギの唄」

          『SAMURAI』

          1.「Never Give Up」 プリミティブ&ルーツがテーマのLP イントロから和太鼓とソーレソーレッの掛け声でなんじゃこりゃ 2.「でんでん虫」 「とんぼ」「蝉」「コオロギの唄」「アゲハチョウの子守唄」と並ぶ虫モノ 3.「オホーツクの海」 いつもの男女の掛け合いフォーマット メロディとアレンジが凝ってる 4.「お釈迦様」 一見宗教色の強い歌かと思いきや、むしろ宗教的なものを茶化した歌詞 カリスマとまつりあげられてしまった自分をも(盲信的なファンも)茶化す長渕の鋭く

          『ふざけんじゃねぇ』

          1.「いのち」 孤独繊細長渕、文学的長渕、アウトロー長渕が、絶妙な配合具合での三位一体 圧巻名曲 (歌詞中の「道は後ろにあった」という一節は高村光太郎の詩の引用) 2.「上を向いて歩こう」 カバー曲だからか、のびのびとした様子の長渕 笛吹ちゃんのギターもしぶい 3.「英二」 歌い出しから「糞まみれの公衆便所」とか「真っ赤な血のションベン」とか、糞尿まみれで俺たちの英二像が台無し 4.「ひまわり」 喜納昌吉の「花」のような歌を狙って作って失敗 表層だけなぞっても普遍にはな

          『ふざけんじゃねぇ』

          『家族』

          1.「三羽ガラス」 事務所スタッフによる横領詐欺事件、ツアーキャンセルと多額の負債、大麻逮捕 色々あった長渕の復帰作 内省と再生のLP 三羽ガラスとは、長渕事務所から数億円の横領をはたらいた元スタッフ三人組のこと 我が身に起きた惨劇をも俯瞰的に見て歌にしてしまう、自分を嘲笑う泰然自若でユーモアを忘れない長渕の作家性 2.「傷まみれの青春」 飄々とした男の平凡な日常を昭和歌謡アレンジに乗せて歌う、肩の力の抜けたポップス カリスマ自己陶酔のピークだった前作キャプテンから憑き物が

          『Captain of the Ship』

          1.「人間になりてえ」 天下を取り全てを手に入れ、過渡期を迎えた時期の迷いのLP 冒頭からザ・ナガブチな曲 アメリカ人豪華バンドの演奏により曲としての体裁は保ててる 2.「泣くな、泣くな、そんなことで」 やっつけ曲 LP全体、自己陶酔によるわざとらしいしわがれ声で歌われ、どんよりとしている 3.「ガンジス」 吟遊詩人長渕がインドを旅した時の歌 「川岸で牛を引く少年、大きな瞳で手を上げた時何故に俺は目をそらしたんだろう」という一節 手を振り返したのではなく、咄嗟に目をそらし

          『Captain of the Ship』

          『JAPAN』

          1.「JAPAN」 日本の現状と行く末を憂う歌 LP全体的にメロディとバンドサウンド重視で、歌詞は抽象寄りの散文詩(と言えば聞こえは良いけど単語やフレーズの雑なツギハギ) 2.「俺の太陽」 「女の前で三つ指をつき舌の先を転がす」→クンニ 「縮み上がった老婆が金切り声で泣く」→病床で苦しむ母親 ドキッとするインパクトのあるフレーズを唐突に(脈略なく)挿入し歌を引き締める作詞テク 3.「しゃぼん玉」 ドラマ主題歌 とんぼ風なメロディに、長渕が口にして気持ち良いフレーズの適当な

          『JEEP』

          1.「女よ、GOMEN」 LPを通して聴くとアウトローの男の生き様の一冊のストーリーになっており、 その冒頭は女好きのろくでなしから女性への贖罪の歌 長渕のストーリーテラーとしての腕前が、これでもかと発揮されてるLP 2.「流れもの」 うらぶれた男の刹那的な日常を描いている ストーリー性のある歌詞をキャッチーなメロディを乗せ、リスナーを曲の世界に引き込むのが巧みで、LP頭から終わりまでのめりこんで一気に聴ける 3.「友達がいなくなっちゃった」 長渕レゲエ 学生時代の旧友が

          『昭和』

          1.「くそったれの人生」 ヤクザ演歌ファンクという新ジャンルの発明と、昭和の終わりは俺のはじまりという決意表明のLP 本当のことってなんだろ?遠回りしても俺は探してやるぞくそったれ 2.「GO STRAIGHT」 テレビや音楽のいわゆる業界人を揶揄した歌 ファンクのグルーヴに乗せた、刀鍛冶により研磨された鋭い刃物のような言葉たち 3.「いつかの少年」 大金持ちのスーパースターになっても、田舎で貧乏で虚弱体質でひとりぼっちで海を眺めてたいつかの少年(剛少年)はいつもそばにい