暴風雨で傘差して壊す
暴風雨では傘を差すなかれ、だ。
暴風雨という領域の雨では、差してもどうせ濡れる。
暴風雨と普通の風雨との境界の暴風雨寄りの領域では、差しているほうが6割方濡れを回避できるという事情から判断が難しくなることがあるが、基本的には暴風雨なら差しても差さなくても変わらない。濡れる。
どうせ濡れるのに差したがために、漫画のように暴風雨に傘をへし曲げられてぶっ壊すのは目に見えている。夕方のニュースのオフィス街での暴風雨の様子を見るにつけ、会社員たちが見るも無残に傘をぶっ壊していく様が目に飛び込んでくる。「差さんかったらいいのに」と何度つぶやいたか知れないが、いざ自分が暴風雨に晒されると、「差すもんだな」と気付く。
差す前からぶっ壊れるのは分かっているし差しても濡れることも分かっている。
僕なりの考察だが、きっと、差さずに歩く自分が恥ずかしいのではないか?
暴風雨とはいえ、雨天の下を傘を差さずに歩くことはやや恥ずかしさが伴う。まして、「どうせ濡れるぜ」と、吹っ切れたように堂々と晴れやかに暴風雨の下を日に焼けた角刈りの格闘家のように闊歩する度胸は、多くの人には備わっていない。別に晴れやかにする必要は微塵もないが、暴風雨という異常事態とのギャップからか、闊歩しているだけで傍からは晴れやかに見えるに違いない。
ちなみに今住む地域は海の近くであり、暴風雨の下漁師さんが陸で作業をしている。もちろん漁師さんたちは堂々と晴れやかに傘を差さず日に焼けた角刈りの格闘家のように闊歩していた。