変な体勢で血圧
平日夜のスーパー銭湯、客は疎らだ。
全裸とタオイチ(タオル一枚)になり、「あっ、先に血圧測っといたらよかったー」心の声を声に出さずに心で出して堪える。入浴前の血圧を測ろうと画策していたけど、厚手のジップアップパーカーを着ていたから、少し脱いでから測ろうと。少し脱ぐだけのつもりが失念、全裸でロッカーも閉めてから気付く。
スーパー銭湯の自動血圧計は丸椅子に座って腕を突っ込んで安静にしてボタンを押すタイプ。全裸で丸椅子に入浴前のケツで座るのはアカンだろう。僕でも分かるよ。
「あっ、先に血圧測っといたらよかったー」
先程の心の声。
まぁいいや。客は疎ら。
脱衣所に客がゼロになったタイミングで自動血圧計の前に。
ん、ケツで丸椅子に座ろうとしているのか?
いやいや、まさか。僕がそんなことするわけない。
全裸でタオイチで自動血圧計の丸椅子の前には立ったが、ケツは着けまい。僕はそう声にならない心の誓いを心の中でしていた。
じゃあどうするの?
立って、中腰で測るのだよ。
血圧測定の原則は「安静」だ。中腰で片腕突っ込んだらプルプル力んで血圧か脈拍が上がるか、とにかく正確ではなくなる。
でも、いい。
とにかく、「風呂の前に測る」っていう雰囲気の方が、正確かどうかよりも僕には大事だから。雰囲気重視。
客がいないから直ケツで座る、
そんなのは親不孝もんのすることだ。多分。
よし、今だ。
全裸でタオイチで中腰で右腕を突っ込む
ガタッ
ロッカーの死角から別の全裸男が現れた。
人はおった。ゼロのタイミングではなかった。
「中腰で右腕」の「ちゅ」ぐらいの時にガタッて聞こえたから 「フっ」てなって、屈んだけど膝だけ伸びて首だけ傾げて右腕はなぜかしっかりハマった。
直ケツで座るつもりは毛頭無いのに、状況証拠から僕は客観的に見て直ケツ未遂犯、未必の故意だった。
僕は図らずもそうなってしまった。
そんな体勢による血圧は
120/78、脈拍108
上等だ。