立つ時腰ぶつける
患者さんの病室は四人部屋で、カーテンとキャビネット(棚)で区画されている。自ずと1人分の区画が狭いので、患者さんのベッドサイドで色々の介助をするのは創意工夫が要る。
普段は収納されていて必要時に引き出すタイプのスライドテーブルがある。そこにはペットボトルやリモコン、スマホ、イヤホン、メガネ、マスク、つまようじ、ティッシュ、などが狭し狭しと載せられている。スライドテーブルが引き出された、只でさえ狭いベッドとキャビネットの隙間に車椅子を横付け。色んなものが狭し狭しと載せられているのでスライドテーブルは収納できない。
上に載ったものを落とさないよう、体をくねらせながらしゃがんで患者さんの靴履き介助をする。履き終わり、車椅子を引き寄せようと立ち上がる時に
ドガっ(うっ…)
左後ろの腰をスライドテーブルのかどに強打。
強打の物理音と、テーブル上のペットボトルが一瞬ゴトッと倒れかけるけど倒れない音、僕自身のちっさな(うっ)ていう唸り声以外は、何事もなかったように静かな時間が流れる。
…ゴロン、ゴロン、ゴロン。
立ったまま少し回転して、今日もペットボトルは倒れない。
テーブルクロス引きの所作。