カウントが合いそうになってもずらすなよ
療法士として、病院のリハビリ室で患者さんの運動療法を実施しています。身体機能の低下した患者さんは多くが脚に筋力の低下があり、私たち療法士は患者さんの脚に手で抵抗を加えながら筋力トレーニングを実施する、というのが、日本全国のリハビリ施設での日常の一コマです。
いち、に、さん、し、ご、
だいたい10回か20回を1セットとし、短いインターバル(休憩)を挟みながら2,3、セットやる、というのが、日本全国のリハビリ施設での日常の一コマです。
いち、に、さん、し、ご、
患者さん一人に対し療法士1人、1対1の個別のリハビリが、リハビリ室の中で行われます。
リハビリ室の中に複数台のベッドがあり、各療法士と患者さんはまばらに、特に指定席はなく、その時々でめいめいの場所で筋力トレーニングに取り組んでいます。
いち、に、さん、し、
さあ、誰かがリハビリ室内のどこかで最初のトレーニングを始めました。
いち、に、さん、し、
ふた区画離れたベッドでもう一組の療法士と患者さんが1セット目を始めました。
ご、ろく、しち、はち、
療法士が声をかけ、脚に抵抗を掛けながらカウントします。
ご、ろく、しち、はち、
ふた区画向こうのもう一組も「はち」までカウント。
きゅう、じゅう。
1セット目が終わり、最初にトレーニングを始めた療法士は患者さんに声をかけています。
「大丈夫ですか?ちょっと休みますね」
遅れること10秒ぐらい、ふた区画向こうの療法士が
、じゅう。
1セット終了。こちらも患者さんに声をかけています。
「オッケーです。大丈夫ですか?余裕?おぉ~すごい。2セット目いきましょう」
すぐ2セット目開始した。
最初に始めた療法士ペアは休んでいた分開始が遅れたが、
ふた区画向こうペアが先に2セット目を始めてちょうど休憩が終わり、すぐ追いかけるように2セット目開始。
え、ちょっと嫌な予感。
いち、に、(いち)、さん、(に、さん)、しー、ごー、ろく、
カウント重なった!!!
いや、いいじゃない。何が悪い?
いやいや!なんか恥ずい!
離れたところでなんか一緒に声揃えているみたいで恥ずい!!
リハビリ室は多くの場合広い空間でできており、離れていても割と声が響くんですね。
離れた位置の療法士同士の声が同時に揃って響くのはよくあるんです。
しち、はち、(しち)、きゅう、(はち)、きゅう、じゅう、(じゅう)
じゅういち、じゅうに、このまま20回までいきますよー、じゅうさん、じゅうし、
恥ずいからってずらすなよ。揃ってもいいじゃない。
テンポ変えてカウントずらすなよ。
まだセットの途中なのに「痛くないですか?」とか「まだいけますか?」とかそれとなく過負荷を懸念する声掛けを挟むことによって戦略的にカウントずらすなよ。
恥ずいからって急に声のボリューム落とすなよ。難聴の患者さんに聞こえないだろ。
ほんとは10回1セットで終わるつもりだったのに、恥ずいからって20回1セットに変えるなよ。患者さん疲れるだろ。
恥ずかしがらずにみんなで声揃えてカウントしようぜ!!
日本全国、リハビリ施設での日常の一コマです。