次女のブリッジ
運動会の組体操に向けて、次女はブリッジの練習を始めた。
「できひんねん。どうやってすんの?」
学校でうまくできなかったと、教えを請うてきた。僕もそんなにできるほうではない。
まず一緒にやってみた。次女と横並びでやると、まるで鏡というか、次女のできてないポイントと僕のできてないポイントが同じだとわかった。自分の体は俯瞰できないけど、同じようなできなさの次女をカイゼンできたら僕のブリッジもカイゼンできるかもしれない。
次女との日常の1コマに、理屈で塗り固めた合理性を持ち込もうとしている。僕はすっかり社会の犬だ。
できてないポイントとはすなわち「背骨と股関節の硬さ」だ。
僕はこの次女の問題点、すなわち僕自身の問題点に対して、アプローチを始めた。
お尻は挙がる。手首も反れている。けど背中が全く反り返らず肘が伸びきらず頭も挙げにくそう。試しに次女の背中に手を添えて反り返りをサポートした。自分で保持しきれずすぐに下がってくる。やっぱり背中の硬さが原因かな?
―おとん背中持ってるから、10数えてみ?
「あかんムリ」
―ムリとちゃう、やってみ?はい1、2、3、4、5、6、下がってる下がってる、さがったらあかんはい頑張る。これを1日10回続けてみよか。10数えるのを10回やで。はい2回目、2、2、3、4、5、6、
困った時の対処法、「反復練習」を、半ば強制的に開始した。ヘラヘラ笑いながら、「ムリー」とか言いながら、それなりにやってくれてる。
2日後、
「今日のブリッジやるで、見ててよ?」
「いち、にー、さん、しー、ごー、あー!だいぶ続くようになったやろ?」
すごい、背中が反ってきている。背中が丸くアーチに近づいているので、肘も伸びてきて空中で保持しやすくなっている。
「コツわかってん。しっかり後ろ見るようにしたらできるねんで」
すごい、視線をしっかり反らすことで首を反らし、結果として背中のアーチを助けていることに、次女は自分で気づいたらしい。
―すごいな、もうできてきてるやん。
しかも反復自主練を続けているので、背骨の柔軟性自体もカイゼンされてきているようだ。
自主練開始4日目、
次女のブリッジは上海雑技団みたいになった(ウソ)。
上海雑技団はウソやけど、エクソシストみたいになった(ウソ)。
エクソシストもウソやけど、しっかりとしたアーチを保てるようになった。次女、がんばった、スゴいね。おめでとう。
僕は練習を全くしなかったので、背中は板を貼ったようにまっすぐのままだ。