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「ジュニア」と呼ばれる気分
ズボンの前ポケットには、メインの大きな収納部分の中にもうひとつ、小さいポケットが施されていることが多い。本来小銭などを入れる目的で付けられているらしいが、どうも使い勝手が上手くいかない。
これを作った人は、「メインの収納部分(以下、メインと呼ばせていただきます)だけだと、色々入れたときに底の方でごちゃごちゃになってしまうが、この小さなポケットがあれば、すぐに小銭を取り出せて便利」とでも思ったのだろう。
しかし今私は、その便利さを十分に享受できていない。不便とまでは言わないけど、なんだか気を遣って使っている気がする。鞄は持たず収納ツールがポケット一択の人で、いつも何かをパンパンに詰めている人にとっては、このサブポケット(以下、サブポケットと呼ばせていただきます)の存在がありがたいに違いないが、私はパンパンに詰める人ではない。私がポケットに入れるのは主にカギである。自宅や職場のロッカーのカギなど、いくつかをキーホルダーでまとめているので、メインポケットに入れるとサブポケットに一部が引っかかるのである。サブはメインの生地とは別に薄手の布が使われていることがあり、引っかかったカギの束を勢いよく引っ張り出すと破けてしまうこともある。
サブ創始者(以下、サブと呼ばせていただきます)のサブに込めた想いとしては、ユーザーの使いやすさを第一に考えたのに違いないが、時代が移ってその想いが継承されず、取りあえず付けとけばいいんでしょと、大量生産の中でやっつけ仕事になっているのだとしたら、残念でならない。
現在のサブの立ち位置としては、不便とまではいかないけど気を遣わなきゃいけない存在、思い切って使ってやりたいけどまだそこまで成熟していない存在、父と同じ名前を付けられたことで区別するために「ジュニア」と呼ばれる存在、そんな立ち位置ではないかと思う。
図らずも「ジュニア」と呼ばれる気分をお察しするが、呼ばれたことはないから察せられない。