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おっとあぶない

「おっとあぶない」と思わずこぼすような事象は世の中多々あれど、スマホを洋式便器に落としそうになる事象がぶっちぎりで1位の"「おっとあぶない」具合"じゃないかと思う。

所詮「おっとあぶない」だ。あぶないのに「おっと」とか呑気なことが言える状況だ。

僕調べでは「おっとあぶない」の起源は、20世紀初頭の英国の紳士だ。雨上がりのロンドンを歩いている時に水溜まりを踏みそうになり、軽くステップを踏んで斜め後ろに飛び避け、左手にはステッキ、右手で山高帽を少し浮かせて、「おっとあぶない」。

所詮「おっとあぶない」だ。

英国の紳士の水溜まりの「おっとあぶない」にくらべたら、現代のスマホを便器に落としそうになる「おっとあぶない」の方が本当に危ない。しかし重要なのは、未遂で終わることだ。もしスマホを便器に水没させてしまったのなら、残念ながら"「おっとあぶない」具合"でいうと一気にランク外になってしまう。それはまた別企画でランクインの対象となり、そこで上位に入るからだ。たとえば、"「命に別状がないダメージのうち、最低2週間は引きずる出来事」具合"の、上位常連ランカーだ。

未遂で終わったスマホの「おっとあぶない」は、本当に「おっとあぶない」であり、なんなら、未然に防げたことに急に変なハイテンションになることだってある。なんなら、寸出のところでスマホをキャッチしたりなんかして、「うおぉーー!」とか言ってちょっと笑っちゃうかも知れない。

一方、英国紳士の「おっとあぶない」は、完全に水にはまることはなくとも、少しばかりスラックスの裾に水跳ねを受け、悲しい気持ちになった上での「おっとあぶない」だ。せっかくおろしたてのスラックスが、だ。呑気に「おっと」を付けてはいるが、本当にあぶなかったのだ。空は晴れ間が出ようとしているのに心はまだ雨模様だ。

したがって、現代のスマホを便器に落としそうになる事象が、ぶっちぎりで絶妙の"「おっとあぶない」具合"1位である。