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小6の国語の教科書にありそうな文章

ヤシの木があります。街路樹として目抜き通りに配列されたヤシの木は、その地区の景観のシンボルとなっています。

ヤシの木というぐらいですから、南国のイメージが浮かぶ人がほとんどだと思いますが、実際は熱帯から温帯まで幅広く分布するようです。というのも、東京ディズニーリゾート周辺に植栽されたヤシが、真冬の寒風吹きすさぶ中で違和感を通り越して不憫でならなかったものですから、植物版フォアグラのような位置づけで、私の中では定着していました。本来の生育環境ではないところに、ただ雰囲気を醸し出すためだけの存在として、いわばヒトのエゴとして、そこに居ることを義務付けられたのかなと思っていたんです。ところが温帯にも分布可能ということなので、ヤシに対する私の誤解がひとつ解けたところであります。

冒頭のヤシは私の住む地域の話です。東京ディズニーよりは南ですが、今この瞬間も強い寒風に晒され、20mほどあろうかというてっぺんの方は大きくうねっています。台風の多い地域でもあります故、台風通過後には大きなヤシの幹の皮が至るところに落ちています。葉よりは皮がよく落ちます。幹の下から中腹までは白く密着した表面なのですが、てっぺんに近いところは茶色く変色しささくれ立っています。どうやら上の方から剥がれ落ちてくるようです。ヤシの「フケ」のようなものです。何度剥がれ落ちても尽きることはありません。新陳代謝を続けているみたいです。

台風にも寒風にも枯れることはなく、定期的に代謝を繰り返し、元気に居座り続けています。温帯で分布可能というのも頷けますね。

ただ、目抜き通りのヤシは人工的に植えられたのであって自生しているわけではありません。本州に居ながら自生のヤシにお目にかかる機会は、多くはありません。"理論上分布可能"ということとヤシ自身が過ごしやすいかとは別問題です。また、人間が見て違和感があるかどうかとも別問題です。

やはり私にとって、ヤシで年中南国に見せかける手法は、なんだかしっくりきません。