KI・SE・KI
モビールを知ってるかい?ひもで吊らしてゆらゆらさせるやつだよ。
かれこれ10年、ムーミンのモビールを吊って暮らしてきた。僕じゃない。妻の趣味だ。そして風が吹けば桶屋が儲かるように、風が吹けばモビールが絡まるのだ。モビールをほどくのは僕だ。妻が好きでモビールを設置したのに、モビールの絡まりは僕がほどく。風が吹けば僕がほどく、のだ。
妻は晴れた日は部屋を通気するのが好きだ。窓を全開にしてモビールをぐるぐるにする。最高だ。
今までは、モビールの捻れが軽傷のうちに手当てができていた。しかしこの度、モビールは瀕死の重症を負った。ぐちゃぐちゃになった。ぐるぐるじゃない。ぐちゃぐちゃだ。
なぜここまでなったのだろう。誰かが結んだのかっていうぐらいぐちゃぐちゃになった。普通の風ならただ一部が捻れるだけで済む。ただの捻れだけなら、三つ編みをほどく要領で線を交互に入れ替えていけばいい。しかしこの度はしっかりと結び目ができている。小学校家庭科の被服室で学んだ「玉留め」「玉結び」がそこにはあった。風が吹けば玉結びができるとか聞いたことはない。しかし現にできたんだから仕方ない。
なぜこんなになるまでに放置されたんだろう。もっと軽傷のうちに気付けなかったのか。小林製薬の「サカムケア」のコマーシャルのぱっくりあかぎれを見て、「こんなになる前になんとかできなかったのか」「もっと早期に対処すればこんなに身がむき出しのグロあかぎれなぞにならずに済んだのでは?」と、何度思ったか知れない。それなのに、今僕はモビールを玉結びにしてしまった。グロ捻れ、グロ玉結び、グロモビールだ。
僕はモビールを設置していないけど、モビールに対して責任を負っている。現場チーフの意向がCEOに届いていない。組織の構造的問題だ。僕はモビールの危機に向き合った。
キセキは起きた。
いや、僕が奇跡を起こした。
モビールはほどけた。
ほんのついさっきの事だ。
僕は絡まった糸と格闘した。
ボールペン2本の先端を使って、腕利きの技師がはんだ付けをするように。
糸の毛羽立ちが格闘の凄まじさを物語っている。
僕の興奮はまだ醒めやらない。
そしてその勢いに任せて完成したnoteは、
小林製薬の「サカムケア」でもなんとかできるか分からない、微妙なものだ。