根性試し
朝のラッシュに揺られる
始発駅から乗るのにいつも座れない
早めに駅に着いて並ぼうとしないからだ
車内アナウンス
「車内でのリュックサックは、前に抱えるか網棚の上に置くなど、他の方のご迷惑にならないようお願いします」
客が段々増えてきた
僕はドア横で居座らず、徐々に中ほどのつり革まで入っていくタイプだ
つり革につかまるリュックのおじさん
背負ったリュックの厚みにより、
(カラダ本体の前後幅)×2の空間を占有
車内アナウンス
「車内でのリュックサックは、前に抱えるか網棚の上に置くなど、他の方のご迷惑にならないようお願いします」
おじさんはジャンプを読んでいる
つり革持って片手でヤングジャンプならまだ可能性を感じるが、
つり革持って片手でジャンプはなかなか器用だ
車両の中ほどに押し込まれていく僕
リュックのおじさんのポイントに到達
左右のつり革の人たちの間、車両の中央部分は概ね通れるけど、おじさんのリュックが行く手を阻む
車内アナウンス
「車内でのリュックサックは、前に抱えるか網棚の上に置くなど、他の方のご迷惑にならないようお願いします」
どうやらおじさんはイヤホンをしていない
Bluetoothがおじさんの聴覚を占有しているわけではない
ジャンプがおじさんの五感を占有している
車内アナウンス
「車内でのリュックサックは、前に抱えるか網棚の上に置くなど、他の方のご迷惑にならないようお願いします」
おじさんはイヤホンをしていない
もう恐らく聞こえているだろう
おじさんは車内アナウンスが間違いなく聞こえている
聞こえた上で、こうしている
リュックで片手にジャンプのつり革おじさんは
根性試しをしているのだ。
このまま梅田まで粘れるのか
おじさんのハートの強さを見守ろうと思う。
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